2018年11月10日

「生きてるだけで、愛。」痛々しくネガティブな若者たち ヒリヒリするまで掘り下げて

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 うつによる過眠症で引きこもりの寧子(趣里)と、出版社でゴシップ記事を書き続ける津奈木(菅田将暉)。二人が同棲する部屋に、津奈木の元彼女・安堂(仲里依紗)が現れ、関係が変化していく──。

 劇作家・小説家の本谷有希子の同名小説の映画化。CMやMV演出、短編オムニバス映画「BUNGO ささやかな欲望」(12)の関根光才が監督・脚本も手掛けた長編デビュー作だ。

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 コンパで知り合い、寧子が津奈木のマンションに転がり込んで3年。津奈木は朝早く家を出て、夜遅く帰る日々。寧子はバイトも続かず、家事もせず、姉とメールをするぐらいで引きこもっている。

 寧子と津奈木をつなぐのは、帰宅途中に買ったコンビニ弁当を食べること。優柔不断の津奈木は別々の弁当を買い、寧子に食べる弁当を決めてもらう。恋人らしくなく、同居人のような関係だ。

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 そこへ安堂が割って入る。津奈木に未練たっぷりの安堂は、寧子になじみのカフェでバイトさせて引き離そうとする。寧子はなかば強制的に社会復帰させられ、津奈木のストレスも編集長からの圧力でピークに達する。

 甘くコーティングされた最近の日本映画と違い、痛々しい二人のネガティブな日常がつづられる。うつで精神状態が不安定な難役に趣里が挑む一方、押しの演技が得意な菅田将暉が、趣里に振り回される引きの演技。ストーカーばりの粘着気質ながらユーモラスな仲里依紗がいい。今が旬の若い役者たちが絶妙なさじ加減の好演だ。

 原作は寧子一人の視点で書かれているが、寧子と津奈木の視点に変更され、津奈木のパートを膨らませて深みが出た。現代の若者の不器用な生き方を、ヒリヒリするほど徹底的に掘り下げて、観客の心をえぐっていく。

(文・藤枝正稔)

「生きてるだけで、愛。」(2018年、日本)

監督:関根光才
出演:趣里、菅田将暉、田中哲司、西田尚美、松重豊

2018年11月9日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://ikiai.jp/

作品写真:(C)2018「生きてるだけで、愛。」製作委員会

posted by 映画の森 at 20:55 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする