2018年06月28日

「ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷」ヘレン・ミレン、ホラー初出演 実在の幽霊屋敷と銃の因縁

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 米西海岸サンフランシスコから885キロ。人里離れた広大な土地に世界で最も呪われた巨大な屋敷がある。建設者は“西部を征服した”ウィチェスター銃を作った一族の一人で、莫大な財産を相続したサラ・ウィンチェスター(ヘレン・ミレン)だ。屋敷は8年間、365日、24時間、絶え間なく増築され、7階建てで部屋は500。どこにも行きつかない階段や迷路のようなホール、13にまつわる装飾など、奇怪な構造になっていた──。

 米国でテレビ特番が組まれるほど有名な実在の幽霊屋敷「ウィンチェスターハウス」。出演は「クイーン」(06)のエリザベス女王役で米アカデミー賞主演女優賞を受賞したヘレン・ミレン、「ターミネーター 新起動 ジェニシス」(15)のジェイソン・クラークら。「ジクソウ ソウ・レガシー」(17)のスピエリッグ兄弟がメガホンをとった。

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 「ウィンチェスター銃のせいで命を落とした人の霊を閉じ込める」と、取りつかれたように屋敷を増築するサラ。ウィンチェスター社の経営陣は、サラを精神鑑定して経営権を奪うため、精神科医のエリック(ジェイソン・クラーク)を屋敷に送る。しかし、エリックの目にサラの異常は感じられず、逆に屋敷で不可解な恐怖現象を体験する。

 時代設定は1906年。20世紀初頭の米西海岸を舞台に、監督はクラシカルなゴシック・ホラー作りを目指す。外部から来たエリックの目を通し、屋敷で起きる不可解な出来事を積み重ね、ウィンチェスターハウスの素顔を明かしていく。中盤までは抑制されたアナログなショック演出を小出しに。後半は屋敷を使った大胆な仕掛け、最新のデジタル技術でたたみかける。

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 かなりゆったりとドラマが進み、サラを演じるミレンの演技が物語に説得力を持たせる。ホラー初出演のミレンは、黒いドレス姿で役に命を吹き込んだ。クラークも地味ながら堅実に演じ、物語を引き締めている。実際の屋敷を使った映像、凝りに凝ったセット。ウィンチェスター銃にまつわる因果応報的な解釈が要になる。全体に踏み込みが足りない感もあるが、目ざといホラー映画ファンにはおすすめだ。

(文・藤枝正稔)

「ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷」(2018年、米・豪)

監督:マイケル・スピエリッグ、ピーター・スピエリッグ
出演:ヘレン・ミレン、ジェイソン・クラーク、サラ・スヌーク、フィン・シクルーナ=オープレイ、エイモン・ファーレン

2018年6月29日(金)、TOHO シネマズシャンテほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://winchesterhouse.jp/

作品写真:(C)2018 Winchester Film Holdings Pty Ltd, Eclipse Pictures, Inc., Screen Australia and Screen Queensland Pty Ltd. All Rights Reserved.

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2018年06月21日

「天命の城」ファン・ドンヒョク監督に聞く 清に攻められ苦悩する朝鮮「韓国の現状によく似ている」

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 韓国映画「天命の城」が2018年6月22日公開される。17世紀、清が朝鮮半島に攻め入った「丙子の役」を題材に、朝鮮の王と家臣の苦悩を描く。「トガニ 幼き瞳の告発」(11)、「怪しい彼女」(14)と一作ごとに異なる作風を打ち出すファン・ドンヒョク監督。「今の韓国によく似た状況だった。しっかり時代考証し、当時の様子を忠実に再現した」と語った。

 1636年12月。清が12万の大軍で朝鮮半島に攻め込む「丙子の役」が勃発した。李氏朝鮮の王・仁祖(パク・ヘイル)は南漢山城(現在のソウル南東部)に籠城するが、極寒の中で包囲され、窮地に陥る。物資調達もままならず、民と兵の苦しみは募り、朝廷内の意見は二分。和平交渉を求める大臣(イ・ビョンホン)と、徹底抗戦を主張する大臣(キム・ユンソク)の間で、王の苦悩は深まる。

 韓国でベストセラーとなったキム・フンの小説を映画化。イ・ビョンホン、キム・ユンソク、パク・ヘイルら実力派俳優の演技合戦も見ごたえある作品だ。

 ファン監督との主なやり取りは次の通り。

 ──当時の状況は、韓国の現状によく似ているということです。具体的にどんな点が似ていますか。

 「丙子の役」の当時 朝鮮は明の「家臣」でした。さらに清という新勢力が現れ、明との対立が激化したため、朝鮮は明を重視し、清を野蛮な国として排除しようとしました。間に立たされて大変な立場だったのです。

 一方、現代では朝鮮戦争後、韓国は米国と同盟関係を維持していますが、中国が大国に成長して力を付けました。米国からは高高度防衛ミサイル(THAAD)ミサイルを配備しろと圧力をかけられ、中国は配備を受けるなら経済的な報復をするといってきます。当時と今はよく似ているでしょう。

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イ・ビョンホンは生まれながらの俳優
 ──主演俳優3人、イ・ビョンホン、キム・ユンソク、パク・ヘイルについて、それぞれの魅力はどんな点にありますか。

 イ・ビョンホンは生まれながらの俳優。天賦の才があり、頭脳も明晰です。両方持ち合わせている人はあまりいません。彼は持っているものが多く、どう引き出せばいいか、自分なりに頭で判断し、しっかり計算できます。まさにプロの俳優で、隣で見ていてもたびたび驚かされました。どんな役にも合わせて変身できる人ですね。

 キム・ユンソクは本能的な俳優です。内に秘めたエネルギーがものすごい。じーっと何かを待っている野獣、虎のような印象です。いつエネルギーがあふれ出すか分からないのですが、あふれた時は大変な力を発揮します。

 パク・ヘイルはミステリアス。顔立ちや眼差し、声。かよわい少年のようで、優しい印象もあるけれど、見方によっては悪の部分も持っている。多様な側面があり、一つの姿に限定できない俳優です。

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 ──イ・ビョンホン、キム・ユンソクの二人が掛け合うクライマックスは見ごたえ十分でした。

 二人は演出の指示必要としない俳優なので、大きな介入はしませんでした。直前に論争するシーンをたくさん撮っており、二人は役になりきり、完ぺきに解釈してくれました。私はできるだけ何も言わず、自由に、気楽に演じてもらえるようにしました。カメラを数台用意し、ワンテイクで切らずに流れを大事に撮りました。

寒さを見せる必要があった
 ──極寒の時期のロケでした。苦労はありましたか。

 寒さを見せる必要があり、常に寒くなければなりませんでした。雪、つらら、氷、白い息。視覚的なものが必要だったので、寒い方がありがたかったんです。逆に寒くならず困ったことの方が多かった。雪のシーンで雨が降ったり、川を渡るシーンで氷が薄かったり。撮ろうとしたら氷が割れる音がして、消防隊に「落ちたら遺体も探せない。流されて春になってやっと見つかることになりますよ」と言われました。氷が厚く張るまで、はらはらしながら1カ月待ちました。韓国も温暖化のせいで、気温の変化が激しくなりました。急に温かくなったり、寒くなったりするんです。

 ──原作小説を映像として再現するにあたり、苦労したことはありましたか。

 世界遺産(に指定された史跡・南漢山城)で撮影できたことが助けになりました。当時着ていた服の色、道具、武器など、しっかり時代考証して作ることにこだわりました。当時の服の色も、これまでの時代劇のようにカラフルではなく、資料に忠実に再現しました。

 特に「鳥銃」舞台が登場する作品は初めてだと思います。(16世紀に豊臣秀吉が朝鮮と戦った)文禄・慶長の役の時、日本側が残していったもので、そのまま朝鮮軍がもらい受けて使っていました。これもしっかり考証して再現しました。

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 ──3作品まったく異なるタイプが続いています。次はどんなものを撮りたいですか。

 今は何も決まっていません。休んでいます。製作を務める作品のため、シナリオを書いていますが、コミカルな作品なので、セリフを書いていて楽しい。次はコミカルな作品もいいですね。

(文・写真 遠海安)

「天命の城」(2017年、韓国)

監督:ファン・ドンヒョク
出演:イ・ビョンホン、キム・ユンソク、パク・ヘイル、コ・ス、パク・ヒスン

2018年6月22日(金)、TOHOシネマズ シャンテほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://tenmeinoshiro.com/

作品写真:(C)2017 CJ E&M CORPORATION and SIREN PICTURESALL RIGHTS RESERVED
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2018年06月13日

「ワンダー 君は太陽」人と顔が違う少年オギー 友情と葛藤、成長の物語

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 オギー(ジェイコブ・トレンブレイ)は遺伝子の疾患で、人と異なる顔で生まれてきた。何度も手術を受け、自宅で勉強を続けてきたが、両親は息子を外の世界へ送り出すと決める。学校でオギーはいじめや裏切りに合うが、ありったけの勇気と知恵で立ち向かい、周囲の人々が変わり始める──。

 R・J・パラシオの原作小説を、「ウォールフラワー」(12)のスティーブン・チョボスキーが監督した作品。「ルーム」(15)の名子役ジェイコブ・トレンブレイ、「エリン・ブロコビッチ」(00)のジュリア・ロバーツ、「ミッドナイト・イン・パリ」(11)のオーウェン・ウィルソンが出演。

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 宇宙飛行士用のヘルメットをかぶった少年が、一人で遊ぶシュールな幕開け。少年オギーは顔が変形しており、外出時は常にヘルメット姿。両親と高校生の姉、ペットの犬とニューヨークで暮らし、自宅学習をしてきたが、5年生で初めて小学校に入る。

 入学を前に、オギーは母と校長に会い、クラスメート3人に学校を案内してもらう。3人のうちジャックは良き理解者となり、唯一の親友になる。期待と不安の登校初日は、挑戦と試練の日々の始まりでもあった──。

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 デリケートな題材で、一歩誤れば重苦しくなる恐れがある。監督は病を隠さず、ユーモアを交えながら正面から描いている。オギーは差別や偏見と戦いながら、学校に通い始める。クラスメートとの友情、いじめや裏切り。一つ一つきっちり描き、成長と葛藤の物語をつむぐ。

 オギーが現実逃避するような脳内世界は、ポップで幻想的。大好きな映画「スター・ウォーズ」の人気キャラクターが登場する凝りようだ。家族の物語と並行して、姉のヴィア(イザベラ・ヴィドヴィチ)の悩みと友情、恋愛を描き、物語に膨らみを持たせる。

 オギーを演じたトレンブレイは、感情が出し辛い特殊メイクで難役に挑み、観客の心をつかむ。両親を演じたロバーツとウィルソンは脇に徹して好演。両親の無償の愛、クラスメートとの温かい友情。オギーが勇気を与えられ、成長する姿に感動する。

(文・藤枝正稔)

「ワンダー 君は太陽」(2017年、米)

監督:スティーブン・チョボウスキー
出演:ジュリア・ロバーツ、ジェイコブ・トレンブレイ、オーウェン・ウィルソン、マンディ・パティンキン、ダビード・ディグス

2018年6月15日(金)、TOHO シネマズ日比谷ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://wonder-movie.jp/

作品写真:(C)2017 Lions Gate Films Inc. and Participant Media, LLC and Walden Media, LLC. All Rights Reserved.
タグ:レビュー
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