2012年02月29日

「ピナ・バウシュ 夢の教室」 踊りを知らぬ少年少女 自己を放ち、初の舞台へ

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 2009年に逝去したドイツの天才舞踊家、ピナ・バウシュ。ヴッパタール舞踊団の芸術監督として、踊りと演劇を融合した独自の表現スタイル“タンツ・テアター(ダンス・シアター)”を確立し、数々の先鋭的作品を生み出したカリスマだ。

 彼女の代表作の一つに「コンタクトホーフ」がある。1978年に初演されて高い評価を受けた作品で、00年には65歳以上のアマチュアの男女をキャスティングして上演。07年には14〜17歳の、これもアマチュアの少年少女で上演され、いずれも大成功を収めている。

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 「ピナ・バウシュ 夢の教室」は、07年版「コンタクトホーフ」の練習風景を収めたドキュメンタリーである。ヴィム・ヴェンダースの「Pina ピナ・バウシュ 躍り続けるいのち」(10)にも収められたが、“出会い”を求める男女のグループが、互いにさまざま方法でアピールし合い、駆け引きをし合う様子を描く演目だ。

 男性が女性の体に触れたり、男女が身体を密着させたり――。バウシュの作品にはそんな性的な表現が珍しくないが、「コンタクトホーフ」も例外ではない。それなりに恋愛経験もある大人の男女が演じることを前提にした作品だ。それを、初心なミドルティーンの生徒たちに演じさせる。ずいぶん挑戦的な試みである。

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 彼らは純然たるアマチュアだ。つまり舞台で演じたり踊ったりした経験がない。しかも、大半の者は恋愛も未経験。そんな少年少女たちを、ヴッパタール舞踊団のメンバー二人が、いかに指導し、どう鍛え上げていくのか。

 「コンタクトホーフ」は、他の演目のように高度な技術はさほど要求されない。代わりに徹底的な内面の解放が求められる。大事なのは、遠慮や羞恥といった感情を捨て去ることだ。しかし、思春期の男女にとっては容易なことではない。

 大声で笑う。異性の体に触る。衣服を脱ぐ――。シャイな少年少女たちが、数々の難題を克服しながら、次第に心の壁を崩し、自由な表現者へと脱皮していく過程は、スリリングかつ感動的だ。また、滅多に公開されないであろうピナ・バウシュ作品の舞台裏や練習風景が記録されている点で、さらには、バウシュの生前の姿を収めた最後の公式映像という点でも、貴重なドキュメンタリーである。

(文・沢宮亘理)

「ピナ・バウシュ 夢の教室」(2010年、ドイツ)

監督:アン・リンセル
出演:ピナ・バウシュ、ベネディクト・ビリエ、ジョセフィン=アン・エンディコット

3月3日、ユーロスペース、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.pina-yume.com/

作品写真:(c)TAG/TRAUM 2010
posted by 映画の森 at 09:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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