2016年07月30日

「アンフレンデッド」いないはずの彼女が突然現れた ネットで追い詰められる恐怖 パソコン画面だけで展開するホラー

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 ネットいじめで女子高生が自殺した。1年後。同級生たちがネット上でおしゃべりしていると、突然メッセージが現れた。「私の恥ずかしい動画をアップしたのは誰?」。自殺したはず彼女だった。仲間の秘密を暴露しながら、SNS(交流サイト)を使った壮絶な復讐が始まった──。

 SNS上だけで物語が展開するホラー「アンフレンデッド」。製作総指揮は「パラノーマル・アクティビティ」シリーズのジェイソン・ブラム。監督は過去にCM100本以上を演出してきたレヴァン・ガブリアゼだ。

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 女子高生ローラは同級生たちの目の前で拳銃自殺した。ネットにはその様子を写した動画がアップされ、関連リンクで自殺の原因になった「恥ずかしい動画」が見られるようになっている。動画を見た友人たちがネットでチャット(雑談)していると、正体不明のアカウントが登場。死んだはずの「ローラ」を名乗り、友人たちに話しかける。

 3D全盛の現代。映画の大スクリーンで立体的な映像、ダイナミックな動きを楽しむのが主流になっている。そんな流れに反するように、「アンフレンデッド」は狭いパソコン空間を舞台にした。スクリーンに映し出されるのは、ほぼパソコン画面のみ。すべてが平面上て展開すると独特の作品だ。

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 仲間の前に再び現れた「ローラ」は、ネットの中だけに生きる実体のない霊だ。仲間の秘密や弱点、隠しごとを暴露しながら、自分主導のゲームに強制的に参加させる。仲間割れや恋愛感情を利用し、疑心暗鬼に陥れ、精神的に追い込んでいく。これまでにない変わり種の霊といえよう。

 主観映像で恐怖に陥れる「パラノーマル・アクティビティ」シリーズで頂点を極めたブラムが、次なる一手として仕掛けた「アンフレンデッド」。本末転倒に聞こえるが、映画のスクリーンよりパソコンの画面向けといえる。今の若者の必需品になったネットとSNSを巧みに取り入れた。ネットを使わない人にはピンとこないが、新たな世代に向けて斬新な切り口で描いたホラーだ。

(文・藤枝正稔)

「アンフレンデッド」(2014年、米国)

監督:レヴァン・ガブリアーゼ
出演:シェリー・ヘニッヒ、モーゼス・ストーム、レニー・オルステッド、ウィル・ペルツ、ジェイコブ・ワイソッキ

2016年7月30日(土)、新宿シネマカリテほかで公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://unfriended.jp/

作品写真:(C)2014 Universal Studios. All Rights Reserved.

タグ:レビュー
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2016年07月29日

「あなた、その川を渡らないで」チン・モヨン監督に聞く 結婚76年の純愛「小さな思いやりが与える意味、分かってほしかった」

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 韓国映画「あなた、その川を渡らないで」が2016年7月30日公開される。韓国東北部の小さな村を舞台に、98歳の夫と89歳の妻、結婚76年目の日々を追ったドキュメンタリー。長編デビュー作となるチン・モヨン監督は「(日常の)小さな思いやりが愛する人に与える意味を、作品を観る人に分かってほしいと思った」と語った。

 老夫婦の日常を淡々と追った作品。韓国では14年秋の公開後、口コミで評判が広がり、韓国でドキュメンタリー映画としては過去最高の約480万人を動員した。

 江原道横城郡古時里。山に囲まれた静かな集落に、おじいさん(チョ・ビョンマン)とおばあさん(カン・ゲヨル)は暮らしている。四季折々に表情を変える自然。市場での買い物、老人会の遠足、花畑での散策。二人の生活はつつましく穏やかだ。チン監督は一人、1年3カ月にわたって夫妻の日常にカメラを向けた。

 「二人がなるべく話しやすいように、環境作りに心を配りました。大勢のスタッフを連れて押しかけるのは避けたかったのです。夫妻の家まで行ったり来たりしながら、一人で撮り続けました」

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 二人は村に市が立つと、毎日着ているおそろいの民族衣装・韓服で出かけていく。おばあさんが作った食事を、おじいさんはおいしそうに食べる。2匹の飼い犬をかわいがり、春には一緒に花を摘み、冬は雪とたわむれる。笑い声が絶えない家。ありふれているようにみえるが、誰もが夢見る夫婦の姿ともいえる。現実世界でいかに人は傷付け合っているか。改めて実感させられる関係でもある。

 「二人は特別なことをしているわけではありません。一緒にご飯を食べる。手をつないで市場へ行く。小さなことに一生懸命で、常に相手を思いやっている。出かける時は髪をきちんととかすなど、人目につかないところで毎日を丁寧に過ごしている。ささいなこと、小さな思いやりが愛する人に与える意味を、作品を観る人に分かってほしいとも思いました」

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 76年の結婚生活がずっと順風満帆だったわけではない。二人には12人の子に恵まれたが、うち6人を幼いうちに亡くしている。たまに集まる子供たちも、年老いた両親を心配して口論を始める。おじいさんの体は徐々に弱っていき、おばあさんは心を痛める。「天国でも着られるように」とおじいさんの服をたき火で焼く。そんな二人の姿に、韓国の若い世代が心を動かされた。観客の約4割が20代だったという。

 「韓国では今ほど若者が困難を感じている時代はありません。就職難で経済的に困窮しています。苦しくても恋愛はしたいが長続きしない。悩む彼らの理想を76年続けている二人が目の前にいたのです。幻想ではなかったんだ、自分にもできるんだ。若者たちは憧れ、映画を観て確かめたのではないでしょうか」

(聞き手・写真 遠海安)

「あなた、その川を渡らないで」(2014年、韓国)

監督:チン・モヨン
出演:チョ・ビョンマン、カン・ゲヨル

2016年7月30日(土)、シネスイッチ銀座ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://anata-river.com/

作品写真:(C)2014 ARGUS FILM ALL RIGHTS RESERVED.

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2016年07月28日

「DOPE ドープ!!」90年代オタクの高校生、違法ドラッグ手にして大騒動 痛快青春コメディー

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 米ロサンゼルス。スラム街を疾走する高校生のマルコム(ジャメイク・ムーア)は、1990年代ヒップホップをこよなく愛するオタクである。しかし、あるパーティーで知らぬ間に違法ドラッグを手にしてしまい、思わぬ騒動がぼっ発する──。

 監督、脚本、製作総指揮は「ソウルメイト」のリック・ファムイーワ。製作総指揮、ナレーションはフォレスト・ウィテカー、音楽は「怪盗グルーのミニオン危機一発」(13)の楽曲で米アカデミー賞候補になったファレル・ウィリアムスだ。

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 軽快なヒップホップとウィテカーのナレーションで幕が開ける。90年代オタクのマルコムは、カセットプレーヤーとアナログレコードを偏愛。部屋には90年代グッズがあふれている。同じオタクでバンド仲間のディギー、男装女子のジブと学校へ行けば、不良や体育会系の生徒にからまれる。校内を逃げ回りながら、ハーバード大学進学を夢見る日々だ。

 マルコムはある日、地元で有名なドラッグディーラーのドムに「俺の誕生日パーティーに連れて来い」と命じられ、美女ナキアを誘って会場に向かう。しかし、警察の急な捜索でその場はパニックに。ドムはマルコムのバッグに大量の違法ドラックを隠してしまう。

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 「風が吹けば桶屋がもうかる」的に話は転がっていく。オタク高校生が違法ドラッグを手に入れ、困難を乗り越え、一発逆転の大勝負に出る。懐かしくどこか滑稽な90年代を、ポップな青春譚に仕立てた着眼点、センスがいい。70年代テイストを生かすクエンティン・タランティーノに共通する。

 水と油に思える「オタク」と「犯罪」が、中盤から交わり初めて面白くなる。オタクならではの知恵と行動力で、マルコムがドラッグをさばいていく様子が痛快だ。軽妙に語られる恋と犯罪、勢いで駆け抜ける青春コメディーだ。

(文・藤枝正稔)

「DOPE ドープ!!」(2015年、米国)

監督:リック・ファムイーワ
出演:シャメイク・ムーア、トニー・レボロリ、カーシー・クレモンズ、ゾーイ・クラビッツ、エイサップ・ロッキー

2016年7月30日(土)、渋谷HUMAXシネマほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://dope-movie.jp/

作品写真:(C)2015 That's Dope, LLC. All Rights Reserved.

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2016年07月25日

「ターザン REBORN」新解釈と最新技術 現代に蘇るヒーロー

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 古典小説「ターザン」が、新たな解釈と最新技術で再びスクリーンに蘇った。今回のターザンは一味違う。監督は「ハリー・ポッター」シリーズのデビッド・イェーツ。主演はアレクサンダー・スカルスガルド、マーゴット・ロビー、サミュエル・L・ジャクソン。

 英国貴族のジョン・クレイトン(アレクサンダー・スカルスガルド)、またの名をターザン。生後間もなくアフリカの密林で動物に育てられた過去、ロンドンで妻のジェーン(マーゴット・ロビー)と優雅に暮らす現在。二つの顔を持つ男は政府の厚い信頼を受け、外交特使として故郷コンゴへの派遣を打診されていた。

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 一方、コンゴはベルギー国王のレオポルド2世の餌食となっていた。国王の右腕レオン・ロム(クリストフ・ヴァルツ)は有力な部族ムボロンゴに対し、ダイヤモンドと引き換えに怨敵のターザンを引き渡すことを密約していた。

 ジョンは米国人のジョージ博士(サミュエル・L・ジャクソン)、妻のジェーンと共に、ロムの陰謀と残酷なジャングルが待ち受けるコンゴへ旅立つ──。

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 ジャングルを疾走し、木から木へと飛び移る。トレードマークの雄叫びと蔦(つた)のスイング。今回のターザンは従来のイメージを踏襲しつつ、気品も感じさせる。スカルスガルドの役作りに工夫を感じさせる。

 躍動しているのはターザンだけではない。登場する動物は全てCG(コンピューター・グラフィックス)だが、存在感は圧倒的だ。ターザンの自然との調和がスクリーン全体から伝わってくる。

 弱肉強食のジャングルは、かつてそこに君臨したターザンにさえ牙をむく。自然の過酷さがターザンの強さを際立たせている。

(文・魚躬圭裕)

「ターザン REBORN」(2016年、米国)

監督:デビッド・イェーツ
出演:アレクサンダー・スカルスガルド、サミュエル・L・ジャクソン、マーゴット・ロビー、クリストフ・ヴァルツ、シャイモン・フンスー、ジム・ブロードベンド

2016年7月30日(土)、丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://wwws.warnerbros.co.jp/tarzan/

作品写真:(C)2016 EDGAR RICE BURROUGHS, INC., WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC.

タグ:レビュー
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2016年07月22日

「ラサへの歩き方 祈りの2400km」チベット五体投地の巡礼の旅 「他者のため」大地にひれ伏す人々

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 チベット東端の村から西端の聖なる山へ。約2400キロを1年かけ、村人11人が仏教の礼拝方法「五体投地」で歩く。中国映画「ラサへの歩き方 祈りの2400km」は、チャン・ヤン(張楊)監督が現地に赴き、チベットの人々の暮らし、生と死、信仰に密着。村人を俳優として起用して忠実に再現した。

 中国チベット自治区東端のマルカム県プラ村。兄を亡くした70歳のヤンペルは「死ぬ前にラサへ行きたい」と願う。甥(おい)のニマはその思いを受け、家族に「巡礼に出る」と宣言。村の3家族11人で西へ向かうことになった。トラクターにテントや食料を積んでニマが運転。一行は手に板を付け、皮の前掛けをして、五体投地で進んでいく。

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 五体投地は仏教で最も丁寧な礼拝の方法だ。まず合掌。両手、両ひざ、額を大地に投げ出してうつぶせになり、立ち上がる。この動作を繰り返して進む。ずるをしてはいけない。なにより「他者のために」祈らなければならない。

 巡礼の先々でさまざまな人に出会う。トラクターのオイルタンクのネジが外れた時は、近くの村の元村長が泊めてくれた。一行はお礼に畑を耕す。すれ違った巡礼夫婦は「ロバも家族同然。ラサに着いたらロバに福があるよう祈る」と言う。さらに病人を乗せた車に衝突され、トラクターが壊れてしまうが、ニマたちは相手を責めずに「早く病院へ」と促す。

 落石にあっても、道が冠水しても、五体投地の歩みは止まらない。一行の中の若い女性ツェリンは、途中で産気づいて出産。生まれた子供を抱きかかえ、再び旅に合流する──。

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 映像はとても自然にみえる。まるでドキュメンタリーのようだが、綿密に計算されたフィクションなのだ。チャン監督はチベットの村に3カ月間住み込み、まずは村の日々の暮らしを映像に記録した。村人の中から事前に想定した年齢、性別の人たちを選び、一緒に巡礼に出発。ラサまでの約1200キロはすべて収録した。

 歩きながら撮り、撮りながら考える。チャン監督は振り返る。「私は思考の幅を広げ、その時々につかんだものを脚本家として映画の物語にはめ込んだ。次に脚本家から抜け出し、監督の手法で表現した。撮影の過程で意識的に取捨選択、再構築する必要があった」。ドキュメンタリーとフィクションの境界を行く映像が、臨場感とリアリティーを高めた。

 監督が現地に「入り込んだ」感触は、実際の手触り、息づかいとして伝わってくる。日本には断片的にしか知らされないチベットの人々の日常、宗教観。「祈りはまず他者のため」であり、道端の生き物や自然にさりげなく心を配る彼ら。全身全霊で大地にひれ伏す姿に、思わず利己的な我が身を振り返る。

 約2400キロの旅を経て、たどり着いた聖なるカイラス山。白く雪をかぶった山肌を見ながら、一行は祈ることをやめない。巡礼に到達点などないのだ。それは人生そのものだから。

(文・遠海安)

「ラサへの歩き方 祈りの2400km」(2015年、中国)

監督:チャン・ヤン(張楊)
出演:チベット巡礼の旅をする11人の村人たち

2016年7月23日(土)、シアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.moviola.jp/lhasa/

タグ:レビュー
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