2017年04月07日

「LION ライオン 25年目のただいま」迷子になった少年 故郷インドへの長い道

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 サルー・ブライアリーが体験した実話を映画化した「LION ライオン 25年目のただいま」。インドで迷子になった少年が、25年後に電子地図サービス「グーグル・アース」を使い、故郷を探し出す物語だ。監督はオーストラリア出身のガース・デイビス。長編デビュー作となる。

 1986年、インド。5歳のサルー(サニー・パワール)は、母と兄弟4人で暮らしていた。兄の仕事へついて行ったある日、回送列車の中で眠ってしまう。着いた先は大都市コルカタ。言葉も通じぬ見知らぬ町へ放り出され、サルーのサバイバル生活が始まった。

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 町で優しい女性に拾われ、食事と風呂を世話してもらったサルー。翌朝、自分に目をつける男の存在を察知し、再び逃げ出して放浪する。やがて警察に保護され、孤児院に入れられた。子どものいない裕福なオーストラリア人夫妻と養子縁組が成立。「サルー・ブライアリー」としての新しい人生が始まった。

 08年、サルー(デブ・パテル)はオーストラリア南部のタスマニアで暮らす養父母のもとを離れ、メルボルンの学校でホテル経営を学んでいた。友人のルーシー(ルーニー・マーラ)と訪れたホームパーティーで、インドの揚げ菓子を見た瞬間、故郷の記憶が蘇った。生い立ちを話すサルーに、友人の1人が「グーグル・アースなら地球のどこでも行ける」と話す。

 母の名も、住んでいた町の場所も忘れてしまったサルー。「列車に乗った駅の近くに給水塔があった」記憶だけを頼りに、グーグル・アースを使った故郷探しの旅が始まった──。

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 サルーの数奇な半生は、インドとオーストラリアの2部構成で語られる。貧しい家族とはぐれ、過酷な放浪生活を送ったインドの日々。町をさまよう中、人身売買や児童買春を匂わせる描写もあり、かなり危険な状況をかいくぐったことが伺える。長じてオーストラリアに暮らすサルーは、故郷の家族を思う気持ちが高まり、とりつかれたようにルーツを探し求める。

 子ども時代を演じたパワールの生命力あふれる演技、大人になったサルー役のパテルが見せる揺れる心。実話だけに終着点は想像できるが、細かなエピソードが積み重ねられ、演出は丁寧だ。脇に徹したニコール・キッドマンが重要な役で支え、見ごたえのある作品になった。

(文・藤枝正稔)

「LION ライオン 25年目のただいま」(2016年、オーストラリア)

監督:ガース・デイビス
出演:デブ・パテル、ルーニー・マーラ、ニコール・キッドマン、デビッド・ウェンハム、サニー・パワール

2017年4月7日(金)、TOHO シネマズみゆき座ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://gaga.ne.jp/lion/

作品写真:(C)2016 Long Way Home Holdings Pty Ltd and Screen Australia

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2017年04月02日

「はじまりへの旅」森で暮らす風変わりな家族 父と子6人の破天荒ロードムービー

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 米北西部の森で暮らす風変わりな家族が主人公のロードムービー「はじまりへの旅」。監督のマット・ロス自身の子供時代の体験をもとにしているという。カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞した。

 厳格な父のベン(ビゴ・モーテンセン)は、独自の教育方針に基づき子供6人を育てていた。18歳の長男ボウドヴァン(ジョージ・マッケイ)は、ナイフ1本で野生の鹿を仕留める。家族は鹿を解体し、その夜のごちそうとして食べる。森でサバイバル生活を送る家族は、哲学者のノーム・チョムスキーを崇拝している。資本主義を否定し、自給自足の生活。本で文学や哲学を学んだ子供たちは6カ国語に通じ、強靭な体力を誇る。ボウドヴァンは名門大学に次々合格するほどだ。

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 文明社会に触れない毎日を送る家族のもとに、ある日突然訃報が入る。長期入院中の母レスリーが亡くなったのだ。葬儀に出るため、父子は改造バスに乗り、2400キロ離れたニューメキシコ州を目指す。仏教徒だった母の願いを尊重し、父子は奇想天外な行動を起こす。

 一行の行動は奇妙だ。腹をすかせて入った食堂で、食事をすべて「毒」とみなす。スーパーへ行けば「食材の救済」と称して大量の食べ物を万引きする。家族の理解者であるベンの妹夫妻の家に泊めてもらうが、あまりに常識はずれのため対立する。ボウドヴァンはキャンプ場で知り合った少女に恋をし、プロポーズまでするが振られてしまう。葬儀にはド派手な衣装で参列し、ベンと妻の父ジャック(フランク・ランジェラ)は激しく衝突する。

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 ネットなど最新技術と無縁の家族をコミカルに描写しつつ、現代人が持つ自然への憧れも浮かび上がらせる。母と子の生前の姿を回想するシーンがあってもよかったが、モーテンセン演じる型破りだが繊細な父親、個性豊かな子供たちの演技に魅せられる。便利すぎる社会に慣れた人々へ、皮肉を込めた独創的作品だ。

(文・藤枝正稔)

「はじまりへの旅」(2016年、米国)

監督:マット・ロス
出演:ビゴ・モーテンセン、フランク・ランジェラ、ジョージ・マッケイ、サマンサ・アイラー、アナリース・バッソ

2017年4月1日(土)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで、

http://hajimari-tabi.jp/

作品写真:(C)2016 CAPTAIN FANTASTIC PRODUCTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.
タグ:レビュー
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