2008年11月12日

「ホルテンさんのはじめての冒険」 困り顔に 心ほっこり

ホルテンさんのはじめての冒険1_250.jpg

 かわいらしい邦題がついているが、注意されたい。初めての冒険をする主人公・ホルテンさんは、子供ではなく、67歳。定年退職を明日に控えたノルウェー鉄道の運転士だ。「キッチン・ストーリー」(03)のベント・ハーメル監督が、彼らしい北欧ユーモアを交えて語る、心温まる物語。

 ノルウェーの首都・オスロと第2の都市・ベルゲンを結ぶ“ベルゲン急行”の運転士、オッド・ホルテン(ボード・オーヴェ)。職業柄なのか、性格なのか、生真面目で几帳面。時間通りの運転を40年心がけ、家では小鳥にエサをやる。老人ホームの母親は、すでに自分を認識できていない。そんなホルテンさんが、定年退職前夜のパーティーから奇妙な偶然が重なり、冒険するはめになるのだ。決して彼の意志ではなく、追い込まれて次々に進んでいく、受動的シチュエーションである。


 ホルテンさんは言葉が少ない分、困り顔で多くを語ってくれる。いたって真面目なホルテンさんの行動は時に大胆で、小さな笑いが漏れてしまう。そして、出会うはずでなかった人々との温かい交流に、心がほこっとするだろう。表情変化の少ない北欧人が発するユーモアは、押しつけがましくなく、心地よいのだ。適度な距離を保ち、シニカルな部分も備えている。ほのかな光の効果も手伝って、独特の温かい世界を作っている。

 「キッチン・ストーリー」では、密室での男性2人の交流がテーマだったのに対し、「ホルテンさんのはじめての冒険」では、主人公が流れるように移動してゆき、そこに人々がいる。特にラストで知り合い、酒を酌み交わす“自称・外交官”は、彼の背中を押す大きな役割を担う。「人生遅すぎることはないのだ」というメッセージ。特に日本人はドキっとしてしまうのではないか? 自分を枠にはめて考えていたけれど、この枠って何? もっと違う可能性もあるし、大きな視点で見たら違う世界が見えるかも。67歳のホルテンさんが見た、新しい世界のまばゆい光が、私を元気づけてくれるようだった。

(文・神崎奈緒)

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「ホルテンさんのはじめての冒険」(2007年、ノルウェー)

監督:ベント・ハーメル
出演:ボード・オーヴェ、ギタ・ナービュ、ビョルン・フローバルグ

2月21日、渋谷・Bunkamura ル・シネマほかで全国順次公開。

作品写真:(c)2007 COPYRIGHT BulBul Film as ALL RIGHTS RESERVED
posted by 映画の森 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ノルウェー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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