2012年10月06日

「マヤ 天の心、地の心」 現代を生きる私たちへ 警鐘と提言

マヤ 天の心、地の心.jpg

 メキシコに暮らす現代マヤ人の生活と、グアテマラに住む若いマヤ人の伝統と儀式の日々。彼らの日常を取材し、グローバリゼーションに翻弄され、マヤの文化や環境破壊が進行する中、それぞれが危機にどう立ち向かうかを浮き彫りにする「マヤ 天の心、地の心」。

 マヤ暦5125年のカレンダーは2012年12月21日で終わる。人々の不安をあおるまやかしの地球終末論と異なり、マヤ人の切実な証言を中心に、自然の繊細美とマヤの創世神話「ポポル・ヴフ」を描いた映像を織り交ぜたドキュメンタリー作品だ。現代のマヤ人約900万人が暮らすメキシコのチアパス州とグアテマラでは、グローバリゼーション、鉱山開発などによりマヤ人の文化や生活環境が崩壊の危機に瀕している。

 創世神話「ホポル・ヴフ」。空と海しかない無の状態から天の心と地の心、二人の神が地球に大地や植物を作り、動物や魚や昆虫を作った。神々は自分たちを崇める者として人間を作る。最初は土で人間を作るが失敗。次に木で作るがまた失敗。最後に神はトウモロコシから人間を作ることに成功する。現代マヤ人の思想には「ホポル・ヴフ」の神話が根付いている。

 作品に登場するのは、6人の現代マヤ人だ。

 北米最大かつ生物が最も多様な熱帯雨林に住み、マヤ系ラカンドン族最後のシャーマン(霊能者)になる勉強をしている“チャン・キン”は、「預言に基づく世界の浄化は始まっている」と言う。

 バレンケの廃墟で作業する天文考古学者でマヤ系ツェルタル族の“アロンゾ”は、祖先と同様にマヤの時間と空間に夢中だ。「マヤ人は時間をらせん状の周期としてとらえている。今現在、この瞬間、マヤ暦は次の周期に入ろうとしている」と言う。

 チアパス州の高地で暮らす“チェピータ”は、モンサント社の遺伝子組み換え種子からマヤ人の神話の起源であるトウモロコシを守る運動をしている。「私たちはトウモロコシの子。これが血となり肉となる」と言う。

 マヤ系ツォツィル族で、サパティスタ民族開放軍の元司令官“ヘロニモ”は、先住民の存在を認めない政府を批難する意味を込め、バンダナで顔を隠している。米モンサント社が行うトウモロコシの遺伝子組み換え技術に異論を唱える。

 幼い頃にグアテマラで起きた大虐殺を生き延び、消えない恐怖心に悩まされている“フローリ”。彼女は家族の半分が殺された故郷の村に戻り、金鉱山開発で環境を汚染する多国籍企業に抵抗するため、人々に団結を呼びかけている。

 マヤ系カクチケル族の“フェリペ”は、薬物中毒を克服。人々を癒すため、マヤの儀式を行うスピリチュアルなガイドとなっている。

 現代マヤ人6人の証言からは、現代文明社会に暮らす我々への警告が聞こえてくるようだ。先住民の生活を踏みにじり、地球を破壊し続ける。5125年のマヤ暦周期が終りを迎え、我々は初めて現代マヤ人の証言を理解するのかもしれない。マヤ文明や創世神話「ポポル・ヴフ」など、独特の文化や思想、宗教観がベースの作品。日本人には分かりづらい部分もあるが、彼らが発するメッセージを素直に受け取り、考える必要があるだろう。

(文・藤枝正稔)

「マヤ 天の心、地の心」(2011年、ドイツ)

監督・脚本:フラウケ・ザンディッヒ、エリック・ブラック
出演:ホセファ“チェピータ”・ヘルナンデス・ペレス、フロリダルマ・ペレス・ゴンザレス、カルロス・チャン・キン・チャヌク、カヒカン・フェリペ・メヒア・セペット、アロンソ・メンデス、ドン・アントニオ・マルティネス、グレゴリア・クリサンタ・ペレス、マウディラ・ロペス・カルドナ、ダビデ・ヘロニモ

10月6日、渋谷アップリンクで公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.heart-of-sky.net/

作品写真:(c)Eric Black
posted by 映画の森 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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