2019年11月29日

「ゾンビ」日本初公開復元版 ホラー映画の金字塔、40年経て蘇る幻のバージョン

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 ジョージ・A・ロメロ監督の傑作ホラー「ゾンビ」日本公開から40年に合わせ、日本初公開復元版が11月29日に公開された。死人が蘇り生きた人間を襲うゾンビは、今や知らない人はいないホラーの金字塔だ。映画「バイオハザード」シリーズ、ドラマ「ウォーキング・デッド」など、影響を受けたさまざまな作品が製作されてきた。

 「ゾンビ」には大きく分けて3つのバージョンが存在し、音楽や上映時間が異なる。アジアと欧州で公開された「ダリオ・アルジェント監修版」(119分)は、ライブラリ音楽を使ったほかのバージョンと違い、イタリアのプログレバンド「ゴブリン」が新たに作曲した音楽で、サバイバルホラー的な面が濃厚だ。このほか、1985年に北米で公開された「米国劇場公開版」(127分)、94年に日本で世界初公開された「ディレクターズカット版」(139分)が存在する。

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 今回の「ゾンビ」日本初公開復元版は、「ダリオ・アルジェント監修版」をベースに、ゾンビを知らない日本人のため、当時の配給会社が独自に編集に手を加えた幻のバージョンを復元したものだ。

 米国でゾンビが発生して3週間後、カオスと化したテレビ局のスタジオで物語は幕を開ける。ゾンビの発生になすすべなく、堂々巡りの対話をする解説者、放送を続けるいらだつスタッフ。舞台はゾンビの巣と化したプエリトリコ人のアパートへ。住民とSWAT(警察特殊部隊)との銃撃戦の途中、ゾンビが出現。SWAT隊員とゾンビの対決となる。

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 しかし、当時の日本の配給会社は、独自の判断で設定を変えてしまった。冒頭に別の映画の映像を借用。タイプ打ちした「爆発した惑星から光線が降り注ぎ死者が蘇った」との英文を表示したのだ。さらに、残酷シーンを静止画で処理し、本来は満載だったスプラッター描写を減らしている。本編の一部もカッとし、エンドロールは黒地に音楽が流れるだけ。観客を突き放した形の幻のバージョンだった。

 40年前に作られたこの「日本初公開版」は、原盤が廃棄されてしまい、今は見られない。そこで今回は冒頭の惑星爆発映像とタイプ打ちの英文をCGで再現。当時のファンが書き留めていた日本語字幕を参考に、動画サイトにアップされたテレビ放送映像を頼りに、忠実に編集して蘇らせたという。

 消費社会の象徴である巨大ショッピングモールを舞台に、ゾンビと死闘を繰り広げる男女4人。さらに戦闘のプロであるSWAT隊員2人を配置した。モールに侵入してきた暴走族を、物欲と独占欲にかられた主人公が迎える。果てしなく消費する現代社会への警鐘だろう。ベトナム戦争に参戦したトム・サビーニが担当した特殊メークは、後のスプラッター・ホラーの指針となるクオリティーだ。

 40年前にリアルタイムで見たファン、まだ未見の最近のファン。「ゾンビ」好きなら必見のマニアックな作品だ。

(文・藤枝正稔)

「ゾンビ」日本初公開復元版(1978年、米・伊)

監督:ジョージ・A・ロメロ
出演:デビッド・エムゲ、ケン・フォリー、スコット・H・ライニガー、ゲイラン・ロス、トム・サビーニ

作品写真:(C)1978 THE MKR GROUP INC. All Rights Reserved.
posted by 映画の森 at 15:31 | Comment(0) | 米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする