2019年09月17日

「アイネクライネナハトムジーク」伊坂幸太郎の連作小説を映画化 人が枠を越えつながる構成の妙

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 仙台駅前。大型ビジョンにボクシングの世界戦が映され、人々が湧いている。街頭アンケートに立つ会社員・佐藤(三浦春馬)の耳に、ギターの弾き語りが聞こえてきた。歌に聞き入る紗季(多部未華子)と目が合い、思わず声をかけると、快くアンケートに応えてくれた。二人の小さな出会いはその後、10年かけて奇跡を呼ぶ──。

 シンガーソングライターの斉藤和義が、作家の伊坂幸太郎に作詞を依頼して生まれた6篇からなる恋愛小説集「アイネクライネナハトムジーク」の映画化。斉藤は伊坂の同名小説が原作の映画「フィッシュストーリー」(09)、「ゴールデンスランバー」(09)に続いて主題歌と音楽を担当。脚本は「アヒルと鴨とコインロッカー」(06)など3本の伊坂作品を脚本化してきた鈴木謙一。監督は「愛がなんだ」(19)の今泉力哉。題名はドイツ語で「小さな夜の音楽」を意味する。

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 ごく普通の人々による10年の恋愛群像劇だ。過去からスタートした物語は、いつのまにか10年後になる。佐藤と紗季の話に並行して、佐藤の親友・織田(矢本悠馬)の子供たちが登場。成長して高校生となり、同級生たちとのエピソードが展開する。ひねりの効いた構成で、人と人のつながりが描かれる。背景にいたボクサーが登場人物に連なり、冒頭の弾き語りの主は、時を超えて同じ場所で歌い続ける。歌い手は傍観者でありながら、人をつなげる役割を担っている。

 6本の連作恋愛小説を、1本の映画の中で合わせ、結びつけた脚本がうまい。それぞれのエピソードに出てくる人物が、別のエピソードの人物とつながり、大きな一つの人脈となり、全体像が見えてくる。一つの話でまいた種が、別の話で実を結ぶ。細かい仕掛けが効果的だ。たとえばいじめられた少年とボクサーが公演で出会う。少年は成長して試合会場に現れ、苦戦するボクサーに、二人だけに分かるサインでエールを送る。感動を呼ぶシーンである。

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 ひとひねりした構成で、つながりから生まれる軌跡を、絶妙なバランスで描いた。今泉監督は男女のさりげない日常描写に長けている。カップル役は3度目となる三浦、多部の息も合い、取り巻く俳優たちのアンサンブルも心地よい。「伊坂映画」の中でも温かく、最もリラックスして楽しめる作品となった。

(文・藤枝正稔)

「アイネクライネナハトムジーク」(2019年、日本)

監督:今泉力哉
出演:三浦春馬、多部未華子、矢本悠馬、森絵梨佳

2019年9月20日(金)、TOHOシネマズ日比谷ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://gaga.ne.jp/EinekleineNachtmusik/

作品写真:(c)2019「アイネクライネナハトムジーク」製作委員会


posted by 映画の森 at 11:36 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする