2012年10月06日

「アウトレイジ ビヨンド」 血で血を洗う抗争 北野武監督、シニカルに徹底的に

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 前作「アウトレイジ」で描かれた抗争から5年。先代会長亡き後、新体制となって関東暴力団の頂点を極めた「山王会」は、政界に触手を伸ばしていた。一方、巨大組織の壊滅を目指す警察は、山王会の勢力拡大にいらだちを隠さない。そこで目を付けたのが、関西ヤクザの雄「花菱会」だ。表向きは友好関係を保つ東西巨大暴力団を対立をあおるため、刑事の片岡(小日向文世)が策をめぐらせる。そんな中、獄中で死んだはずのヤクザ・大友(ビートたけし)が生きていたと分かる──。

 北野武監督初の続編である。デビュー作「その男、凶暴につき」から独自のバイオレンス描写に定評がある一方、並行してナンセンスなコメディーも作る北野監督。「アウトレイジ」は暴力をヤクザの視点で描きながら、その世界を一歩引いてシニカルに見つめている。

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 物語の中心にいるのが、暴力団対策担当“マル暴”のベテラン刑事・片岡だ。刑事の特権を最大限に利用し、ヤクザの懐に飛び込んで抗争の火種を作り、描いたシナリオ通りに組織壊滅を試みる。片岡の手法に疑問を持つのが同じマル暴担当の繁田(松重豊)だ。暴走気味の片岡を冷ややかに見つめ、警告する繁田は観客の代弁者的役回りだ。繁田や上司の声を聞かない片岡は、独自にヤクザと接触。死んだことになっていた隠し玉・大友を釈放し、大抗争を引き起こす。監督の分身のような片岡が話を引っかき回す。

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 北野監督は俳優の使い方がうまい。山王会若頭・石原役の加瀬亮は、これまでのおとなしいイメージと正反対。血の気の多いインテリヤクザを見事に演じている。この役をあてて演技を引き出した監督もすごいが、演じ切った加瀬も素晴らしい。本シリーズ初登場の西田敏行、塩見三省の極道ぶりもすごい。普段は温厚な役が多い二人が、その場にいるだけで他を威圧する。すさまじい関西弁で恫喝し、応戦する大友と舌戦を繰り広げるさまは、作品のクライマックスといえる。セリフのないヒットマンを高橋克典に演じさせるなど、意表をついたキャスティングが最大限の効果を発揮している。

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 ヤクザの世界を正面から見つめながら、人間社会の縮図を監督流に描写する。のし上がるためなら平気で人を利用し、蹴落とす。縦社会を這い上がろうと右往左往するヤクザの中で、名高達郎と光石研の存在が鍵となる。山王会系列の幹部でありながら、年下の石原になめられて下っ端扱い。抗争を外から眺めていた二人がいつの間にか……という展開や、前作で禁じ手を使って山王会会長になった加藤(三浦友和)と、ヤクザを手玉に取り壊滅を目論んだ片岡には、最終的に因果応報のような制裁を加えている。ヤクザ社会をたっぷり皮肉り、物語にきっちり落とし前をつけた点に、作家としての成熟を感じた。

 青みがかった“北野ブルー”の映像に、静と動の表現を巧みに使い分ける。徹底的な暴力描写に磨きをかけながら、真面目なはずの会話に笑いを入れる。監督の芸人魂を感じるとともに、独特の台詞回しをうまくこなした俳優たちも見事。一本筋を通した監督の魅力が凝縮された暴力活劇である。

(文・藤枝正稔)

「アウトレイジ ビヨンド」(2012年、日本)

監督:北野武
出演:ビートたけし、西田敏行、三浦友和、加瀬亮、中野英雄、松重豊、小日向文世、高橋克典、桐谷健太、新井浩文、塩見三省、中尾彬、神山繁

10月6日、新宿バルト9&新宿ピカデリーほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://wwws.warnerbros.co.jp/outrage2/

作品写真:(C)2012「アウトレイジ ビヨンド」製作委員会
posted by 映画の森 at 22:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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