2009年02月22日

「PVC-1 余命85分」 爆死か生還か 究極のサバイバル

PVC-1 余命85分1_250.jpg

 凶悪な武装ゲリラが農園一家を襲撃。家族全員を縛り上げ、法外な身代金を要求したうえ、母親の首に爆弾内蔵のチューブを巻き付けると、1本のカセットテープを残し逃走してしまう。テープには「要求に応じないとリモコンでチューブを爆発させる」とのメッセージ。一家は絶望に陥りながらも警察に通報し、爆弾処理のエキスパートに運命を託すのだが――。

 「PVC-1 余命85分」は、2000年にコロンビアで起きた凄惨な事件の映画化である。オープニングからエンディングまで85分、上映時間と劇中時間は完全にシンクロしており、さらに全編をワンカットで撮影。そのため、まるでリアルタイムで事件の進行に立ち合っているかのようなスリルが味わえる。

 爆弾内蔵の首輪をはめるという残忍な設定は、ルイス・ティーグ監督の「ウェドロック」(91)や深作欣二監督の「バトル・ロワイアル」(00)などに見られる。しかし、実際に犯行に用いられたかと思うと、身の毛がよだつ。しかも、同様の事件は03年にアメリカでも起きているのだ。つまり、この映画で描かれたドラマは決して絵空ごとではない。いつ、我々自身の身に起きても不思議ではないリアルな恐怖なのだ。

 オープニングに映し出されるのは、いかにも凶暴で気の短い男を首領とする男女5人組。憐憫の情などかけらも持ち合わせず、話し合いに応じる理性も知性もない。まさにこれぞ凶悪犯といった連中だ。こういう輩が生殺与奪の権を握るのだから、たまったものではない。

 85分のうちの半分以上は、一触即発の恐怖と戦いながらの爆弾処理シーンである。処理を任されたハイロ中尉(アルベルト・ソルノサ)のナイフさばき一つで、母親のオフェリア(メリダ・ウルキーア)、そして彼自身の命運が決まる。ポリ塩化ビニール(PVC−1)で作られたチューブからは時おり警告音が発せられ、二人を震え上がらせる。ナイフはなかなかチューブを通らない。刻一刻と時間は過ぎていく。

 やがて、中尉がナイフをチューブに食い込ませることに成功。しかし、その切れ目から内容物が飛散し、中尉は激しくせき込む。パニックを起こした母親は失神し心肺停止。警察部隊が駆けつけ、酸素吸入、胸部圧迫、蘇生。そして爆弾処理再開。手に汗握る展開が続く。果たして、中尉は爆発前に処理を完了できるのか?

 29歳の新鋭、スピロス・スタソロプロスの長編デビュー作。07年カンヌ国際映画祭ローマ市賞、08年バンコク国際映画祭最優秀作品賞などを受賞した、サスペンス映画の傑作だ。

(文・沢宮亘理)

×××××

「PVC-1 余命85分」(2007年、コロンビア)

監督:スピロス・スタソロプロス
出演:メリダ・ウルキーア、ダニエル・パエス、アルベルト・ソルノサ

3月14日からシネセゾン渋谷でレイトショー。ほか全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.cinemacafe.net/official/pvc1/

作品写真:(c) 2008 The Independent Film Channel LLC. all rights reserved
posted by 映画の森 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | コロンビア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック