2020年04月08日

「アドリフト 41日間の漂流」ヨットで遭難、生還まで 壮絶実話の映画化

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 1983年、婚約したてのタミー(シャイリーン・ウッドリー)とリチャード(サム・クラフリン)は、世界旅行の資金を稼ぐため、ヨットでタヒチからサンディエゴへ向かった。出発から2週間後、ハリケーンに遭遇。巨大津波に飲み込まれてしまう。船室のタミーは目を覚ますが、ヨットは操縦不能で無線もつながらない。リチャードは大けがを負い、波に漂っていた。リチャードを助け出したタミーは、セーリングの知識を総動員して陸を目指す──。

 タミー・オールダム・アッシュクラフトが1983年、ハリケーンにより難破、漂流、生還するまでの41日間を記録した原作をベースに、アーロン&ジョーダン・カンデルが脚本化した。監督、製作は実際の集団遭難を映画化した「エベレスト3D」(15)のバルタザール・コルマウクル。

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 実際の海難事故を描いた映画は世界に数多くある。最近では1991年に米国でハリケーンにのまれた漁船を描いた「パーフェクトストーム」(00)があるが、生存者がいないため、出航後のエピソードは創作だった。一方、「アドリフト 41日間の漂流」は生還したタミーが書いた経験談がベース。生きて帰ることがあらかじめ分かっている。

 そこで作品は、実話を逆手に取った構成となっている。二人の出会い、恋愛に発展する過程、リチャードがヨットを運ぶ仕事を引き受け、出航からハリケーンに遭うまでの過去に、難破して漂流する現在が交差して展開する。

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 実話である制限がある中、平面的になりがちなドラマを時間軸を巧みに操って立体的に描く。漂流者や遭難者が見るという“ある現象”を大胆に取り入れ、ハリケーンの恐怖をダイナミックに再現。漂流する人物の心理を丁寧に描写した。テレビの実話再現番組のように陳腐ではなく、映画ならではの骨太な人間ドラマに仕上がった。

 遭難する現在のパートは、ウッドリーとクラフリンの二人芝居だ。タミーの船上でのサバイバル生活。漂流したリチャードは助けられるが、けがで寝たきりとなり、ほとんど動けない。大海原で絶望しつつ、二人は互いを頼って生きようとする。

 製作も務めたタミー役のウッドリーがいい。主演したSFアクション「ダイバージェント」シリーズのヒロインから一転、ぎりぎりの精神状態の中、生還を信じてあきらめない姿を好演した。空腹のリチャードのために海に潜り、もり一本で魚を仕留めるアクションも披露。柔軟な演技に共感し、自然と物語に引き込まれる。再現ドラマの域を超え、ひねりの利いた壮絶な実話映画に仕上がった

(文・藤枝正稔)

「アドリフト 41日間の漂流」(2018年、英・米)

監督:バルタザール・コルマウクル
出演:シャイリーン・ウッドリー、サム・クラフリン

2020年公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://adrift-movie.jp/

(C)2018 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

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2020年04月02日

「ポップスター」ナタリー・ポートマン主演 輝ける歌姫の栄光、転落、再起

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 2000年、米国。同級生による銃乱射事件で、生死のふちをさまよったセレステ(ラフィー・キャシディ)。姉のエリー(ステイシー・マーティン)と作った犠牲者の追悼曲が異例の大ヒットとなり、敏腕マネージャー(ジュード・ロウ)の手で一気にスターダムを駆け上がる。

 18年後。人気の絶頂を極めたセレステ(ナタリー・ポートマン)だったが、アルコールとスキャンダルにつまずき、活動休止に追いやられる。悪魔に魂を売ってでも再びステージで輝きたい歌姫は、再起をかけたツアーを企画する──。監督、脚本は「シークレット・オブ・モンスター」(2015)で長編監督デビューした俳優のブラディ・コーベット。

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 作品は2部構成だ。幕開けは1999年。銃乱射に巻き込まれた14歳のセレステは、ショービジネス界に入り、スターの階段を上っていく。しかし、マネージャーとエリーが男女の関係となり、姉妹の関係にひびが入る。少女時代をラフィー・キャシディが演じる。2017年からの後半では、ポップス歌手として大スターとなった31歳のセレステ役を「レオン」(94)、「ブラックスワン」(10)のナタリー・ポートマンが演じる。

 銃乱射の悲劇をばねに、スター街道を走る少女を描いており、前半が秀逸だ。まず乱射事件の描写がショッキングで凍りつく。重傷のセレステはベッドの上で歌を作り、人々の共感を得てショービジネスの世界へ。普通の少女が芸能界に入ったことで、自堕落な生活に陥る過程が生々しい。キャシディが素人っぽいセレステを魅力的に演じている。

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 しかし、後半のセレステは貫禄の大スターになっており「17年の間に何があったのか」と思うほど変貌している。恐らく米ポップ界の大スター、マドンナを参考にしたのだろう。精神的に追い詰められる歌姫の舞台裏ドラマが、前半とかみ合わずバランス悪く感じた。

 前半は銃乱射事件に揺れる少女の心を丁寧に掘り下げたが、後半はショービジネスの裏側が楽屋落ち的に明かされる。セレステの家族のドラマに加え、ポートマンの夫のバンジャマン・ミルピエが振り付けたクライマックスのステージ。全体に欲張りすぎた印象だ。完ぺきだった前半の足を凡庸な後半が引っ張ってしまい、惜しい作品となった。

(文・藤枝正稔)

「ポップスター」(2018年、米)

監督:ブラディ・コーベット
出演:ナタリー・ポートマン、ジュード・ロウ、ラフィー・キャシディ、ステイシー・マーティン、ジェニファー・イーリー

2020年公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://gaga.ne.jp/popstar/

作品写真:(C)2018 BOLD FILMS PRODUCTIONS, LLC
posted by 映画の森 at 23:40 | Comment(0) | 米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする