2019年10月09日

「細い目」多民族国家マレーシア ヤスミン・アフマド監督、壁を越える恋へ優しい眼差し

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 マレーシアのマレー系少女、オーキッド(シャリファ・アマニ)は香港のスター、金城武が大好き。ある日、屋台で香港映画の海賊版ソフトを売る中華系少年、ジェイソン(ン・チョーセン)と出会い、一瞬で恋に落ちる。民族や宗教が異なる二人の恋は、互いの家族や友人たちの間にさざなみを呼ぶ──。

 マレーシア映画「細い目」は、2009年に急逝したヤスミン・アフマド監督の長編第2作。マレーシア・アカデミー賞でグランプリ、監督賞、脚本賞、新人男優・女優賞、助演女優賞の6部門を独占し、2005年の第18回東京国際映画祭で最優秀アジア映画賞を受賞した。監督は51年の生涯に長編6作品を残した。

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 シンプルで普遍的なラブストーリーの形をとりながら、民族や宗教の違いから生まれる差別や偏見を盛り込んでいる。対立する家族が争うシェークスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」に通じる部分がある。

 中華系のジェイソンは、車いす生活の父親がいる。貧しい生活で、裏社会を牛耳るやくざの手下のような立場。屋台で海賊版ソフト売り、すねに傷を持つ少年だ。一方、オーキッドは、お手伝いさんもいる家庭で大切に育てられている。家庭環境も違いすぎる二人の恋。いくつかの障害はあるものの、双方の家族は若い二人を優しく見守っている。監督は大きな視点で物語を見つめている。

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 母方の祖母が日本人のヤスミン監督は、山田洋次監督の「男はつらいよ」が好きだったという。オーキッドの両親、お手伝さんら大人の存在が、物語に膨らみを持たせる。助演の家族が物語を盛り上げる「男はつらいよ」と通じるようだ。冒頭、オーキッドとジェイソンをつなぐスターが、金城武なのも心憎く、日本人にはうれしい設定だ。

 民族や宗教の違いを現実的に描く一方、幕引きは観客の想像力に委ねた。やや戸惑いを感じたが、抽象的な幕引きが逆に余韻を残す結果となった。監督の優しい眼差しに包まれ、懐かしい味わいがする青春恋愛映画だ。

(文・藤枝正稔)

「細い目」(2004年、マレーシア)

監督:ヤスミン・アフマド
出演:ン・チューセン、シャリファ・アマニ、ライナス・チュン、タン・メイ・リン

2019年10月11日(金)、アップリンク吉祥寺、アップリンク渋谷ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://moviola.jp/hosoime/

posted by 映画の森 at 23:54 | Comment(0) | マレーシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする