2020年09月18日

「宇宙でいちばんあかるい屋根」 清原果耶、初主演映画「誰かの心に届いてほしい」

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 清原果耶の初主演映画「宇宙でいちばんあかるい屋根」の公開初日舞台挨拶がこのほど、東京・新宿で行われ、清原、共演の伊藤健太郎、藤井道人監督らが参加した。清原は「出合えてよかった脚本、作品、現場だった。作品が誰かの心に届いてほしい」と語った。

 作家・野中ともその同名小説が原作で、14歳の少女つばめの中学最後の夏と成長を描く。清原はコロナ禍の宣伝活動を経て、無事公開を迎えて感慨深げ。客席を見まわして「映画どうでしたか」と問いかけると、温かい拍手が送られた。清原は「初日を迎えられたことが奇跡。皆さんの顔を見て改めて実感した。この映画が映画館で観られることに感謝しかない」と話した。

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 つばめが恋心を寄せる大学生・亨役の伊藤は「こういう時期に皆さんの前に立ち、映画をやっと届けられてうれしい」と喜びをにじませた。また、いわゆる普通の男の子である亨について「普通の男の子は難しいけれど楽しい。悲しい時、苦しい時、包み隠さず(感情を)出す人が普通に近いのかな、そこが魅力かなと思い、意識して演技した」と説明した。

 藤井監督は「映画が完成した後も、映画館で公開して舞台挨拶できるのか、と思っていた。配給会社、宣伝会社がこのような場を用意し、清原さん、伊藤君が来てくれて、皆さんに感謝する機会をもらえるのは特別なことだと改めて思います」と話した。

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 また、謎の老婆を演じた桃井かおりはロサンゼルスから動画メッセージで登場。「大きい画面で皆さんと観るのを楽しみにしていたので、行けなくてごめん。今日は伊藤君が頑張って盛り上げて!また現場でお芝居しましょう!」と熱いエールを送った。

 さらに、桃井は清原を「もう少したって、また現場で会えるのを楽しみにしている、長生きするから。しぶとく生きろ!」と激励。藤井監督にも「また声かけて下さい。監督の仕事は断りません!また現場でお会いしましょう」と話した。

 最後に清原が「出合えてよかった脚本、作品、現場だった。作品が誰かの心に届いてほしい」と話し、伊藤も「映画に出てくる言葉に心救われる瞬間が何度もあると思う」と話した。

(文・写真 岩渕弘美)

「宇宙でいちばんあかるい屋根」(2020年、日本)

監督:藤井道人
出演:清原果耶、伊藤健太郎、水野美紀、山中崇

2020年9月4日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://uchu-ichi.jp/

作品写真:(C)2020「宇宙でいちばんあかるい屋根」製作委員会
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2020年09月16日

「喜劇 愛妻物語」濱田岳と水川あさみ、令和らしい夫婦喜劇

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 結婚10年。うだつの上がらぬ脚本家・豪太(濱田岳)は、妻のチカ(水川あさみ)、小学生の娘アキ(新津ちせ)と四国へ旅に出る。現地を舞台にした脚本を書くため、5日間の取材旅行だ。しかし、豪太は「旅の間に妻とのセックスレスを解消する」とひそかに考えていた──。「百円の恋」(14)、「嘘八百」(18)の脚本家・足立紳による長編監督2作目。昨年の東京国際映画祭で最優秀脚本賞を受賞した。

 年収50万円ほどの豪太は、家計を支えるチカ、娘のアキと東京の小さなアパートで暮らしている。夫妻は3カ月間セックスレス。豪太は隙あらばと狙っているが、拒否され続けて悶々としている。妻が大黒柱として稼ぎ、豪太は食わせてもらっており、頭が上がらないのだ。毎日家でゴロゴロしている豪太に、チカは容赦なく罵声を浴びせていた。

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 そんな豪太に仕事が舞い込んだ。旧知のプロデューサーに預けていたホラーの脚本が映画化されることになり、さらに別の企画を出すよう言われたのだ。豪太は四国にいる「高速でうどんを打つ女子高生」を題材に脚本を書くため、取材旅行を決定。 取材費が出ないため、チカを運転手にすることに。東京から鈍行列車とレンタカーを使い、家族3人で四国へ向かうのだ。

 足立監督が自伝小説をを映画化したため、キャラクターが生き生きしている。どこまでも情けない豪太は濱田にぴったり。愛すべき超ダメ夫として、妻役の水川と冷めきった倦怠期夫婦を演じる。大部分は親子3人芝居で、夫婦のシーンはほとんど機嫌が悪い。水川は眉間にしわを寄せ、夫に罵声を浴びせて叱咤する。恐ろしい妻だ。

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 そんな夫婦の仲を取り持つのが娘のアキだ。ひょうひょうとした様子が愛おしい。演じた新津は「パプリカ」をヒットさせた「Foorin」のメンバーで、期待の子役である。チカの友人で優雅なセレブに夏帆、豪太のかつてのバイト仲間かつ浮気相手に大久保佳代子。大久保のエロい演技はインパクト絶大だ。

 足立作品の主人公の原動力はずばりセックスといえる。デビュー作「14の夜」(16)主人公はAV女優に憧れる中学生だった。監督は男の悲しい性を喜怒哀楽をからめて描くのがうまい。心温まるエピソードも挿入し、下世話になりがちな話をバランス良く着地させている。俳優たちの好演も手伝い、令和の時代らしい夫婦喜劇に仕上がった。

(文・藤枝正稔)

「喜劇 愛妻物語」(2020年、日本)

監督:足立紳
出演:濱田岳、水川あさみ、新津ちせ、大久保佳代子

2020年9月10日(金)、新宿ピカデリーほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://kigeki-aisai.jp/

作品写真:(C)2020「喜劇 愛妻物語」製作委員会
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2020年09月09日

「人数の町」独創的で刺激的、社会風刺も 毒のあるミステリー

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 借金取りに追われ暴行を受けていた蒼山(中村倫也)は、黄色いつなぎ服を着たひげ面の男(山中聡)に助けられる。男は蒼山を「デュード」と呼び、居場所を用意するといい、たどり着いた先は奇妙な町だった。町の住人はつなぎ服を着た「チューター」たちに管理され、簡単な労働と引き換えに衣食住が保証されていた──。新たな才能発掘を目指す木下グループ新人監督賞の第1回準グランプリを映画化。荒木伸二監督の初長編。

 日本映画には珍しいミステリアスな作品だ。強いていえば高度成長期の1970年代、全盛期の筒井康隆の小説にありそうなブラックな物語。居場所をなくした若い男女がある町に集められ、ホテルのような個室を与えられる。彼ら「デュード」は、部屋でバイブルと呼ばれる書物を熟読。単純労働と快楽を与えられながら、時々に名もなき工作員として使われる。指示された内容をSNSに投稿したり、新薬の被験者となったり、事件現場で偽装被害者となったり、選挙で替え玉投票したり。デュード同士のフリーセックスも認められている。

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 しかし、デュードたちは表向き「出るのも入るの自由」とされているが、実際には勝手に町から出られない。町に来た時、首の後ろに打たれる何かが行動を制限。町を離れようとすると不快な音が脳を攻撃し、逃げ出せないのだ。「西遊記」で孫悟空が頭に付けた頭の輪(きんこじ)が、三蔵法師の呪文で締め付けられるのに似ている。

 観客は主人公と同じ視点で住民の行動を追い、自問自答する。「私たちが暮らす町は、映画のようにコントロールされているのではないか」。ネガティブな想像をかきたてる手法は独創的だ。格差に貧困、SNSの悪質な書き込みなど、現代日本の闇が物語の根底に流れている。「デュード」は英語のスラングで「奴、野郎」を意味し、「チューター」は個人指導の教師や講師を指す。

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 中盤以降、行方不明の妹を探しにきた虹子(石橋静河)が登場する。町にどっぷり浸かっていた蒼山が、町へ疑問を抱く虹子と出会い、考えを変えていく。蒼山の心情や内面が伝わりづらく、鍵となる性描写を曖昧にしたのが惜しい。中村と石橋が好演するほか、町の女王的な存在・緑を演じた立花恵理が、初映画で華やかなオーラを振りまく。名脇役・山中の存在感が物語を引き締める。独創的で刺激的、社会風刺も盛り込んだ毒のあるミステリーだ。

(文・藤枝正稔)

「人数の町」(2020年、日本)

監督:荒木伸二
出演:中村倫也、石橋静河、立花恵理、橋野純平、山中聡

2020年9月4日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://www.ninzunomachi.jp/

作品写真:(C)2020「人数の町」製作委員会

posted by 映画の森 at 15:31 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする