2012年03月01日

「父の初七日」 泣き、笑い、喧騒で送る 台湾の別れの儀式

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 父の訃報を受け、台北から帰省した娘のアメイは、兄のタージ、従弟のシャオチュアンらと葬儀に参加する。ところが、伝統に則った“道教式”の葬儀は、やたらとプロセスが煩雑で、やることが多い。与えられた役目を果たすだけでも目一杯なところに、思わぬアクシデントも加わり、アメイたちは悲しみに浸る間もなく、最後の日を迎える――。

 父親の葬儀に翻弄される娘たちの七日間を追った台湾映画「父の初七日」。葬儀のてん末をコミカルに描いているところが、伊丹十三監督の「お葬式」(84)を思わせる。しかし、「お葬式」のような群像劇ではない。中心人物は娘のアメイであり、焦点が当てられているのは、アメイと父親との心の絆である。

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 葬儀をめぐるドタバタ騒ぎの間隙を縫って挿入されるのは、父娘の回想シーン。これによって、見る者の情感はじわじわ高まり、ラストで最高潮に達する。アメイの抑えていた感情が堰を切ったように噴き出す空港のシーンは圧巻だ。さんざん笑わせた末に、じんとさせ、ほろりと泣かせる展開は、ヒューマン・コメディーの王道と言えるだろう。

 とはいえ、本作のハイライトは、やはりドタバタの部分である。胸にマイクを付け、大きな泣き声をさらに拡声させる“泣き女”。まるでカーニバルのようなブラスバンドの演奏。国際ビジネスの最前線で働くアメイにとって、伝統的な葬儀の仰々しさ、賑々しさは、ほとんど“異文化体験”に違いない。

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 極め付けは、泣くタイミングの指示である。葬儀を指揮する“道士”から合図が送られたら、食事中であろうと歯磨き中であろうと、ただちに棺桶にすがり付き、泣いてみせなければならない。何とも無茶なルールだが、戸惑いながらも、懸命に対応しようとするアメイの必死な姿がおかしい。アメイ役のワン・リーウェンが、映画初出演ながら、なかなかの好演を見せている。

 また、道士として粛々と葬儀を取り仕切る叔父のアイーに扮したウー・ポンフォン、泣き女役のジャン・シーインが、それぞれ味わい深い演技を見せ、ウーは台湾金馬奨で助演男優賞、ジャンは台北映画祭で助演女優賞に輝いている。

 古い風習を描いた作品だが、映像には清新な感覚がみなぎる。自ら書いた原作を脚色し、台湾金馬奨で最優秀脚色賞を受けたエッセイ・リウが共同監督を務めたことで、若い息吹が注入されたのかもしれない。

(文・沢宮亘理)

「父の初七日」(2009年、台湾)

監督:ワン・ユーリン、エッセイ・リウ
出演:ワン・リーウェン、ウー・ポンフォン、チェン・ジャーシャン、チェン・タイファー、タイ・バオ

3月3日、東京都写真美術館ホール、銀座シネパトスほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.shonanoka.com/

作品写真:(c)2010 Magnifique Creative Media Production Ltd. Co. ALL rights reserved
posted by 映画の森 at 12:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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