2017年02月16日

「セル」スティーブン・キング原作アクションホラー 携帯依存の恐怖 移動型サバイバル劇

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 小説家スティーブン・キングが自作を脚本化し、映画化されたアクションホラー「セル」。コミック作家のクレイ(ジョン・キューザック)は、ボストンの空港で妻子に電話するが、電池切れで通話が途切れる。すると携帯電話で話していた周りの人たちが突然暴徒化。空港はパニック状態に。地下鉄に逃げたクレイは、車掌トム(サミュエル・L・ジャクソン)と少女アリス(イザベル・ファーマン)の協力で、家族が待つニューハンプシャーを目指す──。

 キング作品は「キャリー」(76)、「シャイニング」(80)、「ミザリー」(90)、「ミスト」(07)など続々と映画化されてきた。今回はキューザックが製作総指揮を務め、同じキング原作の「1408号室」(07)でコンビを組んだジャクソンが共演。「パラノーマル・アクティビティ2」(10)のトッド・ウィリアムズがメガホンを取った。

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 米国で携帯電話は「セル」。原作が出版された06年は、携帯電話が急速に普及した時期だった。携帯を通して人間が凶暴になり、周りの人々を襲っていく。死者が蘇り襲う「ゾンビ」に設定は似ており、群れになって素早く襲う様子は最近のゾンビ映画と共通する。

 ボストンの空港で突如パニックに巻き込まれるクレイ。「奴ら」から逃げる視点で物語は展開する。地下鉄から街へ移動しながら、途中で偶然出会った人たちと徒歩、車でニューハンプシャーへ向かう。移動型のサバイバル劇だ。

 人々は携帯電話のノイズで暴れ始めるが、終末的な状況でクレイを突き動かす原動力は家族愛だ。息子に会うため「奴ら」と戦う姿は、同じキング原作「ペット・セメタリー」(89)を思い起こさせる。死んだ息子を蘇らせるため、禁断の方法に手を染める主人公だった。

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 今回は携帯電話に依存する現代人に、キングが放った皮肉を感じる。原作が発表された10年前、すでに携帯依存の恐ろしさを描いた先見性は見事だ。平和な日常が一変する瞬間が、たたみかける残酷描写で描かれる。テンポの良い監督の演出、個性派俳優のひとくせある演技。ホラー映画ファンも満足の仕上がりとなった。

(文・藤枝正稔)

「セル」(2016年、米国)

監督:トッド・ウィリアムズ
出演:ジョン・キューザック、サミュエル・L・ジャクソン、イザベル・ファーマン、オーウェン・ティーグ、クラーク・サルーロ

2017年2月17日(金)、TOHOシネマズ 六本木ヒルズほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://cell-movie.jp/

作品写真:(C)2014 CELL Film Holdings, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

タグ:レビュー
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2017年02月10日

第12回大阪アジアン映画祭ラインナップ発表 過去最多19カ国・地域の58作品上映

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 「大阪発。日本全国、そしてアジアへ!」がテーマの第12回大阪アジアン映画祭(2017年3月3〜12日)の上映作品がこのほど発表された。今年は過去最多の19カ国・地域の計58本を上映。世界初上映16本、日本初上映29本など豊富なラインナップとなっている。

 オープニング作品はマレーシアのホー・ユーハン監督「ミセスK」(日本初上映)、クロージング作品は瀬田なつき監督、橋本愛主演の青春映画「PARKS パークス」。コンペティション部門には日本から宮崎大祐監督の「大和(カリフォルニア)」のほか、香港のハーマン・ヤウ(邱禮濤)監督の「77回、彼氏をゆるす」など世界初上映3本が出品されている。

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 特別招待部門は7本。台湾のウェイ・ダーション(魏徳聖)監督の「52Hz, I LOVE YOU」、中国のフォン・シャオガン(馮小剛)監督の「わたしは潘金蓮じゃない」などを上映。特集企画「アジアの失職、給食、労働現場」は6本。アジア社会で働く人々の人間模様を切り取る。日本から野村芳太郎監督の「亡命記」、田中羊一監督の「ピンパン」も上映される。

 また、東南アジア映画界の新しい動きを紹介する特集企画「ニューアクション!サウスイースト」は11本。新世代の台頭で変化する香港映画特集「Special Focus on Hong Kong 2017」は6本。主演女優の好演が注目されたデレク・ツァン(曾國祥)監督作「七月と安生」などを紹介する。

第12回大阪アジアン映画祭は3月3日(金)〜12日(日)、大阪・梅田ブルク7ほかで開催。チケットは2月18日発売される。詳細は公式サイトまで。

http://www.oaff.jp

作品写真:映画祭事務局提供

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2017年02月08日

「たかが世界の終わり」グザヴィエ・ドラン最新作 家族の中の孤独、名優の火花散る演技合戦

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 12年ぶりに里帰りした主人公と家族の交流を描いた「たかが世界の終わり」。久々の再会を喜び合い、昔話に花を咲かせるようなハートウォーミングな話ではない。なにしろ監督はグザヴィエ・ドラン。社会と個人の不協和、他人と自己との非調和をテーマに映画を撮り続けてきたドランが焦点を当てたのは“家族の中での孤独”だ。

 主人公のルイは高名な作家であり、ゲイでもある。対して家族である母、兄、妹はきわめて平凡な人たちだ。彼らからするとルイは異分子であって、同居していた頃から浮いた存在であったことは容易に想像できる。

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 それがひょっこりと実家に戻ってきたのだ。何かわけがあるはず。母も兄も妹も事情を知りたいに違いない。なのに、なぜかルイが語ろうとすると話題をそらし、それぞれが彼に抱いている思いを勝手にぶちまける。ルイは気圧されるように口を閉ざし、なかなか話を切り出せない。

 転居先の住所も教えない冷たい息子を、それでも「愛している」と抱きしめる母。幼い頃に出て行った兄の記憶がなく、雑誌や新聞の記事を通して兄への憧れを育んでいった妹。自分とは対照的にインテリで洗練された弟に、嫉妬と憎しみをあらわにする兄。

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 映画はルイと家族たちとの1対1の対話を、クローズアップで映し出す。表情にあふれ出る感情。あふれ出るだけで、互いに交わることはない。だが、ただひとり、この日ルイと初めて会う兄嫁だけが、ルイの眼差しにただならぬものを感じ取り――。

 ハイテンションな母にナタリー・バイ、がさつで下品な兄にヴァンサン・カッセル、ルイを慕う妹にレア・セドゥ、社交性に欠ける兄嫁にマリオン・コティヤール、そして寡黙な主人公ルイにギャスパー・ウリエル。超一流のキャストが火花を散らす演技合戦から目が離せない。第69回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞。

(文・沢宮亘理)

「たかが世界の終わり」(2016年、カナダ・フランス)

監督:グザヴィエ・ドラン
出演:ギャスパー・ウリエル、ヴァンサン・カッセル、レア・セドゥ、マリオン・コティヤール、ナタリー・バイ

2017年2月11日(土)、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://gaga.ne.jp/sekainoowari-xdolan/

作品写真:(c)Shayne Laverdière, Sons of Manual
posted by 映画の森 at 18:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | カナダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする