2017年01月16日

ゆうばり映画祭がラインアップ発表 復活10年目、招待作品に「ひるね姫」「哭声」

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 2017年3月2日から6日に北海道夕張市で開催される「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017」は1月16日に札幌市内で記者会見を開き、ラインアップを発表した。招待作品部門は8作品で、オープニングは神山健治監督のアニメーション「ひるね姫 知らないワタシの物語」、クロージングは出演した國村隼の演技が韓国で評判となったナ・ホンジン監督の新作「哭声 コクソン」。新人監督を発掘し支援するファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門には国内外の7作品がノミネートされた。期間中に計86本の映画を上映する。

 映画祭が市の財政難で一時休止し、民間の手で2008年に復活してから今年で10回目となる。今回から実行委員長を務める作家の小檜山博氏は「映画は一回しか生きられないはずの人生を何度でも生き直すことができる素晴らしいもの。北海道は東京に次いでロケが多い地域だが、ゆうばり映画祭が北海道の文化の核になるよう発展していってほしい」とあいさつした。

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 招待作品部門には、俳優の斎藤工の初長編監督作品「blank13」や、韓国ドラマ「冬のソナタ」のユン・ソクホ監督が北海道を舞台に日本のキャストで撮った自身初の劇場映画「心に吹く風」、劇団EXILEの青柳翔が主演する時代劇「たたら侍」など、注目作が集まる。

 オフシアター・コンペティション部門には国内396本、海外136本の合計532本の応募があり、このうち7本がノミネートされた。内藤誠監督を審査委員長とする5人の審査員が受賞作を選ぶ。 

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 昨年スタートした18歳未満お断りのセクション「フォービデンゾーン」は、ゆうばりでしか体験できない強烈な世界が展開される。國村準のトークやゆうばり映画祭の歴史と未来を語り合うシンポジウムなど、さまざまなイベントも予定されている。

(文・写真 芳賀恵)

<招待作品>
【オープニング】「ひるね姫 知らないワタシの物語」神山健治監督
【クロージング】「哭声 コクソン」ナ・ホンジン監督
「ライオン」(原題)ガース・デイビス監督
「blank13」斎藤工監督
「KOKORO」(英題)ヴァンニャ・ダルカンタラ監督
「たたら侍」錦織良成監督
「心に吹く風」ユン・ソクホ監督
「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」パブロ・ラライン監督

写真:
映画祭実行委員会とご当地キャラ「メロン熊」=札幌市で

作品写真:
【オープニング】
「ひるね姫 知らないワタシの物語」(c)2017ひるね姫製作委員会
2017年3月18日(土)、丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほかで全国公開
【クロージング】
「哭声 コクソン」(c)2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION

キービジュアル:
「大怪獣 雪山の大熱戦!」寒河江弘×飯塚貴士
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2017年01月12日

「ネオン・デーモン」ファッション業界の嫉妬と狂気 レフン監督、独自に幻想的に

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 誰もが目を奪われる美しさを持つ16歳のジェシー(エル・ファニング)は、トップモデルになる夢をかなえるため、田舎町からロサンゼルスへやってくる。すぐに一流デザイナー、カメラマンの心をとらえると、ライバルたちが嫉妬の炎を燃やす──。

 カンヌ国際映画祭監督賞の犯罪アクション「ドライヴ」(11)で、世界中の映画ファンを魅了したニコラス・ウィンディング・レフン監督。次作「オンリー・ゴッド」(13)はタイに舞台を移し、暴力を前面に押し出す復讐劇だった。今回は一転、ファッション業界の嫉妬と狂気をスタイリッシュな映像で描く。

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 表の華やかさと裏腹に、実情は女のドロドロした感情が渦巻くトップモデルの世界。マネキンのような冷静さを装いながら、燃え上がる野心をぶつけ合い、狂気の牙をむく女たち。映像はスタンリー・キューブリック、デビッド・リンチのように独創的で説明を排除した表現で、観客を突き放す。

 赤、青、紫、緑などの色を画面に配しながら、真っ白い空間や左右対称の構図を多用する。キューブリック的で人工的な映像美だ。迷宮世界に踏み込んだジェシーは、脳の中で時おり幾何学模様を見る。「2001年宇宙の旅」(68)で、宇宙飛行士が見た脳内世界のようだ。

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 一方、音楽はクラシカルなアナログシンセで作り出した1970年代風エレクトロ・ミュージックが前面に。「タクシー・ドライバー」(76)のバーナード・ハーマンの曲を彷彿とさせるなど、迷宮に踏み込んだジェシーの悪夢に寄り添っていく。

 「ドライヴ」、「オンリー・ゴッド」で暴力と狂気を直接表現したレフン監督。今回は内面に湧き上がる狂気を幻想的に描いた。難解で内省的な世界は観る者を選ぶが、独創的な映像は観客を惑わせるだろう。静かな狂気を切り取る衝撃作だ。

(文・藤枝正稔)

「ネオン・デーモン」(2016年、仏・米・デンマーク)

監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
出演:エル・ファニング、キアヌ・リーブス、カール・グルスマン、クリスティーナ・ヘンドリックス、ロバータ・ホフマン、ジェナ・マローン

2013年1月13日(金)、TOHO シネマズ 六本木ヒルズほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://gaga.ne.jp/neondemon/

作品写真:(C)2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch
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2017年01月11日

「ブラインド・マッサージ」触覚、嗅覚を駆使した濃密な“ふれあい” 盲人のリアルな世界に迫る

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 盲人たちの世界をリアルに描いた中国映画「ブラインド・マッサージ」。生々しい作品だ。彼らのコミュニケーションのありようである。欠落した視覚を補うため、聴覚だけでなく、触覚や嗅覚も駆使した濃密なコミュニケーション。そのありようが生々しいのだ。

 健常者であれば相手との間に一定の距離を取るのが普通。だが、彼らは遠慮なく密着して、触り合い、かぎ合う。“ふれあい”という言葉が比喩ではなく、本当に肌を触れ合わせる。過剰なまでの接触ぶりは何とも生々しい。エロティックと言ってもいい。

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 舞台は南京のマッサージ院。マッサージ師の資格を持った盲人たちが、住み込みで働いている。ある日、院長のシャーを頼って、同級生のワンと恋人のコンが転がり込んでくる。若いシャオマーは、あだっぽいコンにのぼせ上がるが、相手にされず意気消沈。そんなシャオマーを、先輩マッサージ師が行きつけの風俗店に誘う。シャオマーは初めて体を重ねたマンにのめり込み、店の常連となる。

 風俗嬢であるマンに熱を上げるシャオマー。その純情にほだされるマン。盲人と風俗嬢。ともに日陰の存在だ。そんな2人が強くひかれ合う。彼らの恋ははたして成就するのか――。

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 美人でありながら盲目ゆえに、その価値が理解できないドゥ・ホン。結婚に憧れ何度も見合いをするが、ことごとく破談となる院長のシャー。サラ金に手を出した弟の尻ぬぐいに奔走するワン。それぞれが悩みや苦しみをかかえながらも、希望を失わず人生を生きている。盲目という現実を恨むことも、他人に甘えることもなく、自らの運命を受け入れ、懸命に生きている。

 描かれるのは、恋、セックス、家族、夫婦、キャリア。同情も啓蒙もなく、ただただ、盲人のリアルな世界に肉薄したい。そんな監督の情熱が全編を貫く力作だ。

(文・沢宮亘理)

「ブラインド・マッサージ」(2014年、中国・フランス)

監督:ロウ・イエ
出演:ホアン・シュエン、チン・ハオ、グオ・シャオトン、メイ・ティン

2017年1月14日(土)、アップリンク渋谷、新宿K's cinemaほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.uplink.co.jp/blind/
タグ:レビュー
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2017年01月10日

「ホワイト・バレット」ジョニー・トー節全開 容疑者と刑事と女医 三つどもえサスペンス&壮絶アクション

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 頭に負傷し病院に搬送された強盗事件の容疑者、シュン(ウォレス・チョン)。手術を拒み仲間の助けを待つシュンを監視し、事件解決のチャンスをうかがう敏腕警部、チャン(ルイス・クー)。シュンが手術を受け入れるよう説得を試みる女医のトン(ヴィッキー・チャオ)。三者三様の思惑は、一触即発の緊張感をはらみ、やがて壮絶なクライマックスを招き寄せる――。

 手術を拒否するのは患者の人権だ。そう主張し、仲間が現れるまでの時間を稼ぐシュンは、会話中に哲学者のバートランド・ラッセルやギリシャ神話を引用するなど、なかなかのインテリで、一筋縄では行かない男である。対するチャン警部は、事件解決のためには違法行為も辞さない執念の男だ。この2人の間に割って入るトンは、過労で手術ミスを重ねながらも、シュンの命を救いたいと使命感に燃える若きエリート医師。

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 この3人が交える丁々発止の心理戦が、前半の見どころだ。また3人のほかにも、精神病院から転院してきた老人、手術ミスで手足の麻痺した男、意識不明の男など、多彩な人物が登場。これらの個性的な人物たちが演じる人間ドラマも見ごたえがある。

 後半は、待ちに待ったアクションが炸裂する。トー監督の専売特許とも言える360度全開のパノラマ銃撃戦。巻き込まれた患者や看護師がスローモーションでもんどり打つ。白衣が赤く染まる。水平方向にぐるりと回転しながら繰り広げられるバトルの凄まじさ、美しさには、いつもながらゾクゾクさせられる。

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 クライマックスに至ると、アクションは水平方向だけでなく、垂直方向にも展開。シュン、チャン、トンの3人が生死の運命をかけて一つにつながるシーンは圧巻の一語だ。トー作品では常連のラム・シューが、ファット刑事役で出演。尻に刺さったナイフを抜かずに銃撃戦を続ける姿が笑いを誘う。こういうコミカルなテイストをさりげなく加えるところも、トー監督らしさである。

 トー監督自身が立ち上げた製作会社“ミルキーウェイ・イメージ”の設立20周年記念作品。還暦を超えてますます盛んな巨匠の創造性が、遺憾なく発揮された傑作だ。

(文・沢宮亘理)

「ホワイト・バレット」(2016年、香港・中国)

監督:ジョニー・トー
出演:ルイス・クー、ヴィッキー・チャオ、ウォレス・チョン、ラム・シュー

2017年1月7日(土) 、新宿武蔵野館ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://twitter.com/whiteb_movie

作品写真:(c)2016 Media Asia Film International Limited All Rights Reserved
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2017年01月05日

「ミューズ・アカデミー」美神とは何か 白熱する授業、豹変する女子学生

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 映画の世界でいうなら、ゴダールにとってのアンナ・カリーナ。アントニオーニにとってのモニカ・ヴィッティ。ベルイマンならば、ビビ・アンデションとリヴ・ウルマンだろうか。芸術家の創造にインスピレーションを及ぼす特別な女性のことを、ミューズ(美神)と呼ぶ。

 「ミューズ・アカデミー」は、古典文学の事例を引きながら、「現代におけるミューズ像の何たるか」を講じる大学教授と、聴講者である女子学生たちとの間に交わされるディスカッションを描く。白熱した議論の果て、教授と学生との関係が思わぬ形に変化していくプロセスが見どころだ。

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 詩人でもある教授は博学強記。初学者である女子大生たちは果敢に議論を挑むのだが、いとも簡単に論破されてしまう。学識が違いすぎ、勝負にならないのだ。完膚(かんぷ)なきまでに屈服させられた女子学生たちは、教授の仕掛ける見え透いたわなにやすやすと引っかかり、教授のミューズとして身も心も捧げていく――。

 代表作「シルビアのいる街で」(07)では、かつて愛した女性の面影を求めて街をさまよう青年を描いたホセ・ルイス・ゲリン監督。今回登場した大学教授も、女性への飽くなき執着心において、青年と重なり合っているように思えぬこともない。

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 「ミューズの伝説を実地で体験してみよう」と誘われ、自らミューズとなった気になり、あえなく陥落する女子学生。シャイで自信なさげに見えた彼女が、ふてぶてしい女へと豹変してしまう。教授の妻から呼び出されても、臆することなく対面し、情け容赦なく自らの優位を主張。教授夫人も負けずに「私が死んだら、彼は死ぬまで私のことをソネット(十四行詩)につづるのよ」と応戦する。

 思わず笑ってしまうほど露骨な女の戦い。だが、2人とも不実な教授を非難するどころか、彼の愛情をつゆ疑おうとしないのだ。この教授、相当なしたたか者のようである。高尚な文学論のはずが、いつのまにか下世話な恋の話へ。教授の語るミューズとは何だったのか。答えを探る道のりだ。

(文・沢宮亘理)

「ミューズ・アカデミー」(2015年、スペイン)

監督:ホセ・ルイス・ゲリン
出演:ラファエレ・ピント、エマヌエラ・フォルゲッタ、ロサ・デロール・ムンス、ミレイア・イニエスタ、パトリシア・ヒル

2017年1月7日(土) 、東京都写真美術館ホールほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://mermaidfilms.co.jp/muse/


作品写真:(c)P.C. GUERIN & ORFEO FILMS
タグ:レビュー
posted by 映画の森 at 10:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | スペイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする