2018年07月06日

「君が君で君だ」男3人、屈折した10年愛 饒舌でオフビートな異色作

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 大好きな女の子の「憧れの男」になりきり、名前すら捨てた男3人。10年間、彼女の後をつけてこっそり写真を撮る。彼女と同じ時間に同じ食べ物を食べる。向かいのアパートの一室に身を潜め、彼女に知られずに暮らす3人。しかしある日、歯車は突然狂い出す──。

 テレビドラマ「バイプレイヤーズ」シリーズ、映画「アズミ・ハルコは行方不明」(16)、「アイスと雨音」(18)の松井大悟が監督・原作・脚本を担当した恋愛映画だ。池松壮亮、満島真之介、大倉孝二、キム・コッピらが出演。

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 10年前。不良に絡まれた女子を救うため、間に割って入った青年2人。逆に反撃されたところを、割れた酒瓶を片手に仲裁に入った女子に助けられる。直前まで2人がいたカラオケ店員、韓国人女性のソン(キム・コッピ)だった。失恋したばかりの2人は、ソンに一目ぼれする。

 10年後。2人の青年ともう1人の男は、テレビもパソコンもない安アパートで暮らしていた。窓は段ボールでふさがれ、壁いちめんに盗撮したソンの写真。3人はソンのマンションの向かいに住んでいた。それぞれソンが好きな「尾崎豊」(池松壮亮)、「ブラッド・ピット」(満島真之介)、「坂本龍馬」(大倉孝二)に変えて。3人はソンを「姫」と呼び、アパートの部屋を「姫を守る国」と称し、24時間盗聴しながら双眼鏡で監視している。

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 3人はソンに触れることも、話しかけることもできない。尾行して盗撮し、買った物を調べ、ソンの捨てたごみをあさる。密かに盗聴した音声に合わせ、同じ物を飲み食いし、歌を歌い、楽しく過ごす。しかし、ソンのもとに借金取りが現れ、事態は急転する。

 一方的に片思いを募らせる男3人。松居監督が脚本を書いた「チェリーボーイズ」(18)の童貞3人組に通じる屈折ぶりだ。日本のダメ男に困惑しつつ、恋人への思いを貫くヒロイン役のキム・コッピ。3人の一歩ずれた一途な思い。脇を固める向井理のチンピラ演技、YOUの冷めた視線。

 最近はやりの漫画が原作で口当たりのいい恋愛映画と異なり、独創的な青春が展開する。ここまで一方的で屈折した恋愛感情は、ストーカーまがいで他の作品にはない。思いを寄せられるソンには迷惑な話だが、吹っ切れたかっこ悪い男の生き様を、とことん掘り下げていく。饒舌でオフビート全開の異色作だ。

(文・藤枝正稔)

「君が君で君だ」(2018年、日本)

監督:松居大悟
出演:池松壮亮、キム・コッピ、満島真之介、大倉孝二、高杉真宙

2018年7月7日(土)、新宿バルト9ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://kimikimikimi.jp/

作品写真:(C)2018「君が君で君だ」製作委員会
posted by 映画の森 at 08:58 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする