2009年01月10日

「オーストラリア」 二コール・キッドマン主演 一大叙事詩

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 オーストラリア国民の多くが、完成を今かと待っていた映画「オーストラリア」。上映時間3時間に及ぶ、オーストラリア版「風と共に去りぬ」だ。ここオーストラリアでは、映画を完成させること自体が“国家的事業”の印象。観に行かないのは、国賊扱いというわけである。

 第2次世界大戦前の欧州。英国貴族のサラ(ニコール・キッドマン)は、新開拓地のオーストラリア北部に広大な牧場を所有していた。牧場はベルギーほどの大きさで、夫が管理している。しかし、サラは夫がこの未開の地から帰ってこないことに 業を煮やしていた。オーストラリアに行って牧場を処分し、夫を連れ戻そう。決意したサラは英国を発つ。

 着いたところは、最北の港町・ダーウィン。サラは歓迎する英政府の役人の前を素通りし、荒くれカウボーイのドローヴァー(ヒュー・ジャックマン)が運転する車で牧場に向かう。しかし、サラを待っていたのは、槍で襲われ死んだばかりの夫の姿だった。家には年をとった会計士と、中国人の料理番、アボリジニの家政婦がいるだけ。サラは家政婦の息子・ナラ(ブランドン・ウォルターズ)と友達になる。

 会計士と話して分かったことは、牧場のマネージャーが不正を働き、牛を計画的に盗んでいたことだった。サラはただちにマネージャーをクビにする。しかしそれは、ダーウィンから遠く離れた牧場で、サラがひとり孤立することを意味していた。それを知ったサラは、カウボーイのドローヴァーに「牛1500頭をダーウィンで売るため移動させてほしい」と懇願する。カウボーイ20人が必要な牛の移動。3〜4人でできるわけがない。彼は一旦断るが、サラの窮状に見て見ぬふりができなかった。

 一方のサラは、アボリジニの少年・ナラが、白人同化政策でミッション・スクールに強制収用されるため、連れ去られそうになっているところを見て、自分の子として育てる決意をする。それを知ったドローヴァーは、サラのため一肌脱ぐことにする。

 ドローヴァー、サラ、ナラ、年老いた会計士、身の回りの世話をするアボリジニ家族だけで、牛1500頭を移動させる旅は過酷で、苦渋を極めた。解雇されたマネージャーは、執拗に追ってきて移動を妨害する。遠くから見守るアボリジニ長老の自然と一体化したパワーに助けられ、ついに一行はダーウィンに到着する。

 サラは初め、英国から持ってきた絹のドレスや帽子まで持って移動していた。だが、荒々しい砂漠で命にかかわる経験をして、自分がどんなに世間知らずだったか思い知る。不可能な旅を可能にしてくれたドローヴァーのカウボーイとしての能力、人間としての幅の広さを認識し、サラは彼を愛するようになる。同時に孤児になったナラを引き取ることで人間としても成長する。

 ダーウィンに着いて牛を売り払い、牧場を処分してイギリスに帰る予定だったサラ。それを取りやめ、ドローヴァーと二人で牧場を経営し、ナラを引き取り暮らすと決める。しかし、幸せは長く続かない。日本軍が真珠湾を攻撃したのだ。サラがダーウィン市庁舎で通信業務を手伝っている時、日本軍が攻撃し始めた。街は混乱し、人々はパニックに襲われ、多くの死傷者が出た──。

 1942年2月19日。日本軍の空爆により、ダーウィンでは少なくとも243人が死亡、多くの負傷者が出た。60年以上たった今も、ダーウィン市民の反日感情は強い。それは事実。当時の日本軍の対外政策は間違っていた。これも事実。しかし映画に出てきたように、日本軍は領地を占領してはいない。子供を救いに来たオーストラリア人を取り囲み、殺したりもしていない。私はこういう小さな嘘が嫌いだ。

 とはいえ、雄大な北部オーストラリア自然は見るべきものがある。山、川、砂漠、大地。アボリジニ長老のキング・ジョージを演じるデヴィッド・ガルピリルがとてもいい。彼自身が伝統的アボリジニ社会で、ブッシュ生活をしていると聞く。アボリジニの少年・ナラを演じるブランドン・ウォルターズも、ものすごくかわいい。びっしり生えた長いまつげ。ぱっちりと大きな瞳。彼らが画面に登場すると、アボリジニ風の音楽が流れ出し、「これがオーストラリアだ」という確かな感触を得られる。大画面で見て損がない作品だ。

(文・TaylorAkiko)

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「オーストラリア」(2008年、オーストラリア)

監督:バズ・ラーマン
俳優:ニコール・キッドマン、ヒュー・ジャックマン、デヴィッド・ウェンハム、ブライアン・ブラウン、ジャック・トンプソン、デヴィッド・ガルピリル、ブランドン・ウォルターズ

2月28日、日比谷スカラ座ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://movies.foxjapan.com/australia/

作品写真:(C)2008 TWENTIETH CENTURY FOX
posted by 映画の森 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | オーストラリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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