2017年11月15日

「マリリンヌ」第30回東京国際映画祭 最優秀女優賞 罵倒と称賛、挫折と再起 新進女優が味わう地獄と天国

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 冒頭、オーディションのシーンに目を見張る。体を激しく揺らしながら、大きなテーブルを両手でつかみ、何が何でも離さぬと、必死のパフォーマンス。主人公マリリンヌの非凡な演技センスと、エキセントリックな性格を強烈に印象づける、鮮やかなオープニングだ。観客は、この時点で早くもヒロインの一挙一動から目が離せなくなるだろう。

 片田舎の出身。母親以外に心を許す人間はなく、父親の葬儀でもほとんど無感情。都会に出て女優になることだけを夢見て生きてきたのだろうか。卓越した才能はすぐに見出される。ただし、あまりに繊細すぎるがゆえに、プレッシャーに弱い。何度もダメ出しされ、罵倒され、放り出される。

 酒浸りの荒れた生活。女優の夢はとうに捨ててしまったか。と思って見ていると、有力な映画監督からオファーが入る。再起のチャンスだ。しかし、ここでも精神的弱さを露呈。NGを連発し、窮地に追い込まれる。だが、諦めかけたそのとき、共演者であるベテラン女優から救いの手が伸びる。彼女の的を射たアドバイスは功を奏し、マリリンヌは才能を開花させる。

 これで吹っ切れた。女優としての運命は決定づけられた。確信をいだく。ところが、続くシーンで描かれる私生活の不調に、漠然とした悪い予感を抱かされる――。

 はたしてマリリンヌはこのまま成功への道を進むのか、再び挫折してしまうのか。場面転換するたびに、境遇が変わっており、先がまったく読めない。綿密に設計された脚本が見事。ヒロインの不安定な人物造形と相まって、予断を許さない展開が続いていく。

 マリリンヌ役は、これが映画初主演のアデリーヌ・デルミー。意表をつくラストで観客をまんまと欺く演技は圧巻だ。第30回東京国際映画祭の最優秀女優賞を獲得した。

(文・沢宮亘理)

「マリリンヌ」(2017年、仏)

監督:ギヨーム・ガリエンヌ
出演:アデリーヌ・デルミー、ヴァネッサ・パラディ、エリック・リュフ、ラーズ・エディンガー

作品写真:(c)Photo Thierry
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posted by 映画の森 at 23:53 | Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「ロダン カミーユと永遠のアトリエ」天才彫刻家、生誕100年記念の伝記映画

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 長い下積み時代を経て1880年、オーギュスト・ロダンは初めて国から大きな仕事を発注され、意気揚々と創作に臨んでいた。国から支給された大理石保管所をアトリエに、構想を練り上げてきたのはダンテの「神曲」をテーマにした「地獄の門」だ。完成すれば、パリに建設予定の国立装備美術館の庭に設置されるモニュメントになる──。

 「ロダン カミーユと永遠のアトリエ」は“近代彫刻の祖”ロダンの没後100年を記念して、パリのロダン美術館が全面協力を得て製作されたフランス映画だ。ロダン役に「ティエリー・トグルドーの憂鬱」(15)のヴァンサン・ランドン、ロダンの弟子で愛人のカミーユ・クローデルに「サンバ」(14)のイジア・イジュラン。監督、脚本は「ボネット」(96)のジャック・ドワイヨン。

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 「地獄の門」の製作に取り掛かる40歳の1880年から晩年に絞り、アトリエで制作する姿とともに、42歳で出会う弟子であり愛人のカミーユ、内縁の妻ローズ(セヴリーヌ・カネル)、モデルたちと濃密な愛憎関係が描かれる。

 ロダンの人物像にまず驚かされる。カミーユと愛人関係になるが、内縁の妻とも別れられない。優柔不断で煮え切らない態度を突き通す。その間にも彫刻のモデルと肉体関係を持つなど、無類の女好きには驚くばかりだ。カミーユとの関係はかつて、イザベル・アジャーニ主演「カミーユ・クローデル」(88)で描かれた。同作はカミーユの視点だが、今回はロダンから見た関係である。

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 女性たちとの愛憎劇と並行して、「地獄の門」、「カレーの市民」、「バルザック記念像」など傑作が生みだされる過程も詳細に描く。白衣を着てアトリエにこもり、彫刻に取り組む姿は天才そのもの。情熱と創作の源は、彼を取り巻く多くの女性たちだったのかもしれない。

 ロダンを演じたランドンは、弱さを抱えた偉人を魅力的に演じている。さらに、最後に過去と現在をつなぐ時空を超えたサプライズ。作品が大きく飛躍し、ロダンの彫刻が観客の興味をさらに刺激する仕掛けになっている。

(文・藤枝正稔)

「ロダン カミーユと永遠のアトリエ」(2017年、仏)

監督ジャック・ドワイヨン
出演:バンサン・ランドン、イジア・イジュラン、セブリーヌ・カネル

2017年11月11日(土)、新宿ピカデリーほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://rodin100.com/

作品写真:(c)(C)Les Films du Lendemain / Shanna Besson
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