2017年07月31日

韓国映画「軍艦島」歴史観をめぐり論争 リュ・スンワン監督会見「史実をもとに想像力を広げたフィクション」

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 今夏の韓国映画界で話題をさらったのは、なんといっても220億ウォン(約22億円)の製作費を投入した「軍艦島」だ。1945年の長崎県端島(通称・軍艦島)を舞台に、苦役を強いられた朝鮮人の大脱走劇を描くもので、「ベテラン」(15)、「ベルリンファイル」(12)の成功も記憶に新しいリュ・スンワン監督の最新作。史実に大幅にフィクションを加えたアクション映画だが、歴史観をめぐる論争が劇場を飛び出して一人歩きしている。

 韓国映画振興委員会の統計によると、「軍艦島」は公開初日(7月26日)に韓国新記録となる97万人を動員した。初日のスクリーン数は全国の85%に当たる2027で、やはり新記録。このスクリーン占拠ぶりに批判の声が上がったのは当然だが、ファン・ジョンミン、ソ・ジソブ、ソン・ジュンギらスターたちが日本帝国を相手にアクションを繰り広げるとなれば、注目しないわけにはいかないだろう。

 「軍艦島」は企画が明らかになった時点から話題が沸騰していた。韓国メディアは日韓史の暗部に光が当たると期待した。2015年に軍艦島が含まれる「明治日本の産業革命遺産」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録されたが、これに韓国は官民あげて反発してきた経緯があるからだ。一方、日本メディアは反日ムードをあおるとして警戒。あらすじだけを見て「反日映画」と決めつける論調も見られた。

 こうしたメディアの反応は、かえって映画への関心を高めた。予告編では旭日旗を切り裂くなど「反日」的な部分を強調。日本メディアが過敏に反応すると、それに韓国メディアがかみつく、という炎上マーケティング的な構図もみられた。

日韓双方に配慮か
 では、実際の映画はどうだったのか。7月19日にソウルで開かれたプレス試写会に参加した。初上映とあって会場は満員。日本メディアの特派員たちの姿もあった。

 甘言にだまされて軍艦島に連れてこられた朝鮮人たちがひどい仕打ちを受けて重労働を強いられ、団結して脱出を試みるストーリー。海底坑道のリアルな描写や迫力あるアクションシーンは見応えがあるし、子役キム・スアンの演技はとても達者だ。

 この作品が描くのは、強制徴用の史実を下敷きにした「集団大脱走」というフィクション。登場人物は帝国主義を象徴する「悪い日本人」と被害者の「善い朝鮮人」だけではない。帝国主義の片棒をかつぐ「悪い朝鮮人」や、朝鮮人の理解者となる「善い日本人」も登場する。この点、韓国メディアは消化不良だと感じ、「反日映画」を期待(?)していた日本メディアは肩透かしを食らったのではないだろうか。韓国では朝鮮人が日本人より悪く描かれていることなどを理由に「歴史わい曲」との声まで上がっている。

 リュ監督は上映後の記者会見で「史実をもとに想像力を広げてつくったフィクション」と強調した。「資料にもとづき、善い日本人や悪い朝鮮人もいたという当然のことを表現しただけ。単純な2項対立で観客を刺激するのではなく、個々の人間にフォーカスした」とも話した。ただ、前作「ベテラン」で監督は「財閥家(=絶対悪)に闘いを挑む小市民(=善)という図式で大ヒットを飛ばしている。デフォルメされた2項対立が痛快なアクションを生むことは承知のはずだ。日本にも知己の多い監督のことだから細かな配慮をしたのかもしれない、とさえ思わせられる。

 史実をテーマにするからには、韓国の観客に向けたメッセージも不可欠だ。映画のラストには、端島の世界遺産登録に疑問を投げかける字幕が流れる。こうした日韓双方への“配慮”が、結果として「軍艦島」を中途半端な印象にしてしまったのだとしたら残念だ。

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イ・ジュニク監督「朴烈」の挑戦
 これに先立ち韓国で公開された「朴烈」(パク・ヨル、イ・ジュニク監督)は、植民地時代の朝鮮人アナーキストの生きざまを描いた作品だ。1919年に日本に渡り無政府主義を掲げて社会運動に携わった朴烈(本名・朴準植)と、同志で恋人の日本人女性、金子文子の物語。イ監督は、治安維持法で逮捕され獄中死した詩人・尹東柱を描いた「東柱」(16年)に続いて、植民地時代に生きた朝鮮のヒーローを取り上げた。

 「軍艦島」と「朴烈」は、どちらも知られざる近代史をテーマにしている。軍艦島で行われていた過酷な労働については、日本でも広く知られているとは言えず、韓国にいたってはほとんど知られていない。朴烈は1923年の関東大震災の後に治安警察法に基づき特に証拠もないまま金子文子とともに逮捕され、みずから皇室暗殺の意図があったと供述して死刑判決を受ける。その後、天皇の特赦で無期懲役に減刑。戦後に出獄すると反共思想に転向し韓国に出国、朝鮮戦争時に北朝鮮に連行された波乱の生涯の持ち主だが、日韓ともに知名度はそれほど高くない。

 「朴烈」の製作陣は、当時の新聞や金子文子の自伝を綿密に読み込み、主人公の人となりを可能な限り忠実にあぶり出そうとした。その試みはイ・ジェフンとチェ・ヒソらキャストの熱演もあって成功し、メディアや観客の反応はおおむね高かった。

 「軍艦島」と同様、「朴烈」も「日本人=悪、朝鮮人=善」という単純な図式では描かれていない。主人公の同志であり恋人でもある金子文子が日本人なのはもとより、主人公の思想に共感し支援する日本人が大勢登場する。にもかかわらず好意的な評価が多いのは、韓国の観客が単純な思考回路で映画を見ているわけではなく、徹底した考証のもとに人物像を描き出そうとする監督の姿勢を支持したことの表れではないだろうか。

リュ監督「過去の歴史から脱出してこそ未来がある」
 リュ・スンワン監督は会見で「清算されずにいる歴史問題が現在と未来を縛っている。軍艦島からの脱出劇には、過去の歴史から脱出してこそ未来があるという意図を込めた」と話した。想像をはるかに超える反応に監督が戸惑っているのがうかがえる会見だったが、「軍艦島」のような映画が政治的に解釈されることも、韓国に新政権が誕生し、いわゆる慰安婦合意の見直しの世論が高まる中では避けられないことだろう。

(文・芳賀恵)
posted by 映画の森 at 12:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走」フランス発、巻き込まれ型爆笑コメディー

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 仏コメディー映画「真夜中のパリでヒャッハー!」(15)のニコラ・ブナム監督が、夏休みのドライブ旅行で一家が繰り広げる騒動を描いた「ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走」。

 物語はシンプルだ。愛車でバカンスに旅立つ整形外科医の父トム(ジョゼ・ガルシア)と臨月の母ジュリア(カロリーヌ・ヴィニョ)、祖父ベン(アンドレ・デュソリエ)と子供2人の5人家族。車の電子制御システムが壊れ、ブレーキが利かないまま、速度160キロで高速道路を大暴走。次々と降りかかるハプニングを喜劇仕立てで描いていく。

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 大暴走といえば、日本のパニック映画「新幹線大爆破」(75)。速度80キロ以下になると爆発する爆弾が仕掛けられた新幹線。警察と国鉄、犯人グループの駆け引きがスリル満点に描かれた傑作だ。この映画に影響を受けて作られたのがキアヌ・リーブス主演「スピード」(94)。バスに仕掛けられた爆弾をめぐり、警察と犯人の攻防戦が描かれた。

 今回暴走を引き起こすのは、車に登載された最新型電子制御システム。ドライバーなら誰にもが起こり得るトラブルだけに感情移入しやすい。凄いのは実際の高速道路に俳優を乗せた車を走らせ、車内で俳優が演技し、アクションもこなす点だ。コンピューター・グラフィックス(CG)合成全盛の昨今、コメディーだからと手を抜かず、疾走感と説得力を持たせた。

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 家族が乗った車が暴走して物語が動き出し、警官や車のディーラーらを巻き込む「巻き込まれ型コメディー」。予想の一歩先を行く笑いとアイデアが、92分とコンパクトにまとめられている。クライマックスは奇想天外なアクション。笑いを超えて感動を呼ぶ。スケールの大きさ、センスの良さに脱帽だ。

(文・藤枝正稔)

「ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走」(2016年、フランス)

監督:ニコラ・ブナム
出演:ジョゼ・ガルシア、アンドレ・デュソリエ、カロリーヌ・ビニョ、ジョゼフィーヌ・キャリーズ、スティラノ・リカイエ

2017年7月22日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://gaga.ne.jp/bon-voyage/

作品写真:(C)(C)2016 Chic Films – La Petite Reine Production – M6 Films – Wild Bunch

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posted by 映画の森 at 06:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする