2017年10月19日

「アトミック・ブロンド」シャーリーズ・セロン、圧巻の体当たりアクション 冷戦末期のベルリン、絡み合う諜報合戦

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 1989年秋、ベルリン。冷戦末期、ベルリンの壁崩壊前夜、英諜報員が殺され、極秘のスパイリストが強奪された。英諜報機関「MI6」にリストの奪還を命じられたロレーン(シャーリーズ・セロン)は単身現地に潜入するが、敵国ソ連が放った刺客に襲われる。協力者のはずのMI6ベルリン支部の敏腕諜報員パーシバル(ジェームズ・マカボイ)も不穏な行動だ。東西ベルリンを行き来しながら危険なミッションを遂行するロレーンだったが、監視と盗聴、非常な罠で絶体絶命の窮地に陥る。

 2012年に発表されたグラフィック・ノベルを実写化。監督は「ジョン・ウィック」(14)の製作、共同監督を務めたデビッド・リーチ。スタイリッシュなスパイアクションだ。

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 冷戦末期のドイツでは、極秘スパイリストを巡り、英、東独、仏、ソ連のスパイたちが血眼になって任務を遂行していた。スパイリスト奪還のため、MI6がベルリンに送り込んだのがロレーンだ。

 ベルリンの任務を終えたロレーンが、MI6の取り調べ室で主任のグレイ(トビー・ジョーンズ)、協力関係にある米米中央情報局(CIA)主任カーツフェルド(ジョン・グッドマン)に尋問を受けている。物語はそんな任務終了後と、任務を回想する現在の二層構造で展開する。

 アクション満載の作品を牽引するのは製作、主演を務めたセロンだ。MI6の取り調べ室でふてぶてしく取り調べに応じるセロンは、尋常ではない傷だらけの姿。観客は「何があったのか」と疑問を持ったところで、理由がロレーンの口から語られる。ドイツに到着したロレーンは直後から刺客に狙われ、普通なら死んでもおかしくない危機を、敏腕スパイならではの勘と戦闘能力で乗り越えた。

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 中でも凄いのは、ビルの階段と部屋を舞台にセロンに襲いかかる複数の刺客との7分半の死闘を、ワンカットでとらえたシーンだ。「接近戦のプロ」のセロンは銃やナイフで襲いくる刺客に丸腰で戦う。圧倒されるアクションだ。よく見るとところどころ流血し、どんどん傷だらけになっていく。驚異のワンカット撮影に加え、最新の映像処理の進歩。スタントマン出身の監督ならではのたたみかける演出だ。

 スパイたちのだまし合いも秀逸。壁崩壊間近の混沌としたベルリンに、潜伏しながら活動する怪しいパーシバル。フランスの女スパイ、ラサール(ソフィア・ブラガ)。敵か味方か分からぬスパイたちにロレーンは惑わされる。

 最近は「007」、「ミッション・インポッシブル」など老舗スパイ映画の好調ぶりが印象的だが、「アトミック・ブロンド」は大胆不敵な生身アクションを全編に投入しながら、セロンの新たな魅力を引き出した。テンション高めな女スパイ映画である。

(文・藤枝正稔)

「アトミック・ブロンド」(2017年、米)

監督:デビッド・リーチ
出演:シャーリーズ・セロン、ジェームズ・マカボイ、エディ・マーサン、ジョン・グッドマン、トビー・ジョーンズ

2017年10月20日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://atomic-blonde.jp/

作品写真:(C)2017 COLDEST CITY, LLC.ALL RIGHTS RESERVED.

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posted by 映画の森 at 13:48 | Comment(0) | 米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「あゝ、荒野」菅田将暉&ヤン・イクチュン、熱くぶつかり「胸いっぱいに」

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 寺山修司原作の映画「あゝ、荒野」前編が2017年10月7日公開され、東京・丸の内で主演の菅田将暉、ヤン・イクチュンら出演俳優と岸善幸監督が舞台あいさつした。

 原作の舞台を近未来の新宿に移し、純粋で無鉄砲な性格の新次(菅田)と、引っ込み思案で吃音に悩む研二(ヤン)が、運命に導かれるように出会い、ぶつかり合う過程を描く。前・後編合わせて305分の長編だ。

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 観客の掛け声の中、ボクシングの試合を思わせる呼び込みで登場したヤンと菅田。菅田は慣れない演出に照れながら「本編では照れずにやってます。楽しんでください」と挨拶。ヤンも「あふれるエネルギーの渦に巻き込まれると思います」と誇らしげに語った。

 ボクサーとして二人を育てるトレーナー役のユースケ・サンタマリアは「昨年ひと夏撮影をした日々がよみがえり、泣くのをこらえるのに必死です」と感慨深い様子。新次のライバルを演じた山田裕貴は「参加していても衝撃で、役を生きたと思える。皆さんの心を揺さぶり、ノックアウト間違いなし」と語った。

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 岸監督は「ボクシングシーンも濡れ場も激しい映画。出演者は美しい肉体をさらけ出して頑張ってくれた。この映画に込めた愛を感じてもらえればうれしい。ボクシング映画でもあり、ラブストーリーでもある」と語った。

 305分の長編。ヤンは「初めは短い一本の映画だと思っていた。前編、後編になると撮影の途中で知りました」と話すと、菅田に「3カ月も撮影していたら気づくでしょ。なんで誰も教えなかったの?」と突っ込みを入れられる一幕も。

 ヤンは「500分を超えても飽きないと思う」と自信を示し、菅田は「岸監督は編集が好きな人。70時間撮ったものを何とか5時間に収めた」と明かした。監督も「あと2時間は長くしたかった」と語るなど思いは尽きない様子だった。

 韓国映画「息もできない」で強面のイメージのあるヤン。高橋が「ヤンさんのかわいさにスタッフが惚れてました」と話すと、菅田も「途中からこの映画はヒロインが芳子(木下あかり)とバリカン(ヤン)の二人なのかなと思った」と話して場内を沸かせた。

 最後に「胸がいっぱいになる作品。素晴らしい原作、素晴らし俳優、素晴らし撮影を経て、いい作品が生まれた」とヤン。菅田は「かかわった人の思いがこんなに熱いことはない。平成の時代にもそういう輪が広がることがあるんだなと嬉しく思う」と観客に語りかけた。

(文・写真 岩渕弘美)

「あゝ、荒野」(2017年、日本)

監督:岸善幸
出演:菅田将暉、ヤン・イクチュン、木下あかり、モロ師岡、高橋和也

2017年10月7日(土)前編、10月21日(土)後編、新宿ピカデリーほかで2部作連続公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://kouya-film.jp/

作品写真:(c)2017「あゝ荒野」フィルムパートナーズ

フォトセッション 左から 岸善幸監督 木村多江、ユースケ・サンタマリア、ヤン・イクチュン、菅田将暉、木下あかり、高橋和也、山田裕貴

posted by 映画の森 at 11:33 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする