2018年10月15日

釜山国際映画祭、政治介入めぐる対立解消 にぎわい戻り動員増

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 韓国の釜山市で開かれていた「第23回釜山国際映画祭2018」が10月13日に閉幕した。これまでの数年間、政権の映画祭への介入に反発して参加を拒否していた映画団体もすべてボイコットを撤回し、映画会社の主催するパーティーも復活。緊張が消えて賑わいを取り戻した10日間となった。動員数は約19万5000人と昨年を2000人ほど上回った。

開幕作はイ・ナヨン6年ぶり復帰作 脱北女性の物語
 開幕作は脱北した女性の過酷な半生を描いた韓国の「ビューティフルデイズ」(ユン・ジェホ監督)。主人公は中国で朝鮮族の貧しい男性に売られ子どもを生むが、家族を置いて韓国に渡る。14年後、成長した息子が彼女のもとを訪ねてくるが、母は酒場で働き、やくざのような男と暮らしていた。失望して中国に帰った息子は、母の残したノートを読んでその悲劇的な過去を知る、というストーリーだ。

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 6年ぶりのスクリーン復帰となるイ・ナヨンが脱北女性を熱演している。母親に複雑な感情を抱く息子役の新鋭チャン・ドンユン、売られてきた妻に深い愛情を注ぐ朝鮮族男性役のオ・グァンノクの演技も見ごたえ十分。監督が記者会見で「偏見を排除したかった」と語った通り、登場人物はみな弱さを持った人間で、悪徳ブローカーや母の韓国の情夫も絶対的な悪人として描かれてはいない。

 ユン監督は韓国とフランスで活動する映像作家。「ビューティフルデイズ」が長編劇映画のデビュー作となるが、製作準備の間にドキュメンタリー「マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白」(16)を発表している。「マダム・ベー」の主人公は出稼ぎのつもりで来た中国で農村の男性に売られ、脱北ブローカーとなり、韓国に渡る。脱北女性と家族の綿密な取材をもとにしたこのドキュメンタリーは、日本でも反響を呼んだ。

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 過酷な運命を受け入れてたくましく生きる女性と家族というテーマは劇映画の「ビューティフルデイズ」にも引き継がれている。苦難に満ちた人生にも、いつか「美しい日々」が訪れるという期待を込めたエンディングにほっとさせられる。

台風の影響も
 釜山映画祭では、週末に海雲台ビーチで俳優や監督のトークイベントが行われ、映画ファンが詰めかけるのが恒例。だが今年は台風25号の直撃が予想されたため、急きょメーン会場の「映画の殿堂」に場所が移された。

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 5日は「デッドエンドの思い出」のチェ・スヨン(少女時代)と田中俊介、「The Island」に出演したEXOのレンなどが登壇し観客の声援に応えた。朝から激しい暴風雨に見舞われた6日は「寝ても覚めても」の東出昌大らのイベントが中止になったものの、公開中の「ミス・ペク」のハン・ジミンとイ・ヒジュン、「暗数殺人」のキム・ユンソクとチュ・ジフンが登場。イ・チャンドン監督の「バーニング」出演のユ・アインとチョン・ジョンソのトークイベントも行われた。

中国の「雪暴」、韓国の「呼吸」が受賞
 新人監督の作品を対象にしたコンペティション部門の「ニューカレンツ賞」には、中国の「雪暴」(崔斯韋監督)と韓国の「呼吸」(クォン・マンギ監督)が選ばれた。

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 「雪暴」は台湾の張震(チャン・チェン)を主演に迎え、中国と北朝鮮の国境にある長白山(白頭山)でオールロケをした話題作。雪深い山中で警察と悪党が繰り広げるアクションが見ものだ。「呼吸」は刑務所から出所して清掃会社に入った青年が、過去に自分を誘拐して身代金を奪った女性と偶然出会う物語。「誘拐事件そのものではなく、その後の関係者の心情を描きたかった」というクォン監督は、自分の人生を台無しにした相手を許せるかと観客に問いかける。

 アジアの映画人の育成を目的の一つに掲げる釜山国際映画祭。賞を逃した作品もいずれも底力を感じさせるもので、監督たちの今後の活躍に期待がかかる。

(文・芳賀恵、写真・岩渕弘美)

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写真
1:「ビューティフルデイズ」記者会見に出席したイ・ナヨン
2:「ビューティフルデイズ」記者会見後のフォトセッション =いずれも10月4日
3:「ビューティフルデイズ」作品写真=映画祭事務局提供
4:「デッドエンドの思い出」の出演者
5:「ミスペク」のイ・ヒジュン
6:「ミスペク」のハン・ジミン
7:「バーニング」のユ・アイン
8:「雪暴」作品写真=映画祭事務局提供
9:「呼吸」作品写真=映画祭事務局提供
10:「ビューティフルデイズ」トーク
11:「ミスペク」の出演者
12:「八個女人一台戲」の(左から)サミー・チェン、スタンリー・クワン監督、ジジ・リョン
13:「比悲傷更悲傷的故事」の劉以豪(ジャスパー・リウ)
14:「比悲傷更悲傷的故事」の出演者
15:「祈る男」出演者ら
16:「辺山(ピョンサン)」の出演者ら
17:「暗数殺人」のチュ・ジフン
18:「暗数殺人」の出演者ら
19:「バーニング」のトークイベント

posted by 映画の森 at 17:50 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする