2011年10月29日

「フェア・ゲーム」 イラク核兵器開発はなかった 翻弄されるCIA職員

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 2003年3月20日、米ブッシュ政権はイラク戦争に踏み切った。開戦の背景には、イラクの核兵器開発疑惑は否定しがたいとの判断があった。しかし、米軍による捜索の結果、該当する事実は存在しなかった。戦争の大義は失われ、政権への不信感が広がった。

 実は、イラクに核兵器開発の計画がないのは、開戦前から分かっていた。CIA(米中央情報局)が極秘の潜入調査で突き止めていたのだ。調査にあたったのは、本作のヒロイン、ヴァレリー・プレイム(ナオミ・ワッツ)だ。普段は証券会社の社員として働いているが、本業はCIAの敏腕諜報員。彼女の情報に間違いがあるわけはなかった。

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 ヴァレリーの夫で元ニジェール大使のジョー・ウィルソン(ショーン・ペン)もまた、国務省の要請を受けてイラクの核兵器開発疑惑を調査。結果はやはり“シロ”だった。

 だが、ブッシュは二人の報告を無視し、イラク戦争を強行する。怒ったジョーは、自分たちの調査をもとに新聞で政府批判した。すると政府は、ヴァレリーがCIAの秘密諜報員であることをジャーナリストたちにリークしてしまう。

 知られてはならない素顔を、よりによって政府に暴露されたヴァレリーは、仕事も私生活も破壊される。そもそもの発端が夫の発言だったことも、彼女を苦しめ、夫婦間に溝が生じる。彼女の名誉回復、そして夫婦の和解はなるのか。ヴァレリーの戦いが始まる――。

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 「プレイム事件」として知られる一大スキャンダルを扱った問題作。よき妻であり、有能なキャリアウーマンであるヴァレリーの裏の顔が、CIAのエージェントという設定がなかなか魅力的である。身分が発覚した後、友人から「人を殺したことがある?」と質問されるシーンは生々しい。

 それにしても、アメリカという国は恐ろしい。気に入らない人物は簡単に抹殺しようとする。ある意味、専制国家である。しかし、一方、不正を告発する本作のような映画を製作し、発表する自由が保障された民主国家でもある。改めて、アメリカに対しアンビバレントな思いを抱かされる映画だ。

(文・沢宮亘理)

「フェア・ゲーム」(2010年、米国)

監督:ダグ・リーマン
出演:ナオミ・ワッツ、ショーン・ペン、サム・シェパード、ノア・エメリッヒ

10月29日、TOHOシネマズ六本木ヒルズほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://fairgame.jp/

作品写真:(c)2010 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
posted by 映画の森 at 08:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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