2017年12月06日

「ビジランテ」地方の閉鎖社会と深い闇 父の暴力に支配される三兄弟 入江悠監督、地元を舞台に渾身の作品

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 幼い頃に失踪した長男・一郎(大森南朋)。市議会議員の次男・二郎(鈴木浩介)。デリヘル雇われ店長の三男・三郎(桐谷健太)。別々の道、世界を生きてきた三兄弟が、父親の死を機に再会。運命は交差し、欲望、野心、プライドがぶつかり合い、凄惨な方向へ向かう──。「SRサイタマノラッパー」の入江悠監督がオリジナル脚本で挑む渾身の新作。監督の地元・埼玉県深谷市で撮影された。

 兄弟の子供時代。暴力で息子たちを支配してきた父・武雄(菅田俊)を3人がナイフで切りつけ、逃げるように川を渡り、凶器のナイフを小箱に入れて埋める。追いついた父は力づくで自宅に連れ戻し、容赦なくせっかんする。耐えられなくなった一郎は弟2人を残し、行方不明となる。

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 それから30年。二郎は地元の有力者だった父の跡を継ぐように議員となり、街の自警団のリーダーも兼任していた。議会最大会派に所属し、妻・美希(篠田麻里子)の尻に敷かれつつ、出世コースを這い上がろうともがいていた。三郎は地元暴力団が経営するデリヘルの雇われ店長として、裏社会を渡り歩いていた。

 そんな矢先、父の武雄が亡くなった。地元市議会は、武雄の所有地にモールの建設を計画。了承すれば二郎の出世は約束される。あとは三郎が同意するだけだった。三郎は二郎を思い、父の遺産と相続を一任する。しかし二郎の計画は、30年ぶりに現れた一郎が持つ「遺産相続に関する公正証書」で狂い始める。

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 入江監督は「SRサイタマノラッパー」(09)、続編「SRサイタマノラッパー 女子ラッパー☆傷だらけのライム」(10)で、遊び半分だったラップが魂の叫びに変わる瞬間をエモーショナルに描いた。3作目「SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者」(12)でコミカルなタッチは影を潜め、暴力と焦燥感が作品を支配。方向性の変化が感じられた。続く「22年目の告白 私が殺人犯です」(17)がヒットし、今回初心に立ち返り、地元を舞台に勝負に出た。

 「ビジランテ」とは「法や正義が及ばない世界。大切なものを自ら守り抜く集団」を意味するという。父の暴力に支配され育った三兄弟。閉鎖的な地方都市を舞台に、痛く息苦しい暴力描写を交え、人生の悪循環を描き出す。外国人住民と地元自警団との摩擦と抗争。街を支配する市議会の黒い闇。三郎が生きる裏社会。地方の濃密な社会が映し出される。

 大森、鈴木、桐谷の熱演もさることながら、二郎を陰で操る妻役の篠田が一皮むけ、悪女をあやしく演じる。暴力で息子たちにトラウマを植え付けた父役の菅田は、インパクト絶大な凄みのある演技。鈍いボディブローを長時間打たれ続けたように、体に衝撃が残る渾身の一作だ。

(文・藤枝正稔)

「ビジランテ」(2017年、日本)

監督:入江悠
出演:大森南朋、鈴木浩介、桐谷健太、篠田麻里子、嶋田久作

2017年12月9日(土)、テアトル新宿ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://vigilante-movie.com/

作品写真:(C)2017「ビジランテ」製作委員会

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posted by 映画の森 at 23:36 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする