2017年05月18日

「オリーブの樹は呼んでいる」祖父のために孫娘奮起 たった一人の無謀な挑戦

ol_main.jpg

 スペイン、バレンシア地方の小さな町カネット。20歳のアルマ(アンナ・カスティーリョ)は、気が強く扱いにくい女の子だ。オリーブ農園を営む祖父とは深い絆で結ばれていたが、祖父は何年も前に話すことをやめた。大切にしていた樹齢2000年のオリーブの樹を父が売ってしまったからだ。ついに食事もしなくなった祖父を見て、アルマは樹を取り戻す決意をする──。

 「オリーブの樹は呼んでいる」は「麦の穂をゆらす風」(08)、「わたしは、ダニエル・ブレイク」(16)でケン・ローチ監督とコンビを組むポール・ラヴァーティの脚本を、妻で女優のイシアル・ポジャインが監督したスペイン映画だ。

ol_sub1.jpg

 オリーブをめぐる祖父と孫娘の物語を知る前に、スペインの経済状況を理解する必要がある。不景気が続き、失業率は過去最高。建設業界の景気は低迷し、農家は自然を破壊して利益を得ているという。農園で育てられた樹齢1000年を超えるオリーブも、高値で売買されるありさまだ。

 作品に登場する農園も、景気悪化のあおりを受け、祖父のオリーブを手放さざるを得なくなる。家計は一時的に潤うものの、家族の絆は崩壊し、祖父はふさぎ込む。不仲な家族の現在をメーンにしながら、オリーブがあった平和なアルマの子供時代が回想される。

 アルマは樹木の仲介業者に樹を売った相手を聞き出す。樹はドイツの環境保護企業のシンボルとして使われ、会社のロビーに展示されていた。お金もコネもないアルマは、叔父のアーティチョーク(ハビエル・グティエレス)と同僚のラファ(ペップ・アンブロス)を丸め込み、大型トラックを会社から勝手に拝借。ドイツに向け無謀な旅に出る。

ol_sub2.jpg

 アルマの計画は周りの人々を巻き込み、SNSを通じて世の中に拡散され、大きな騒動に発展する。たった一人で挑戦する反骨精神は、ローチ監督の「わたしは、ダニエル・ブレイク」にも通じる。しかし、作家の目はシビアだ。困難を越えた末の安易な結末を示さず、厳しい現実を突きつける。

 スペインの現状を知らぬ身には、やや分かりづらい物語かもしれない。アルマの祖父へのまっすぐな思いが、壊れた家族の絆を修復する。現実を厳しくとらえた作品だ。

(文・藤枝正稔)

「オリーブの樹は呼んでいる」(2016年、スペイン)

監督:イシアル・ボジャイン
出演:アンナ・カスティーリョ、ハビエル・グティエレス、ペップ・アンブロス、マヌエル・クカラ

作品写真:(C)Morena Films SL-Match Factory Productions-El Olivo La Pelicula A.I.E
タグ:レビュー
posted by 映画の森 at 21:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | スペイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする