2009年06月01日

「インスタント沼」 三木聡監督の“ギャグ大全”

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 担当していた雑誌が休刊となり、出版社を辞めた編集者の沈丁花ハナメ。人生を仕切り直そうと身辺整理していると、謎の手紙が出てきた。読んでみると驚くべき事実が発覚。どうやら、ハナメの実の父親は沈丁花ノブロウという見も知らぬ男らしい。ハナメは、手紙を頼りに男の居所を探し当てる。すると、そこに現れたのは“電球”と名乗るうさん臭いオヤジだった――。

 「図鑑に載ってない虫」(07)や「転々」(07)など、特異な味わいのコメディーで知られる三木聡監督の新作「インスタント沼」。ジリ貧人生にピリオドを打って巻き返しをはかるべく奮闘するハナメと、父親なのか詐欺師なのか判然としない“電球”との関係に、無気力なパンクロッカーのガスが加わり、さらに、種々雑多な人々も絡んで展開する、ギャグ満載の奇天烈(キテレツ)コメディーだ。

 最終的には、ハナメが現状打開への道を見出し、「信じる心が大切」というメッセージが打ち出されるのだが、映画の主眼はあくまで笑い。全編ギャグがぎっしり詰め込まれていて、三木監督の“ギャグ大全”といった趣がある。

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 ただし、ギャグが観客の笑いを取れるかどうかは、役者の表現力に負うところが大きい。主人公のハナメを演じる麻生久美子は、テレビドラマ「時効警察」シリーズで三木監督と組んでいただけあり、テンションの上げ下げやタイミングの取り方など、心得たもの。笑いのツボは確実に押さえている。また、ガスを演じる加瀬亮は、初めての三木作品にもかかわらず、キャラクターとギャグを完ぺきにマッチさせている。シリアスな役どころの多い加瀬だが、コメディー感度も相当に高いようだ。

 そして“電球”役の風間杜夫。つかこうへい作品の中心役者として鳴らし、日本アカデミー賞を3度受賞するなど、確固たる評価を得ている風間だが、その実力は遺憾なく発揮されている。麻生と並んで最も多くのギャグをこなしているのだが、ほぼ100%の確率でギャグを炸裂させているのは、さすがだ。主要キャストにこの3人の役者を得たことで、三木監督の新作はまさに“ギャグ大全”と呼ぶにふさわしいものとなった。

 タイトルの「インスタント沼」が何を意味するかは、見てのお楽しみ。「水道の蛇口をひねれ」という“電球”からハナメへのアドバイスが、謎を解く鍵となっている。

(文・沢宮亘理)

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「インスタント沼」(2009年、日本)

監督:三木聡
出演:麻生久美子、風間杜夫、加瀬亮、松坂慶子

5月23日、テアトル新宿ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.instant-numa.jp/

作品写真:(c)2009「インスタント沼」フィルムパートナーズ
posted by 映画の森 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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