2019年10月30日

「最初の晩餐」亡き父のレシピを通し 絆深める血のつながらない家族

1.jpg

 カメラマンの東麟太郎(染谷将太)は、父・日登志(永瀬正敏)の葬儀で帰郷した。母・アキコ(斉藤由貴)は、姉の美也子(戸田恵梨香)と通夜の準備する中、突然「料理は自分で作る」と言い出す。テーブルに上ったのは目玉焼き。親戚がざわつく中、麟太郎は、父親が初めて作ってくれた一品と気づいた。懐かしい味によみがえる思い出。20年前、両親が再婚した日、連れ子の兄・シュン(窪塚洋介)と5人で暮らした日々──。

 父の通夜から葬儀の一日を通して、寄り合い所帯の家族5人が、思い出の味をを振り返り、絆を深める様子が描かれる。監督、脚本、編集はサザンオールスターズのドキュメンタリー作品、短編やCM、ミュージックビデオで活躍する常盤司郎。構想7年の長編デビュー作だ。

2.jpg

 キリストが死の前日に12人の弟子に料理をふるまった「最後の晩餐」。正反対のタイトルがつけられた「最初の晩餐」に登場するのは、豪華な“通夜ぶるまい”の仕出し弁当ではなく、家族にとって思い出の味だ。夫がノートに残したレシピを頼りに、アキコが思い出の料理を作り、家族で食べて思い出を振り返る。

 通夜から葬儀への一日に過去が交差する。美也子9歳、麟太郎7歳だった20年前の夏が起点。父の再婚相手で新しい母となったアキコ、連れ子で15歳のシュンが、家に来たことで始まるギクシャクした関係。アキコは手探りで日登志の子供たちと絆を深めようと努め、山登りで日登志とシュンは距離を縮める。

3.jpg

 スライスチーズを敷いて焼いた目玉焼きなど、父の手料理は独創的だ。再婚で生まれた新しい家族が、一つ屋根の下で暮らす。食事をともにする難しさに、父の晩年の姿が重ねられる。胸が熱くなるエピソードが続く監督の演出に、見るうち引き込まれていく。

 染谷、戸田、窪塚、斉藤、永瀬という豪華キャストが演じる家族のアンサンブル。窪塚が凛としたオーラで存在感を放つ。回想シーンで子どもたちを演じた森七菜、楽駆ら若い俳優も好演。日登志の残したレシピを通して、家族のあり方が繊細に描かれる。

(文・藤枝正稔)

「最初の晩餐」(2019年、日本)

監督:常盤司郎
出演:染谷将太、戸田恵梨香、窪塚洋介、斉藤由貴、永瀬正敏

2019年11月1日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://saishonobansan.com/

作品写真:(C)2019「最初の晩餐」製作委員会

posted by 映画の森 at 10:40 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする