2016年10月21日

「ペイ・ザ・ゴースト ハロウィンの生贄」ニコラス・ケイジ全開 ハロウィンめぐるホラー・ミステリー

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 米ニューヨークの大学で教べんをとるマイク(ニコラス・ケイジ)はハロウィンの夜、7歳の息子チャーリーにねだられて祭り見物に出る。ところがチャーリーは「霊(ゴースト)に償ってくれる?」と謎めいた一言を残し、突然姿を消してしまう。手掛かりを必死に探し続けるマイクは、やがて恐るべき事実にたどり着く──。

 ティム・レボンの原作小説を、ニコラス・ケイジ主演で映画化したホラー・ミステリー映画「ペイ・ザ・ゴースト ハロウィンの生贄」。監督は「ブルックリン最終出口」(89)、マドンナ主演「BODY ボディ」(93)を演出したドイツ出身のウリ・エデル。

 ハロウィンでにぎわう祭り会場で、ちょっとしたすきに息子がさらわれる。子供がこつ然と姿を消す事件は世界中で報告されており、事件性がなくても日本では「神隠し」という言葉があるほどだ。今回の場合は魔女狩りがキーワード。1679年、ニューヨークで起きた魔女狩りで、子供3人と一緒に火あぶりされた女性が魔女になり、毎年ハロウィンの夜、子供3人を生贄に連れ去る設定となっている。

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 悪霊と子供の失踪を描いた作品では「ポルターガイスト」(82)が有名だ。家の中の異空間に子供が連れ去られるが、今回の場合は息子の行方がまったく分からない。息子がいなくなって夫婦仲はこじれて別居。マイクは自責の念にかられ、警察に怒鳴り込んだり、息子の幻を見たり、周りが見えなくなってしまう。八方ふさがりの中、唯一の手がかりは、息子がいなくなる前につぶやいた「霊に償ってくれる?」の一言。マイクはそこから真実を探る。

 ホラー・ミステリー初挑戦のエデル監督。過去にテレビドラマ「ツイン・ピークス」(91)の演出が買われたように、ミステリアスな雰囲気作り、オカルト風味のショック演出を披露する。やはりかなめはなんといってもニコラス・ケイジだ。息子がいなくなって苦悩の表情を押し通し、焦ってパラノイア的行動にも出る。物語がシンプルな分、ケイジの演技力が物を言い、作品に説得力を持たせる。

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 精霊をまつるハロウィン本来の意味に立ち返り、真面目に物語に取り入れてふくらませた印象だ。魔女の怨念でケイジが1年苦しみ続け、作品が成り立ってしまうすごさ。視点を変えれば、息子を失い極限状態に置かれた父の愛情を、ホラー・ミステリータッチで描くひとひねりある作品ともいえる。

(文・藤枝正稔)

「ペイ・ザ・ゴースト ハロウィンの生贄」

監督:ウリ・エデル
出演:ニコラス・ケイジ、サラ・ウェイン・キャリーズ、ベロニカ・フェレ、ジャック・フルトン

2016年10月22日(土)、渋谷シネパレスほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://gaga.ne.jp/ghost/

作品写真:(C)2015 PTG NEVADA, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

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2016年10月20日

「スター・トレック BEYOND」新シリーズ第3弾 救済と裏切りテーマに ニモイ、イェルチンに捧ぐ

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 2009年に始まったリブート(再起動)シリーズ第3弾「スター・トレック BEYOND」。監督は前2作のJ・J・エイブラムスから、「ワイルド・スピード」シリーズのジャスティン・リンにバトンタッチ。エイブラムスは製作に回った。同シリーズで俳優がスタッフに参加する伝統が受け継がれ、スコッティ役のサイモン・ペッグが共同脚本を担当している。

 宇宙探査3年目に入ったU.S.S.エンタープライズ号。未知の惑星に不時着した宇宙船救出に向かうが、到着直前に無数の飛行物体に襲われる。船は壊れ、クルーは散り散りに救命艇で脱出。宇宙空間に放り出される──。

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 まず作品の鍵となる「パワーストーン」をめぐり、エイリアンとカーク(クリス・パイン)が軽妙にやり取りして物語は幕を開ける。航海3年。船がわが家になったクルーの恋愛、生活をテンポよく描きながら、カーク、スポック、マッコイ、スコッティらおなじみの面々にスポットをあてる。船が大破した後は、ばらばらになったクルーが単独で動き、個々のエピソードが並行して進む。意表を突く展開だ。

 今回のテーマは「救済」と「裏切り」だろう。不時着船を助けに行ったエンタープライズ号は、敵のエイリアン、クラール(イドリス・エルバ)のわなにはまって撃破されてしまう。ショッキングでファンも驚きの描写に違いない。船を失ったクルーたちは、不時着した星からどう脱出するか。新登場のエイリアン、ジェイラ(ソフィア・ブテラ)が運命の鍵を握る。

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 新シリーズ3作目で監督が代わり、作品のテイストがやや変わった。「スター・トレック」といえば宇宙船同士の戦いだが、今回は無数の飛行物体に攻撃され、異星人に船内に侵入されたクルーが、フェイザー銃で応戦する描写も登場。エンタープライズ号の円盤状の外見を意識した斬新なアクションも展開する。不時着した星に残された100年前のオートバイにカークが乗り、おとりとなって敵に立ち向かう。「ワイルド・スピード」で超絶カーアクションを見せたリン監督が、持ち味をいかんなく発揮している。

 作品の質は申し分ないが、リブート版の難点は決定的なテーマ曲を欠くことだ。旧シリーズはテレビ版のA・カレッジによる軽快なメロディー。旧映画版はJ・ゴールドスミスの重厚な調べを思い出すが、リブート版にはそれがない。音楽担当のマイケル・ジアッチーノが劇伴に徹したことが惜しい。

 「スター・トレック」はリブート版と旧シリーズが別次元、いわゆるパラレル・ワールド(並行世界)で描かれる。今回はその境界線を交差させる演出も取られて心憎い。旧シリーズで長くスポックを演じ、昨年亡くなったレナード・ニモイ、今年事故死したチェコフ役のアントン・イェルチンに捧ぐ、シリーズ屈指の感慨深い作品となった。

(文・藤枝正稔)

「スター・トレック BEYOND」(2016年、米国)

監督:ジャスティン・リン
出演:クリス・パイン、ザッカリー・クイント、ゾーイ・サルダナ、サイモン・ペッグ、カール・アーバン

2016年10月21日(金)、IMAX3D、デジタル3D、2Dで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.startrek-movie.jp/

作品写真:(C)2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
タグ:レビュー
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2016年10月19日

「ハッピーログイン」SNSで生まれる恋 チェ・ジウ主演、韓国群像ラブストーリー

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 インターネットのSNS(交流サイト)でつながった男女3組の韓国ラブストーリー「ハッピーログイン」。ドラマ「冬のソナタ」のチェ・ジウ、「ある会社員」のイ・ミヨン、「ビューティー・インサイド」のキム・ジュヒョク、「二十歳」のカン・ハヌル、「愛のタリオ」のイ・ソムが共演。

 気難しく強気な売れっ子脚本家ギョンア(イ・ミヨン)は、一人息子を愛するシングルマザー。新作を書き上げるが性格のせいでキャストがなかなか決まらない。そんなギョンアの作品でブレイクし、今や大スターになったジヌ(ユ・アイン)は兵役を終えたばかり。恩人ギョンアの出演依頼を受けるが気乗りしない。しかし、ギョンアのフェイスブックに載せられたある写真を見て気持ちが揺れる。

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 一方、結婚も出世もうまくいかないアラフォーCA(客室乗務員)のジュラン(チェ・ジウ)は、結婚相手に逃げられたシェフのソンチャン(キム・ジュヒョク)とひょんなことから同居人になる。最初はぶつかる二人だが、理想の相手との恋に必死なジュランに、ソンチャンが指南役を買って出る。SNSを使って見事相手の気を引くことに成功するジュランだが──。

 楽才にあふれルックスも抜群のスホ(カン・ハヌル)は、あるコンプレックスから恋愛の経験がない。ある日、慕っているソンチャンの店でナヨン(イ・ソム)に出会う。スホに一目ぼれしたナヨンは積極的にアプローチ。恋の駆け引きに出るが、真っ直ぐな性格で恋愛初心者のスホとは思うようにいかない。

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 素直に思いを伝えられず、なかなか恋が進まぬ6人。等身大の姿に共感を覚え、幸せな気持ちになれるラブストーリーだ。3組をつなぐのはSNS。世代と立場を越えて人を結びつけ、その先の「大切なもの」を見せる仕掛けになっている。

(文・岩渕弘美)

「ハッピーログイン」(2016年、韓国)

監督・パク・ヒョンジン
出演:イ・ミヨン、チェ・ジウ、キム・ジュヒョク、ユ・アイン、カン・ハヌル

2016年10月15日(土)、新宿バルト9、T・ジョイPRINCE品川ほかで限定公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://happylogin.jp/

作品写真:(C)2016 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved.
タグ:レビュー
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「永い言い訳」家族と突然の別れ 幸せとは何か 葛藤や迷いとともに

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 人気作家の津村啓こと衣笠幸夫(本木雅弘)は、妻が旅先で不慮の事故に遭い、親友とともに亡くなった、と知らせを受ける。不倫相手と密会中だった幸夫は、世間に対して悲劇の主人公を装うことしかできない。そんなある日、亡くなった妻の親友の夫でトラック運転手の陽一(竹原ピストル)、その子供たちに出会い、思い付きから世話を買って出る──。

 「永い言い訳」は本木雅弘が「おくりびと」(08)以来7年ぶりに主演した作品だ。原作、脚本、監督は「ゆれる」(06)、「ディアドクター」(09)の西川美和。2011年に発生した東日本大震災で、多くの人々が家族や友人と突然の別れを強いられ、心に深い傷を負った。震災から5年。西川監督は、不慮の事故で突然家族を亡くした人々を描く。

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 衣笠はカリスマ美容師の妻・夏子(深津絵里)と高級マンションで暮らしていた。結婚20年。子供はいない。ある日、幸夫は妻が親友のゆき(堀内敬子)とスキー旅行に出かけたことを確認し、愛人の編集者・福永(黒木華)を自宅に招き情事にふける。翌朝。警察から妻の死を知らされた。幸夫は泣くこともできないが、マスコミの前では悲劇の主人公を演じていた。そんな時、同じ遺族の間柄となったゆきの夫・陽一、中学受験を控えた長男の真平、長女で幼稚園児の灯と出会い、幸夫の人生は思わぬ方向へ動き出す。

 対照的な男二人を通し、家族のあり方が描かれる。金持ちでプライドが高く、自意識過剰なナルシストの幸夫。裕福ではないが家族に囲まれ、無骨でストレートな陽一。出会うはずのない二人が、互いに妻を亡くしたことで、疑似家族のような生活に入る。仕事で留守がちな陽一に代わり、子どもたちの世話をする幸夫。突然別世界に飛び込み、子どもとともに成長する。陽一は新たなパートナーを見つけ、幸夫に先んじて新しい人生を歩み始める。

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 幸せとは何か。監督は問いかける。家族との別れによる動揺、迷い、葛藤はシリアスに、時にユーモアを交えて描く。演出は柔軟で掘り下げも自在。秀逸だ。自分本位で嫌味な幸夫を、本木がバランス良く演じている。正反対の個性の竹原とのスリリングな駆け引き。子どもたちとのかけあいもうまい。

 悲劇で始まるドラマは、時間の流れとともにポジティブに変わる。孤独だった幸夫が、慣れないママチャリに灯を乗せ、急な坂を何度も登る。残された者たちが他人と協力しながら、これからも続く人生を前向きに歩いて行く。今の時代を映した良作である。

(文・藤枝正稔)

「永い言い訳」(2016年、日本)

監督:西川美和
出演:本木雅弘、竹原ピストル、藤田健心、白鳥玉季、堀内敬子

2016年10月14日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://nagai-iiwake.com/

作品写真:(c)2016「永い言い訳」制作委員会

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2016年10月11日

「GANTZ:O」人気シリーズ、フル3DCGアニメで 非日常アクションと人間ドラマ融合

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 地下鉄で通り魔事件に巻き込まれ、命を落とした高校生の加藤勝(小野大輔)。次の瞬間、加藤はあるマンションの一室におり、死んだはずの人間たちによる「東京チーム」と出会う。加藤と東京チームが転送された先は、火の手が上がる大阪だった──。

 死んだはずの人間と謎の星人の死闘を描く奥浩哉の人気コミック「GANTZ」。シリーズの中でも人気が高い「大阪編」をフル3DCGアニメーションで映画化した。総監督は「TIGER&BUNNY」のさとうけいいち、監督は「エクスマキナ」(07)でCGディレクターを務めた川村泰。

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 冒頭から実写と見まごう映像クオリティーで、作品世界へ一気に引き込まれる。加藤は両親を早くに亡くし、弟とアパートで暮らす心優しい高校生だ。弟の誕生ケーキを買った帰路、通り魔に遭って死んでしまう。

 目を覚ました加藤がいたのは、家具のないマンションだった。部屋にはグラビアアイドルのレイカ(早見沙織)、生意気な少年・西丈一郎(郭智博)、中年男の鈴木良一(池田秀一)がいた。さらに巨大な黒い球体・ガンツも。ガンツは部屋にいる「プレーヤー」にミッションを与える。成果により付けられた点数で、特典3つが選択できるルール。強制的にミッションに参加させられた加藤と東京チームの3人は、大阪に転送されて謎の星人と戦う。

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 渋谷や大阪の町並みが忠実に再現された空間で、非日常的なアクションと人間ドラマが展開する。観客をうまく誘い込む上質な娯楽作品だ。フル3DCGのリアルな町で、日本の妖怪たちが攻撃してくる。ユニークな映像表現。最新兵器で妖怪と戦う東京チームは苦戦するが、大阪チームは傍若無人に暴れ回る。殺伐とした描写が続く中、大阪チームのシングルマザー・山咲杏(M・A・O)と加藤の淡い恋愛が作品に深みを与えた。

 フル3DCGアニメの分野で、日本は海外に先を越された印象がある。しかし、「GANTZ:O」の質は掛け値なしに絶賛できるレベル。ハリウッド大作「パシフィック・リム」や「アイアンマン」などの要素をうまく吸収し、徹底的に物語を絵で見せ切る。なにより「GANTZ」の世界観とフル3DCGの相性が抜群。ファンも納得の仕上がりだ。

(文・藤枝正稔)

「GANTZ:O」(2016年、日本)

総監督:さとうけいいち
監督:川村泰
声の出演:小野大輔、M・A・O、郭智博、早見沙織、池田秀一

2016年10月14日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://gantzo.jp/

作品写真:(C)奥浩哉/集英社・「GANTZ:O」製作委員会

タグ:レビュー
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