2018年09月11日

「500ページの夢の束」ダコタ・ファニング演じるオタク女子、バスで数百キロを行く 「スター・トレック」愛あふれる異色ドラマ

1.jpg


 「スター・トレック」が大好きで、関連知識は誰にも負けないウェンディ(ダコタ・ファニング)。趣味は自分で「スター・トレック」の脚本を書くことだった。自閉症の彼女は唯一の肉親の姉・オードリー(アリス・イブ)と離れて暮らし、ソーシャルワーカーのスコッティ(トニ・コレット)の協力でアルバイトを始めた。ある日、「スター・トレック」脚本コンテストがあると知り、ウェンディは渾身の1本を書き上げる。しかし、郵送では締め切りに間に合わず、愛犬ピートと一緒に、ハリウッドまで数百キロの旅に出る──。

 家と職場を往復するだけの「スター・トレック」オタクの女子が、一世一代の長距離移動で目的を達成する物語。監督は障害者の性を描いた「セッションズ」(12)のベン・リューイン。「I am Sam アイ・アム・サム」(01)、「宇宙戦争」(05)など子役でキャリアをスタートさせたダコタ・ファニング。幼い頃が絶頂期で、最近は妹のエル・ファニングの活躍に押され気味。今回は個性的で強烈なキャラクターとして我々の前に帰ってきた。

2.jpg

 ウェンディは人前では非常に口数が少ないが、脳内ではずっとしゃべり続けている。その様子は主人公のモノローグで表現される。心を許した相手のみと視線を合わせ、他人からは目をそらせる。

 単調な生活の中で、唯一の楽しみはテレビで「スター・トレック」を見て、自分なりの脚本を書くこと。コンテストを知って早速執筆にとりかかり、無事完成するが、郵送では間に合わない。家があるオークランドから製作会社があるロサンゼルスまで、3日かけてバスで届けようとする。勝手に付いてきた愛犬ピートとの道中は、予想通りトラブル続き。多くの人を巻き込んでいく。

3.jpg

 米国では国民的人気のSFドラマ「スター・トレック」がモチーフなので、「スター・トレック」の設定や登場人物、専門用語を知らないと楽しみが半減するかもしれない。一方、前作「セッションズ」で障害者の性を描いたリューイン監督は、社会的弱者である自閉症者の厳しい現実もきちんと描いている。

 脚本を届けるウェンディは、困難なミッションに立ち向かう「スター・トレック」のクルーのようだ。ウェンディが唯一しっかり視線を合わせる意外な相手、姉オードリーを「スター・トレック イントゥ・ダークネス」(09)に出演したイブが演じるなど、どこまでも「スター・トレック」愛があふれ、異色なハートフルなドラマとなった。

(文・藤枝正稔)

「500ページの夢の束」(2017年、米国)

監督:ベン・リューイン
出演:ダコタ・ファニング、トニ・コレット、アリス・イブ

2018年9月7日(金)、新宿ピカデリーほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://500page-yume.com/

作品写真:(C)2016 PSB Film LLC

タグ:レビュー
posted by 映画の森 at 17:40 | Comment(0) | 米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする