2020年01月31日

「Red」完成披露舞台あいさつ 夏帆「悩んで悩んで苦しんだ」難役 妻夫木聡に感謝

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 直木賞作家・島本理生の小説が原作の映画「Red」の完成披露試写会が2020年1月29日、東京・新宿で行われ、主演の夏帆、妻夫木聡、柄本佑、間宮祥太朗、三島有紀子監督が舞台あいさつした。

 夫と娘とともに幸せな生活を送る主婦の塔子(夏帆)が、10年ぶりにかつての恋人・秋彦(妻夫木)に再会し、快楽におぼれていく物語。三島監督は「塔子は本当に難しい役。誰ならできるかと考え、夏帆さんにと思った」と語った。

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 鮮やかな真っ赤なドレス姿で登場した夏帆は「監督が現場で戦う姿を見てきて、今回主演で呼んでもらえた。監督の覚悟を感じ、生半可な気持ちではできないと思い、覚悟を決めて挑んだ」と話した。

 初共演の夏帆の印象について、妻夫木は「嘘がない。役にどう接していいか、どうアプローチしていいか分からない気持ちを素直に吐露していた。顔にもすぐ出ちゃう。嘘がなくて好きだった。悩んで悩んで出したものが塔子自身で、初めて成立する。最後まで戦う姿は素晴らしかった」と絶賛した。

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 妻夫木の言葉に「すみません」と恐縮しきりの夏帆。「悩んでいること全て妻夫木さんにぶつけてみようと思った。見栄を張るより、自分をすべて見せて、思いをすべてぶつけた方が、距離を縮められるかなと。妻夫木さんはすべて受け止めて、芝居で返してくれる安心感があった」と感謝の言葉を述べた。

 また、夏帆は「1年前の撮影を振り返ると、この日を迎えられるなんて、と思うくらい悩んで悩んで苦しんだ。振り返るとそれも幸せな時間だった。1人の女性として生きる中で、何を選び取れば、より自分に素直になれるか、考えながら演じた。見終わった後、いろいろな人と語りたくなる映画になっていると思う」と話していた。

(文・写真 岩渕弘美)

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「Red」(2020年、日本)

監督:三島有紀子
出演:夏帆、妻夫木聡、柄本佑、間宮祥太朗

2020年2月21日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://redmovie.jp/

作品写真:(C)2020「Red」製作委員会

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2020年01月30日

「母との約束、250通の手紙」仏作家ロマン・ガリ、母との絆と激動の人生

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 思い込みが激しく、負けん気の強いシングルマザーのニーナ(シャルロット・ゲンズブール)。息子のロマン(ピエール・ニエ)はいずれ「仏軍勲章を受けて外交官、大作家になる」と信じて、才能を引き出すことに命をかけていた。母とロシア、ポーランド、フランスに移り住んだロマンは、溺愛の重圧にあえぎながらも、幼い頃に母と結んだ約束を果たすべく、努力を惜しまぬようになっていく──。

 映画「勝手にしやがれ」(59)の主演女優ジーン・セバーグの元夫で、仏の作家ロマン・ガリの自伝小説「夜明けの約束」を映画化した。1970年以来2度目、47年ぶりの映画化。監督、脚本は「赤と黒の接吻」(91)、「蛇男」(08)、「ラスト・ダイヤモンド 華麗なる罠」(14)のエリック・バルビエ。

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 幕開けは1950年代半ば。米ロサンゼルスの仏総領事になったロマンは、旅先のメキシコで頭痛を抱えつつ「夜明けの約束」を書いていた。やがて幼少期の記憶がよみがえり、ロマンは母との20年間を回想し、1924年のポーランドから時系列でエピソードがつづられる。

 フランスを理想化するユダヤ系ポーランド人移民の母ニーナは、ロマンに「将来お前はフランス大使、大作家になる」と暗示をかけている。母の言葉を信じ、実現しようとする息子。親子の根底には壮大な思い込みが横たわっている。

 「有限実行」の母は、他人の前で堂々と理想を話して行動に移す。高級服飾店を開いた時は、俳優をデザイナーに仕立てて話題づくり。店を堂々と開店し、繁盛店にしてしまう。計算高く神経が図太い。

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 母と息子は擬似恋人のようだ。ニーナはロマンが愛する女性をことごとく否定し、関係をぶち壊す。母との距離が近すぎて、ロマンも苦しむが、裏切れずに理想の姿になるべく努力する。仏軍に従軍し、第二次世界大戦でロンドン、アフリカと場所が移るたび、母は息子に手紙を書く。手紙は二人をつなぐ重要なコミュニケーションの道具となる。

 ロマンの数奇な運命の裏に、叱咤を続けた母がいた。母を演じたゲンズブールが強烈だ。父は歌手セルジュ・ゲンズブール、母に女優ジェーン・バーキン。少女の頃から歌手や女優としてキャリアを積み、繊細なイメージだったが、今回は激しく極端な母親役だ。

 ロマン役のニエは、実在のデザイナーを演じた「イヴ・サンローラン」(14)から一転、人間味あふれる主人公を好演した。131分の長尺作品だが、テンポ良くメリハリの利いた演出。ロマン・ガリを知らない観客も、自叙伝として十分に楽しめる。

(文・藤枝正稔)

「母との約束、250通の手紙」(2017年、仏)

監督:エリック・バルビエ
出演:ピエール・ニネ、シャルロット・ゲンズブール、ディディエ・ブルドン、ジャン=ピエール・ダルッサン

2020年1月31日(金)、新宿ピカデリーほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://250letters.jp/

作品写真:(C)2017 - JERICO-PATHE PRODUCTION - TF1 FILMS PRODUCTION - NEXUS FACTORY - UMEDIA
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2020年01月21日

「シグナル100」自殺催眠に翻弄される高校生、阿鼻叫喚のデスゲーム

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 学園祭の準備で慌ただしい聖新学園高校3年C組の生徒たち。担任の教師・下部(中村獅童)に呼び出された樫村怜奈(橋本環奈)ら36人は、突然不気味な映像を見せられる。それは特定の行動を取ると自ら命を絶ってしまう“自殺催眠”の暗示だった──。

 宮月新原作、近藤しぐれ作画の同名コミックを、「さまよう小指」(14)、「春子超常現象研究所」(15)の竹葉リサが監督した。

 担任の下部がかけた“自殺催眠”。「スマホを使う」「泣く」「あくびをする」などのなにげない日常の行動に、催眠発動のシグナルが100あるという。シグナルの詳細は担任の下部だけが知っている。生徒たちは生きるために下部を問い詰めるが、彼は答えを封印するかのごとく教室の窓から飛び降り、自殺してしまう。

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 催眠を解く方法を失い、絶望状態に置かれた生徒たちは、下部が残したメッセージからシグナルを解こうと奮闘する。だが、次々と下部の罠にはまり命を落としていく。疑心暗鬼に駆られ、相手を出し抜こうとする生徒がいる一方、仲間のために犠牲となって死ぬ者もおり、校内は阿鼻叫喚の修羅場と化す。

 外部と連絡が取れず、学校から出られず、死に直面した生徒たちがパニックになる。無人島に隔離された中学生のサバイバル映画「バトル・ロワイアル」(00、深作欣二監督)を彷彿とさせ、竹葉監督も「影響を受けた」と明言している。「クラスの中で生徒1人だけが生き残る」設定や、15歳未満は鑑賞できない「R15」指定なことも共通する。文字で表しがたい壮絶な死に様が描かれる。

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 「1000年に1度の逸材」と期待される橋本が、血まみれの制服姿で生き残りゲームに挑んでいる。多くの生徒たちの中では存在感が抜きん出ており、物語の流れが想像できてしまうのが難点か。担任役の中村は、短い出演ながら独特の不気味さ。生徒役の俳優たちと格の違いを見せ付けた。

 「バトル・ロワイアル」から20年。遺伝子は「シグナル100」に受け継がれたようだ。担任が仕掛けたシグナルに生徒たちが翻弄されるように、観客も監督の巧みなトラップに惑わされるだろう。

(文・藤枝正稔)

「シグナル100」(2020年、日本)

監督:竹葉リサ
出演:橋本環奈、小関裕太、瀬戸利樹、甲斐翔真、中尾暢樹、福山翔大

2020年1月24日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://www.signal100.jp/

作品写真:(C)2020「シグナル100」製作委員会

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2020年01月17日

「私の知らないわたしの素顔」SNS上のバーチャル恋愛、なりすましが招く悲劇

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 パリの高層マンションに暮らす50代の大学教授・クレール(ジュリエット・ビノシュ)は、年下の恋人に捨てられたことをきっかけに、SNSの世界に足を踏み入れる。Facebookで“24歳のクララ”になりすまし、アレックス(フランソワ・シビル)とつながったが、アレックスとクララが恋に落ちて事態は思わぬ方向へ──。

 2016年に出版されたカミーユ・ロランスの小説を原作に、サフィ・ネブー監督がビノシュを主演に想定して脚本を書いた。女優で映画監督のニコール・ガルシアが精神分析医役で出演している。

 他人になりすました詐欺行為は、日本でも主に高齢者をターゲットに急増している。「私の知らないわたしの素顔」は女性が年下の男性をだますもので、場所は変われど現代的なテーマといえよう。

 離婚経験者のクレールは、息子2人が週末に夫のもとへ行く際、年下の恋人と愛欲生活を楽しんでいた。しかし、恋人に簡単に捨てられ、彼の近況を知りたくてSNSに入り込む。アレックスは恋人の仕事上のパートナーだった。クレールは若く美しい他人の写真をプロフィールに使い、「クララ」の名前で登録。アレックスに友達として承認される。

 アレックスとチャットするうち、クレールの内に恋愛感情が芽生える。アレックスも「クララ」を気に入り、互いにバーチャル恋愛にはまっていく。しかし、アレックスはチャットだけで物足りなくなり「声を聞きたい」「会いたい」と要求がエスカレートする。SNSの匿名性を利用していたはずのクレールだったが、厳しい現実を突きつけられる。

 SNS全盛時代、誰にも起こりうるバーチャル恋愛をスリリングに描いている。芸達者のビノシュが演じたクレールは、容姿に自信がない50代のバツイチ女性。冒頭は枯れて色つやがない眼鏡おばさんだが、バーチャル恋愛を楽しむことで、どんどん魅力的に変貌していく。しかし、アレックスの脳に刷り込まれた「クララ像」は覆せず、物語は悲劇に向かう。

 ポイントになるのは、クレールの話を聞く精神分析医・ボーマン(ニコール・ガルシア)の存在だ。恋愛にはまって暴走するクレールを客観視し、作品を引き締めている。SNSの魔力にとわれた女性の心理、行動に鋭く切り込む1本だ。

(文・藤枝正稔)

「私の知らないわたしの素顔」(2019年、仏)

監督:サフィ・ネブー
出演:ジュリエット・ビノシュ、二コール・ガルシア、フランソワ・シビル、ギョーム・グイ

2020年1月17日(金)、Bunkamura ル・シネマほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://watashinosugao.com/

作品写真:(C)2018 DIAPHANA FILMS-FRANCE 3 CINEMA-SCOPE PICTURES
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2020年01月12日

「パラサイト 半地下の家族」滑稽で残酷でほろ苦い 離れがたきこの世界

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 カンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)を獲ったポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」は、格差社会を糾弾する作品ではない。貧富の構図は、物語の入り口に過ぎない。

 半地下の家に住む貧乏な家族が、金持ち家族の豪邸に入り込み、「寄生」する悲喜劇だ。貧乏と金持ち、それぞれの家族の住居、家具や持ち物、服装や職業はリアルに考えられ、日常生活が詳細に映し出される。しかし、監督はどちらが幸せとも、不幸せとも断定しない。どちらがいいとも、悪いとも言わない。ポン・ジュノの映画はいつも饒舌だが、メッセージを発しない。

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 そんな中で、あえて意味を持たされた存在が二つあった。一つは匂いだ。貧乏家族の父親(ソン・ガンホ)が、爆発するきっかけになるのが、体にしみついた匂いだった。人は自分の匂い(具体的にも抽象的にも)に気づかない。ぬぐえない。だからこそ、他人に指摘されると癇に障る。知らぬうちに忌むべき「貧しさ」を拡散していたことを、父親は他人に指摘され、傷つき、爆発する。

 もう一つは、貧乏家族の元に到来した大きな石。息子は最後まで「なぜ離れられないのか分からない」と言いながら、石を持ち歩き、最後の決定的なエピソードが起きる。来日インタビューで石の意味を問われたソン・ガンホは、「私にも分からない」と答えていた。なぜなら、石は人なら誰しも抱えている「生きにくさ」の元凶──自分ではどうにもならない、内側に抱える業のようなもの──だからだ。人間の数だけ石があるから、何を象徴するかは言えない。ソン・ガンホはそれを理解していただろう。

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 ポン・ジュノの「語り」の力は圧倒的で、ディテールと構図に目を奪われ、ユーモアとリアリティーに感情をゆさぶられ、ぐいぐい物語に引き込まれていく。見終わった後、監督が何かを「訴えた」のではなく、この世界──ある時は容赦なく、逃げ出したく、ある時は心地よく、離れがたい──私たちが暮らす世界を、そのままざっくりすくい取っていたことに気づく。そこに暮らす貧乏な家族も、裕福な家族も、時に滑稽で、時に温かく、幸せにも、不幸せにも見える。自分と同じ人間なのだ。

 メッセージを発しないポン・ジュノが、この寄る辺なき世界を楽しく、ほろ苦く、残酷に、豊かに見せてくれて、心から満たされた。

(文・遠海安)

「パラサイト 半地下の家族」(2019年、韓国)

監督:ポン・ジュノ
出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム

2019年12月27日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.parasite-mv.jp/

作品写真:(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED
posted by 映画の森 at 23:16 | Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする