2008年12月24日

「ロルナの祈り」 社会の闇 生き抜く女性の愛

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 カンヌ国際映画祭最高賞のパルムドールを受賞した「ロゼッタ」(99)、「ある子供」(05)で知られるダルデンヌ兄弟の最新作「ロルナの祈り」。移民、偽装結婚、国籍売買などの社会問題を背景に、真実の愛に目覚める女性の物語だ。

 極端に説明的な描写を排し、カメラは一歩引いて淡々と人物を追い続ける。アルバニアからベルギーに来た女性・ロルナ。銀行にわずかな金を預け、家に帰ると同居する男がいる。この時点では、男が何者か説明はない。親しげに声をかける男に、ロルナは素っ気なく、不機嫌そうにあしらう。二人の関係が見えてこない状態で、急病になった男がロルナに助けを求めた。男を介抱している時、「離婚」というセリフが出て初めて、観客は夫婦であると知り、二人のギクシャクした関係に疑問を感じ始める。

 ロルナはベルギー国籍を得るため、麻薬中毒のベルギー人・クローディーと偽装結婚していたのだ。国籍取得後に彼を薬漬けにして殺害する予定だった。ロルナは国籍売買組織の一員であることが、やがて明らかになる。そんなロルナには、同郷の恋人・ソルコとバーを開く夢があり、「偽装結婚は金のため」と割り切っていた。事務的に接するロルナと対照的に、クローディーは彼女を心のよりどころにしていて、薬を断つため入院を決意する。

 回復するクローディーを横目で見ながら、ロルナは裁判所で離婚手続きを早めるため、「夫から暴力を振るわれた」と警察に嘘の訴えをする。しかし、警察は「証人がいない」と相手にしない。その後クローディーは回復。「自宅で夕食を食べよう」とロルナを誘う。同意した彼女とともに自宅に戻ると、裁判所から離婚を認める書類が届いた。ロルナは計画変更を告げるため、クローディーとの約束を破り、ブローカーであるファビオの元へ行ってしまう。「ロルナに見放された」と失望したクローディーは、再び家に薬の売人を呼び入れる。帰宅したロルナは売人を追い出し、体をクローディーに捧げ、二人はむさぼるように激しく愛し合う──。

 ロルナは裏社会をしたたかに生きる女性である。恋人との幸せな生活を送るため、他人を踏み台にしてでも生きていく。図太い神経の持ち主だったが、組織の道具であるクローディーと暮らすうち、心に変化が生じた。クローディーに麻薬を断たせるため体を捧げた後は、事務的に接してきた道具に対し、恋人に見せるようなな満面の笑みを一瞬見せる。組織の歯車だったロルナが、初めて素の人間に戻った瞬間を、カメラははっきりとらえている。

 監督のダルデンヌ兄弟は、クローディーの死をザックリと贅肉をそぎ落とした演出で見せる。やがて組織との歯車が噛み合わなくなり、ロルナは呪縛から逃れるために行動を起こす。重いテーマを現実的に見つめ、未来に希望を託す寓話的な着地点。不思議な後味を残す作品である。

(文・藤枝正稔)

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「ロルナの祈り」(2008年、ベルギー=仏=伊)

監督:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
出演:アルタ・ドブロシ、ジェレミー・レニエ、ファブリツィオ・ロンジョーネ

2009年1月下旬、恵比寿ガーデンシネマほかで全国順次公開。
posted by 映画の森 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ベルギー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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