2012年12月10日

「グッモーエビアン!」 擬似親子と家族愛 大泉洋、柔らかく軽やかに

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 ハツキ(三吉彩花)は中学3年生。名古屋で母のアキ(麻生久美子)と暮らしている。かつてパンクバンドのギタリストだったアキは、ハツキと友達のように仲がいい。桜が満開のころ、二人のアパートに海外から葉書が届く。「世界ツアーに出る!」と言い残し、1年半前に音信不通になったヤグ(大泉洋)からで、そこには「グッモーエビアン!」と書かれていた──。吉川トリコの人気小説を映画化。監督、脚本は「キズモモ。」(08)で長編デビューした山本透だ。

 葉書が届いて半年後。スーパー帰りのハツキは、商店街で人だかりを発見する。中心にいたのは帰国して行き倒れたヤグだった。逃げ出すハツキ。「ハッピちゃん」とハツキのあだ名を叫んで追いかけるヤグ。思春期を迎えた真面目なハツキにとって、ヤグはけむたい存在だった。逆にハツキを赤ん坊のころから育て、娘のように思うヤグ。二人をつなぐアキを含め、奇妙な擬似家族が描かれる。

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 物語のポイントはヤグである。社会とつながりを持たず気ままに生きる自由人で、人一倍家族を思う愛すべきキャラクターだ。「男はつらいよ」の主人公・車寅次郎を彷彿させる。早くに両親を亡くし、腹違いの妹をこよなく愛すフーテンの寅。ヤグは寅次郎の遺伝子を受け継いだようだ。

 ある日、ハツキは親友のトモちゃん(能年玲奈)と口論になる。遊んでばかりでどうしようもないヤグを、トモちゃんが「父親だったらよかったのに」とつぶやいたからだ。ハツキは謝るトモちゃんを残し、その場を立ち去る。親友の二人にひび入り、物語が大きく動き出す。

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 翌日、トモちゃんは学校に来なかった。担任の小川(小池栄子)は、「家庭の事情で急に転校しました」という。両親が離婚し、母親の実家がある鹿児島に引っ越したのだ。動揺するハツキの目に飛び込んできたのは、不審者と思われ教師に取り押さえられながら教室に乱入するヤグだった。ヤグは引越先へ向かうトモちゃんとはち合わせ、ハツキを迎えに来たのだ。ヤグはハツキを自転車に乗せて走るが、トラックと衝突してしまう──。

 血のつながらない親子の絆と家族愛。入り口こそコメディー風だが、中盤以降はトモちゃんの引越、ハツキの進路をめぐるアキとの口論、ヤグの悲しい生い立ちなど、原作にないエピソードで感動的な物語に飛躍する。心優しきパンクロッカーで、超自由人のヤグ。大泉洋の柔軟性、人間味あふれる演技は絶品で、ロック・スピリットに満ちたパフォーマンスも必見だ。

(文・藤枝正稔)

「グッモーエビアン!」(2012年、日本)

監督:山本透
出演:麻生久美子、大泉洋、三吉彩花、能年玲奈、竹村哲

12月15日、テアトル新宿ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://gme-movie.com/

作品写真:(C)2012「グッモーエビアン!」製作委員会
posted by 映画の森 at 21:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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