2018年02月08日

「マンハント」白い鳩、二丁拳銃、スローモーション ジョン・ウー監督、大阪舞台にアクション自在 

IMG_9218.JPG

 実直な国際弁護士ドゥ・チウ(チャン・ハンユー)が目を覚ますと、女の死体が横たわっていた。状況証拠はドゥが犯人と示しており、殺人事件に巻き込まれる。何者かに陥れられたと逃走するドゥ。一方、孤高の敏腕刑事の矢村(福山雅治)は独自捜査でドゥを追う──。

 中国で大ヒットした高倉健主演の「君よ憤怒(ふんど)の河を渉れ」(佐藤純彌監督、76)。西村寿行の原作小説を再映画化したのが「マンハント」だ。日本版のリメイクではなく、ジョン・ウー監督が原作を現代流に大胆に解釈。日中韓のキャスト、大阪など日本でロケ撮影した中国アクション映画だ。

IMG_9113.JPG IMG_9161.JPG IMG_9242.JPG

 高倉健版の「君よ憤怒の河を渉れ」と物語の骨格は同じだが、全体像はかなり違う。日本版では、高倉演じる罪を着せられた検事が、真犯人を探して日本中を逃げ回る。一方、「マンハント」は派手なアクション満載で、ウー監督のカラーを前面に押し出した。大阪ロケはリドリー・スコット監督で高倉も出演した「ブラック・レイン」(89)に通じる。

 幕開けは港町の小料理屋。女将(ハ・ジウォン)とドゥが談笑している。二人のひと時の心の交流は、のちの展開で重要になる。意外な仕掛けであっと驚くアクションシーンへ。二丁拳銃にスローモーション、ウー監督得意のアクションが素晴らしい。バックには「君よ憤怒の河を渉れ」のテーマ曲が流れる。しびれるような演出で、観客の心をわしづかみにし、日本版との方向性の違いをはっきり提示する。

IMG_9270.JPG IMG_9335.JPG

 ドゥは陰謀に巻き込まれ、逃亡を始める。長尺だった日本版と違い、構成がかなり簡略化されている。日本版で男くさい原田芳雄が演じた矢村は、福山雅治がスマートで洗練された刑事に変えた。矢村の登場シーンは、テロリストを相手に「ダーティハリー」(71)ばりに男気あふれている。

 香港からハリウッドへ、そして中国へ。トム・クルーズ主演の「ミッション・インポッシブル2」(00)、中国の歴史二部作「レッドクリフ」と大作が続いたが、「マンハント」はフットワークの軽さが際立つ。監督のシンボルでもある白い鳩、二丁拳銃、スローモーション。ヒッチコックばりの推理劇。手腕健在でうれしく、荒唐無稽さも圧巻だ。

 音楽・岩代太郎、美術・種田陽平に加え、國村隼、池内博之、竹中直人、桜庭ななみ、倉田保昭ら日本人キャストも大活躍する。アジアの才能が集結した注目の中国アクション映画だ。

(文・藤枝正稔 写真・岩渕弘美)

640.jpg

「マンハント」(2018年、中国)

監督:ジョン・ウー
出演:チャン・ハンユー、福山雅治、チー・ウェイ、ハ・ジウォン、國村隼

2018年2月9日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://gaga.ne.jp/manhunt/

作品写真:(C)2017 Media Asia Film International Ltd. All rights Reserved

タグ:レビュー
posted by 映画の森 at 21:33 | Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「サニー 32」実際の事件モチーフに 白石和彌監督の犯罪サスペンス

1.jpg

 「ずっと会いたかったよ、サニー……」。そう言って柏原(ピエール瀧)と小田(リリー・フランキー)は女性を拉致し、雪深い山の廃屋に監禁した。連れ去られたのは24歳の中学校教師・藤井赤理(北原里英)。「サニー」は「史上最も可愛い殺人犯」と呼ばれた11歳の少女の名で、ネットで神格化されていた。柏原と小田はサニーの狂信的な信者だった──。

 アイドルグループ「NGT48」から卒業を発表した北原里英が映画初主演。俳優やスタッフは白石和彌監督の「凶悪」(13)のメンバー再集結。脚本・高橋泉、主演のピエール瀧、リリー・フランキーで、衝撃的なサスペンス映画だ。

3.jpg

 まずは「サニー事件」の説明から始まる。11歳の小学生女児が、同級生の女児の首をカッターナイフで切り付けて殺害した。加害者少女のかわいい容姿、3本指と2本指の決めポーズから“32=サニー”と名付けられ、ネットで神格化された。事件から14年。狂信的サニー・ファンの柏原と小田は、女性を拉致監禁する。

 「サニー 32」は、北原主演のアイドル映画を装っているが、紛れもなく白石監督による犯罪映画の流れをくむ。監禁には途中から参加者も増え、予想外のいざこざも発生。監禁場所が何者かに突き止められたため、廃屋から海の家に女性を移す。集団心理は悪い方向に動き、「自己批判」や「集団リンチ」などの陰惨な暴力にエスカレートしていく。

2.jpg

 そんな中、ごく一般的な女性だった藤井が「サニー」と祭られて教祖へと神格化していく。監督と脚本家は1970年代以降に起きた実際の凶悪事件をなぞりながら、新たなドラマとして再構築した。

 作品のスーパーバイザーを務めた秋元康が要求した「北原主演映画を撮る」ことから企画が始まったという。白石作品ファンの北原は、劇中の藤井のように、白石組に放り込まれ、一皮むけた演技を見せる。ピエール瀧とリリー・フランキーの立場は「凶悪」と逆。力関係が面白い。

 中学生のいじめ、ネットの闇などさまざまなネタを使い、現代社会の暗部を大胆に料理した。白石組のぶれない姿勢が素晴らしい。アイドル映画と経験するのも、うっかり手を出すのも難しい。実際の事件をモチーフにした衝撃の犯罪サスペンスだ。

(文・藤枝正稔)

「サニー 32」

監督:白石和彌
出演:北原里英、ピエール瀧、門脇麦、リリー・フランキー、駿河太郎

2018年2月17日(土)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://movie-32.jp/

作品写真:(C)2018「サニー 32」製作委員会
タグ:レビュー
posted by 映画の森 at 15:48 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする