2016年08月10日

「栄光のランナー 1936ベルリン」激動の時代、差別と戦った伝説の男

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 1936年、ナチス政権下のドイツで行われたベルリン五輪。「栄光のランナー 1936ベルリン」は、陸上競技で史上初の4冠を達成した名選手、ジェシー・オーエンスの半生を描く。黒人選手として人種差別、政治的思惑と戦った伝説のランナーを、「グローリー 明日への行進」のステファン・ジェイムスが演じている。

 貧しい家に生まれたオーエンス(ジェイムス)は、中学、高校と数々の記録を樹立。オハイオ州立大学へ進み、コーチのラリー・スナイダー(ジェイソン・サダイキス)と出会って鍛えられる。35年、大学陸上競技大会「ビッグテン選手権」で、けがを負いつつ世界新記録を樹立。ベルリン五輪の有力候補になった。

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 一方、米国五輪委員会は当時、ナチスの人種差別政策に揺れていた。五輪参加を訴えるアベリー・ブランデージ(ジェレミー・アイアンズ)と、ボイコット派のエレミア・マホニー(ウィリアム・ハート)が激しく議論する。ナチスの宣伝大臣ゲッペルス(バーナビー・メッチェラート)が裏で手を回し、委員会投票では参加派が僅差で勝利。米国の五輪参加が決まった。現実味が増したオーエンスの五輪出場だったが、さらなる壁が待ち受けていた──。

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 ベルリン五輪はナチスにとって「アーリア人の優位性」を証明し、「ユダヤ人迫害」を正当化する機会に過ぎなかった。一方で米国内では五輪ボイコットを求める声が拡大。差別を許さず、友情と連帯、フェアプレー精神に基づくオリンピック精神が叫ばれる。黒人奴隷の子孫であるオーエンスにとって、激動の時代でもあった。

 五輪を取り巻く情勢の急激な変化が、説得力ある時代考証で描かれる。緊迫感が途切れない。サダイキス、アイアンズらの演技も、主役のジェームスを脇から支える。

 ナチスのスローガン一色のスタジアムで、オーエンスは4つの金メダルを獲得。人種に優劣がないことを証明し、ナチスの鼻をあかした。しかし、米国での差別はなくならなかった。歴史の皮肉でもある。

(文・魚躬圭裕)

「栄光のランナー 1936ベルリン」(2016年、米・独・カナダ)

監督:スティーブン・ホプキンス
出演:ステファン・ジェイムス、ジェイソン・サダイキス、ジェレミー・アイアンズ、ウィリアム・ハート、カリス・ファン・ハウテン

2016年8月11日(木・祝)、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://eiko-runner-movie.jp/

作品写真:(C)2016 Trinity Race GmbH / Jesse Race Productions Quebec Inc. All Rights Reserved.

posted by 映画の森 at 08:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする