2019年03月24日

第14回大阪アジアン映画祭 韓国映画「アワ・ボディ」主演のチェ・ヒソ、ハン・ガラム監督に聞く 30代女性の心と身体描く「女性たちよ、もっと自由に」

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 「第14回大阪アジアン映画祭2019」のコンペティション部門でスペシャル・メンションを授与された韓国映画「アワ・ボディ」は、平凡な30代女性がスポーツに出会ったことで気持ちも変わっていくさまを描く。さまざまなキャラクターの女性が登場する「女性たちの映画」について、ハン・ガラム監督と主演のチェ・ヒソに聞いた。

 主人公は30代のジャヨン。公務員試験に落ち続け、恋愛もうまくいかず、閉塞感と将来への不安をかかえて生きている。そんな中、自宅近くを颯爽と走る女性、ヒョンジュに目を奪われる。同じチームに入りランニングを始めるが、ある日、前を走っていたヒョンジュが交通事故で亡くなる。ジャヨンは憧れの女性の死を乗り越え、さらに走ることで自分の生き方を見つけていく。

 ハン監督は1985年生まれ。「アワ・ボディ」は韓国映画アカデミーの卒業作品で、昨年の釜山国際映画祭で上映された。チェはイ・ジュニク監督の「空と風と星の詩人 尹東柱の生涯」「金子文子と朴烈(パクヨル)」の鮮烈な印象が記憶に新しい。大阪アジアン映画祭は昨年に続き二度目の参加だ。二人はどのように作品と向き合ったのだろうか。

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 ――30代女性の物語を作った理由は。

 ハン:身体の変化を通して、生き方の変化を表現したかった。身体は自分が努力しただけ成果を得られる。物語は自分が20代後半から30代前半にかけて体験し、感じたことをモチーフにしている。自分は映画を仕事にすることを家族に反対され、放送局を志望して試験に落ちたりした。親たちは「試験に受かってほしい、いいところに就職してほしい」と願うものだが、同じ世代の女性たちに、もっと好きなように生きてもいい、楽に生きてほしいというメッセージを込めた。

 ――最近の韓国のインディペンデント映画は、就職も恋愛もうまくいかない若者の鬱屈をテーマにしたものが非常に多い。

 ハン:(学歴社会、就職難など)現実が厳しいので映画もそうなるのだろう。「アワ・ボディ」も、自分は社会的な問題意識があって作ったつもりはなかったが、社会的背景との関係をよく聞かれる。

 ――シナリオを読んだ印象は。

 チェ:一気に読んで、ぜひ演じたいと思った。自分も将来についていろいろと考えてきたので、受動的に生きてきたジャヨンがランニングを始めて変化するプロセスが自然に理解できた。平凡に見える女性だが、ランニングを始めること自体勇気が必要。普通は始めようと思ってもできない。何かを始めて集中する「力強さがある」性格が気に入った。簡単にアプローチできる役ではないが、だからこそ挑戦したかった。

 ――30代は女性にとってどういう年代だと思うか。

 ハン:結婚したりキャリアを積んだりする年代だが、新しいことができると思う。

 チェ:日本も同様だが、女性も男性も就職している、結婚している、貯金があるというように、落ち着いているべきだという考えがある。つまり、会社員、母親といったラベルが貼られる。この映画では、それらを突破するものとしてランニングが登場する。

 ――走るシーンが多いが、撮影中のエピソードは。

 ハン:俳優もスタッフも苦労したと思う。一緒に走った助監督は7キロもやせた(笑)。自分は撮影中は座っているので気にしていなかったが、後から申し訳ない気持ちになった。

 チェ:長距離を走るのは好きではなく、この映画で初めて走った。途中までは苦しいが、それが過ぎれば楽になるという長距離走の“味”が分かった気がする。夜に走るシーンを取るため、撮影が日暮れから夜明けまでに及んだのが大変だった。

 ――主なキャラクターがすべて女性だが、最初から意図したのか。

 ハン:意図したのではないが、主人公の周囲の重要なキャラクターを考えていくとき母親や姉妹、女友達はとても重要な関係なので、自然にそうなった。

 ――次はどんな映画に取り組みたいか。

 ハン:以前から考えていたストーリーを発展させて新しいシナリオを執筆中。モチーフは「アワ・ボディ」とはまったく違う。毎回違うものを作っていきたいと思っている。

 チェ: チャレンジできる役にひかれる。「金子文子と朴烈」もそうだが、主体的な女性に魅力を感じるので、これからも違うタイプの女性のキャラクターに挑戦してみたい。

(文・芳賀恵)

写真1:ハン・ガラム監督(左)と主演のチェ・ヒソ(右)=芳賀撮影
写真2:作品写真=映画祭事務局提供

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2019年03月20日

「ブラック・クランズマン」黒人刑事がKKKに潜入 スパイク・リー、差別主義者を痛快に糾弾

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 1979年、米西部コロラド州コロラドスプリングス。町で初めて黒人の刑事、ロン・ストールワース(ジョン・デビッド・ワシントン)が誕生した。しかし、書類管理担当の記録室に配属され、差別的な刑事に嫌がらせを受け、退屈な任務にうんざりしたロンは、署長にダメ元で「潜入捜査官になりたい」と訴え、晴れて希望がかなえられる──。

 実在の元刑事ロン・ストールワースの回想録を、「マルコムX」(92)のスパイク・リーが脚本化し、監督した。「マルコムX」主演のデンゼル・ワシントンの息子、ジョン・デビッドが主役を務める。第71回カンヌ国際映画祭でグランプリ、第91回米アカデミー賞で脚色賞を受賞した。

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 作品のコピーは「黒人刑事が白人至上主義団体『KKK(クー・クラックス・クラン)』に潜入捜査」だが、実際に潜入するのは、ロンの身代わりとなる白人刑事フィリップ(アダム・ドライバー)だ。黒人差別の歴史、KKKの内情や活動、時代背景をスリリングに描きつつ、最終的にはKKKを笑い飛ばそうとする。監督は今も根強く残る白人至上主義について、挑発しながら問題提起する。

 三角頭巾の白装束が象徴的なKKKは、アラン・パーカー監督の「ミシシッピー・バーニング」(88)などにも登場したが、内部を詳細に描いた映画は初めてではないか。トランプ大統領の誕生後、米国では17年、南部バージニア州で白人至上主義者と反対派が衝突。死者が出る事態になり、トランプ氏が「双方に責任がある」と発言して波紋を広げた。KKKは今もなお活動を続けており、米国の対立と分断は拡大している。

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 時代背景、言葉のニュアンスなど、日本人に分かりづらい点はあるものの、黒人刑事がKKKに潜入する着眼点に引き付けられる。黒人と白人が手を組んで任務を遂行する姿は、米国の掲げる理想であり、作品の面白さにつながっていく。リー監督はKKKの手法を痛快に糾弾する。往年の勢いを失いつつあったリー監督が、再び輝きを取り戻した。現代社会の問題点を鋭く突く力作だ。

(文・藤枝正稔)

「ブラック・クランズマン」(2018年、米)

監督:スパイク・リー
出演:ジョン・デビッド・ワシントン、アダム・ドライバー、
ローラ・ハリアーパ、トファー・グレイス、ヤスペル・ペーコネン

2019年3月22日(金)、TOHO シネマズ シャンテほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://bkm-movie.jp/

作品写真:(C)2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.

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2019年03月17日

「探偵なふたり リターンズ」推理オタクとベテラン刑事、難事件に挑戦 人気シリーズ第2弾

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 英の名探偵シャーロックホームズに憧れ、優れた推理力を持ちながら、しがない漫画喫茶の店主で恐妻家のカン・デマン(クォン・サンウ)が、ベテラン刑事ノ・テス(ソン・ドンイル)と難事件を解決していく。

 2016年に公開された「探偵な二人」のシリーズ第2弾。テスはかつて「広域捜査隊のレジェンド」と呼ばれたベテランだが、左遷されてヒラ刑事に降格。性格は水と油の推理オタク、デマンとコンビを組み、探偵事務所を開く。

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 しかし、事務所は順風満帆とはいかず、開店休業状態。恐妻家のため、仕事を辞めて探偵になったと妻に打ち明けられず、焦りは募るばかり。そこへ最初の依頼主がやってくる。巨額の報酬を目当てに引き受けたものの、関係者が次々と不可解な死を遂げる難事件に。新たに元サイバー捜査隊のヨチ(イ・グァンス)が加わり、3人は持ち前の能力を発揮して事件の核心へ迫る。

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 前作に引き続き恐妻家ふたりのダメ夫ぶりに加え、バラエティーでも活躍するイ・グァンスも加わり、面白さもパワーアップした。個性豊かな3人の軽妙なやりとり、思わぬ展開が絶妙に絡み合う。凄惨な事件を扱いながら、個性あふれるキャラクターとユーモアで見応えのある娯楽作品となった。

(文・岩渕弘美)

「探偵なふたり リターンズ」(2018年、韓国)

監督:イ・オンヒ
出演:クォン・サンウ、ソン・ドンイル、イ・グァンス

2019年3月16日(土)、シネマート新宿ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://tantei-movie2.com/

作品写真:(C)2018 CJ E&M CORPORATION, CREE PICTURES, ALL RIGHTS RESERVED

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2019年03月13日

第29回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭を振り返る 開幕作に波紋、斎藤工がサプライズ登場 最後の冬開催

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 北海道夕張市で開かれていた「第29回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」は10日、森田和樹監督の「されど青春の端くれ」をオフシアター・コンペティション部門のグランプリに選んで幕を閉じた。開幕作のキム・ギドク監督作品が韓国の「#MeToo」運動の余波で波紋を呼んだほか、予算削減でスクリーン数が減りメジャー作品も減るなど、開催環境は決して良くなかった。それでもファンタ映画ファンの思いに支えられ、約1万2000人を動員した。雪に囲まれた幻想的な映画祭は今回で冬開催を終了。来年からは夏の映画祭に生まれ変わる。


男子高校生の日常描く

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 オフシアター・コンペ部門は、白石和彌監督を審査委員長とした4人の審査員が6作品の中から受賞作を決定した。グランプリの「されど青春の端くれ」は男子高校生3人の青春と性を描くもの。荒削りだが画面の構図や映像表現が個性的な作品だ。白石委員長は「マイナス面も多いが、何かを爆発させたい思いがストレートに伝わった」と選定理由を説明した。

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 同作が初長編の森田監督は鳥取県出身、東京都在住の30歳。2年前に病気で2カ月入院し、一度は映画をやめようと思ったことも。「映画を作りたいという強い気持ちがあった。これからもっと頑張りたい」と喜びを語った。次回作は青春スプラッター映画を構想中という。

 北海道知事賞は太田慶監督の「桃源郷的娘」。老浮浪者が若い娘に恋をしたことで始まる「艶笑コメディ」。太田監督は日活の事務部門で働きながら映像制作を学んだ遅咲きの監督だ。審査員特別賞はムン・シング監督(韓国)の「赤い原罪」が受賞した。神の神聖性を否定し宗教界に刃を突きつける衝撃的な内容だが、シナリオ準備と理論武装のために10年間神学を学び牧師となったというビハインドストーリーも観客を驚かせた。

斎藤工がサプライズ登場
 斎藤工が9日、都内で主演作「家族のレシピ」の初日舞台あいさつを終えて空路夕張入りし、映画祭恒例の屋外イベント「ストーブパーティー」に参加。4月公開の「麻雀放浪記2020」でタッグを組んだ白石和彌監督、脚本家のはしもとこうじ氏とのトークショーに登壇し、氷点下の夕張に熱気を呼んだ。

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 自身の監督初長編「blank13」を2017年のゆうばりで初上映するなど「ゆうばり愛」が強い斎藤。今回の映画祭では「ふだんファンタ映画祭に来ない親子連れなどが見られる映画を上映したかった」と、子ども向けのプログラムを選定。自身がプロデュースしたアニメーション作品や、この日のために企画・演出・出演した「スーパーベジタブルブギ 北海道・北の国から編」を上映した。

 映画館のない地域に映画を届ける「シネマバード」(移動映画館)の活動の一環として、年内に北海道内で開催する計画も明かし、地元ファンを喜ばせた。

キム・ギドク作品が物議、#MeToo運動で
 2月6日のラインアップ記者会見のあと、ゆうばり映画祭は「#MeToo運動」の渦中に投げ出された。開幕作にキム・ギドク監督の「人間、空間、時間、そして人間」(仮題)を選んだためだ。

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 キム監督は「韓国の鬼才」と呼ばれ、海外での評判は高い。しかし映画の撮影中に暴行やセクシュアル・ハラスメント(性的嫌がらせ)があったとして17年に女優に告発され、罰金500万ウォン(約50万円)の略式命令を受けた。その後も正式な謝罪や反省がないとして、韓国の女性団体などが強く非難している。

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 家父長制の価値観が残る韓国の「#MeToo運動」は日本では想像もできないほど強力だ。抑圧されてきた女性たちの怒りが噴出し、政治家や芸能人、芸術家など著名人が次々に告発されている。この状況で同監督の作品を上映することは韓国では考えられないのだ。

 ゆうばり映画祭には韓国の女性団体「民友会」が抗議声明を出し、上映の取りやめを求めた。映画祭側は同会への返答文で監督を招待しないことを伝え、差別や犯罪を助長する作品は上映しないとの立場を表明。さらに「本作品は問題の映画とは別個のものであり、個人の行為と多くの映画人の力が結集された作品とは別の問題」と主張した。

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 この映画の上映に、参加者からも疑問の声が上がったのは事実だ。白石和彌監督はオープニングセレモニーの審査委員長あいさつで「MeToo運動の流れで大きな罪を犯した監督。なぜそれを上映するのかという公式のコメントが必要だった」と苦言を呈した。これに対し塩田時敏プログラムディレクターは「問題が起きると作品を公開しない、お蔵入りにするということは、そろそろやめたほうがいい」と私見を述べたあと「ゆうばり映画祭は罪を憎む。しかし映画は憎まない」として、映画を見た上で自ら考え、議論してほしいと訴えた。

 「罪」と「作品」は果たして別個に考えるべきなのか、「表現の自由」は「被害者の権利」に優先するのか――。ゆうばり映画祭の選択は一作品の上映という問題を超えて多くの問いを残した。

(文・芳賀恵)

【受賞一覧】
◇ファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門
グランプリ 「されど青春の端くれ」森田和樹監督
北海道知事賞「桃源郷的娘」太田慶監督
審査員特別賞「赤い原罪」ムン・シング監督(韓国)
シネガーアワード(批評家賞)「されど青春の端くれ」森田和樹監督

◇インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門
グランプリ「極東ゲバゲバ風雲録」中島悠作監督
優秀芸術賞「ムーンドロップス」ヨーラム・エヴァー・ハダニ監督(イスラエル)
「5つ目の記憶」小野寺しん監督
「M&A」宮城伸子監督

◇ファンタランド大賞作品賞(観客賞)「いつくしみふかき」大山晃一郎監督


1:グランプリの森田和樹監督(右)と白石和彌審査委員長=芳賀撮影
2:グランプリ「されど青春の端くれ」=映画祭事務局提供
3:クロージングの集合写真=芳賀撮影
4:トークイベントに参加した(右から)斎藤工、脚本家はしもとこうじ氏、白石和彌監督=映画祭事務局提供
5:「人間、空間、時間、そして人間」(仮題)=映画祭事務局提供
6:塩田時敏プログラムディレクター(オープニングセレモニー)=芳賀撮影
7:冬開催は今年で最後=芳賀撮影


posted by 映画の森 at 15:25 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月05日

「ウトヤ島、7月22日」史上最悪のノルウェー無差別テロ、ワンカット撮影でリアルに

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 2011年7月22日午後5時過ぎ、ノルウェーのウトヤ島。首都オスロから北西40キロに位置する島で、毎年恒例の労働党青年部のサマーキャンプが催されていた。大勢の若者たちが心から楽しんでいたが、「オスロの政府庁舎で爆破事件が発生した」との知らせが届き、かすかな動揺が広がる。少女カヤ(アンドレア・バーンツェン)は、電話口で不安げな母親に「ここはウトヤ島よ。世界一安全だから心配ないわ」と言い聞かせた──。

 2011年、ウトヤ島で実際に発生した無差別銃乱射事件が題材。事件発生から終息まで費やした時間と同じ、72分間をワンカットで描く。監督は歴史ドラマ「ヒトラーに屈しなかった国王」(16)のエリック・ポッペ。

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 事件発生の2時間ほど前、オスロ政府庁舎前の爆破テロが起きた。テロの映像が流れた後、カメラはウトヤ島へ移り物語が始まる。妹エミリアとキャンプに参加したカヤは、オスロの事件に不安を感じながら、島は安全と思い、仲間と夕食前のひと時を過ごしていた。しかし、平和な時間は一発の銃声で崩れ、島の若者たちはパニックに陥り、生き延びるためのサバイバルが始まる。

 カメラはカヤに張り付き、一緒に走り、隠れるため地面に這いつくばる。カヤの周辺をとらえた映像と、現場に逃げ込んできた人の証言だけが情報源。犯人の姿も遠くに映っているだけで、いったい何が起きているのか分からない。

 遠くにひたすら銃声が鳴り響く中、カヤは妹を探すために仲間と離れ、危険を顧みず一人で島を探し回る。道中は悪夢としか言いようがない。犯人に撃たれて瀕死の少女を助けようと声をかけるが、目の前で絶命してしまう。ショックを受けるカヤの背後に、容赦ない銃声が聞こえてくる。

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 オスロの政府庁舎爆破では8人、島の銃乱射では69人、計77人が犠牲になった。単独犯による史上最悪のテロだが、日本人にはよく知られていない。説明的な描写が一切ないため、事件を知らない観客には理解が難しいかもしれない。

 しかし、事件とまったく同じ72分間を、編集しないワンカットで撮影し、音楽も使わず、いわゆる映画的な手法を排除することで、被害者と同じ言い知れぬ恐怖、不安、絶望感を味わわせる。カヤは命を救えず罪悪感にさいなまれるが、運命の不条理による残酷な結末が待っている。テロの悪夢、恐怖をリアルに描いた衝撃作だ。

(文・藤枝正稔)

「ウトヤ島、7月22日」(2018年、ノルウェー)

監督:エリック・ポッペ
出演:アンドレア・バーンツェン、エリ・リアノン・ミュラー・オズボーン、ジェニ・スベネビク、アレクサンデル・ホルメン、インゲボルグ・エネス

2019年3月8日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://utoya-0722.com/

作品写真: (C) 2018 Paradox

posted by 映画の森 at 23:14 | Comment(0) | ノルウェー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする