2016年06月15日

「シリア・モナムール」私たちは今も戦場にいる 市民1001人がとらえた壊れ行く祖国

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 映画は監督の言葉で始まる。「撮影したのは1001人のシリア人、そして私」。壊れゆくシリアで、暴力と政治の犠牲になった人々の記録したドキュメンタリー映画「シリア・モナムール」。二人の監督が亡命先の仏パリ、戦火のシリアに分かれ、祖国の現状を伝えていく。

 2011年、中東を覆った民主化の波「アラブの春」がシリアにも届いた。42年続くアサド独裁政権への不満を募らせ、自由を求める市民が大規模なデモを起こす。しかし、政府軍による弾圧が激しさを増し、出口の見えない内戦が始まった。街は徹底的に破壊され、多くの罪なき人々が命を落とした。

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 シリアからパリへ亡命したオサーマ・モハンメド監督は、パソコンに向かい、ネットにあふれる祖国の映像をつなぎ合わせていた。路上に転がる遺体、逃げ惑う人々、無邪気な子供たち。ネットへの発信が、彼にできる唯一のことだった。そこへ見知らぬ女性からメッセージが届く。「あなたがシリアにいたら、何を撮りますか」

 「シマヴ(クルド語で『銀の水』の意味)」と名乗った女性は、シリア政府軍に包囲された町ホムスにいた。オサーマは答えた。「すべてだ」。シマヴはそれを聞き、町へ出てカメラを回し始める。レンズは多くの惨劇を、時には人々の日々の喜びをとらえる。被弾しながらも撮影を続けるシマヴ。一方、安全なパリで、オサーマは自責の念にもかられていた──。

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 ひるがえって日本。シリアの惨状はメディアを通じて伝えられている。しかし、オサーマの言う「すべて」を私たちは目にしているだろうか。戦場の現場映像からは市民生活が見えてこない。破壊された町には今も、希望を抱いた子供たちが暮らし、愛や喜びの火はともり続けているのに。

 「シリア・モナムール」は祖国を思う二人の監督、壊れ行く故郷を映す1001人の願いが込められた作品だ。

(文・魚躬圭裕)

「シリア・モナムール」(2014年、シリア・フランス)

監督・脚本:オサーマ・モハンメド、ウィアーム・シマヴ・ベデルカーン
写真:ウィアーム・シマヴ・ベデルカーン、1001人のシリアの人々、オサーマ・モハンメド

2016年6月18日(土)、シアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.syria-movie.com/

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posted by 映画の森 at 09:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | シリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする